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4月最後の夜-3

間に合いました。

 深雪と肩を並べて一歩踏む。

 力任せに進むその足は音の壁にぶち当たる。

 剣は左の腰の


 二歩。

 深雪は俺の後ろに回り俺が打ち破った壁を避ける。


 三歩。

 リーパーは満足げに笑っている。


 四歩目。

 低く踏切り突っ込む。


 ただまっすぐ右拳を突き出す。

 狙いはリーパーの胸の中心。

 避けるには難しい場所だ。


 リーパーは左腕を持ち上げ、腰を入れてまっすぐ打ち合うようにしてくる。


 直撃の瞬間、マットを殴ったような手ごたえがして受けきられる。

 音による内部破壊がされると面倒なので右拳をたたむように引き戻す。


 それに合わせて俺は軽く腰を落とし停止する。

 続いて深雪が俺の左側から槍のような武器でリーパーに突きを放つ。


 見えないはずなのにリーパーは右の肘でかちあげるようにして見事にさばく。

 畳んでいた右腕を伸ばしてプラズマによる砲撃をしてくる。


 そのプラズマを左のジャブで破壊する。

 深雪は完全に横から身を出して、槍を振りぬいて追撃をかける。


 リーパーは右手で無造作ともいえる動作で柄をつかむ。

 瞬間変形し枷のような形になる。

 それをリーパーは手の平から発生させたプラズマで蒸発させる。


 そこが隙だ。

 だから居合抜きのように袈裟懸けに斬りかかる。


 リーパーは少しだけ笑みを濃くして俺から見て左側に身をひるがえす。

 たったそれだけの動作で驚くほど鋭く動かれて避けられた。


 が、そこは深雪の目の前だ。

 リーパーの胴体に向かって真っすぐ蹴りを放つ。


 その足を右手でつかみ蒸発させようとする。

 そこで深雪は軸足をねじりわずかだが押し込む。


 足首を消し飛ばされながらも右手を弾いた。

 懐が開いている。

 なので突く。


 左手で平手打ちをするように弾かれる。


 軌道がずらされる瞬間、柄を手放す。

 抵抗なく剣は飛ばされるが、突き出した右手は軌道がずらされていない。


 リーパーは観念したように苦笑して、大鎌を呼び出してきた。

 それをつま先でひっかけるようにして蹴り上げる。


 拳の軌道上に刃が置かれた。

 歯を食いしばり引き戻す。

 空気に粗密差が生まれる。


 この時間感覚での一瞬。

 それだけの後に拳を引き戻した空間に空気が流れこむ。


 リーパーは笑みのまま踏み込んでくる。

 刃の部分を地面に向けて柄を立てた姿勢だ。


 特別早いわけではない。

 しかし水がこぼれるように滑らかな動きのためいつの間にか詰められている。


 そのまま俺の体を両断するような軌道で振り上げてくる。


 そこを俺が手放した剣を手にした深雪が横から斬りかかる。

 身の丈ほどの得物を振っているリーパーは避けようがない。


 だからというわけではないだろうが、後ろに倒れ込んだ。

 それではあまりに遅いからか右手からプラズマを出して加速している。


 避けられたが鎌の軌道は変わり真っ二つにはされなかった。


 ある一点でリーパーは柄尻で地面に当てて支えるようにして起き上がり始める。


 踏み込み足払いをかける。


 膝をたたまれ避けられる。

 そのまま曲芸のように倒立し俺と深雪両方から距離を取るように離れる。


 ここで腰から鞘を抜いてそれで殴り掛かる。

 刃はないが、この速さとパワーで殴ればただでは済まない。


 リーパーは足を地につけないまま、短く持った柄で受けた。


 火花が散り、手ごたえを感じる。

 リーパーの技術は非常識ともいえる部分もある。

 だから相手をするなら自然範囲攻撃など対処できない方法で致命打を狙う。

 しかしそれこそがリーパーの狙いだ。

 恐ろしく長い間生きているのでそれらの対処をずっと考え続けてきたのだろう。

 だから苦も無く対処されてカウンターで追いつめられた。

 一合ずつしっかり踏み固めるように攻撃を重ねる。

 それしか道はないと思う。


 深雪もそれを理解しているのか慌てることなく攻める。

 柄に攻撃を受けたリーパーに向かい手にした剣でコンパクトな振りで斬りかかる。


 攻撃が入るその瞬間、左手で真下から跳ね上げるようにして弾く。


 そこで深雪は柄を手離した。

 リーパーの剣を跳ね上げる動作は無駄のないまっすぐな動きだ。

 だから剣もまた乱れることなく刃の根元辺りを中心にして回る。


 そして俺の方に柄が向いた瞬間、手を伸ばしつかみ、斬りかかる。


 足は地につかず、大鎌は鞘の一撃で衝撃が入り、片手は振り上げた状態。

 苦し紛れに俺の胸に足裏を当てて離れようとする。


 が、今度は空ぶった形になった深雪がリーパーの足首をつかんで離さない。


 そこでリーパーは満足げに一つうなずいた。

 その顔からはようやく重荷を下ろせるように晴れやかだ。


 剣はリーパーの左脇下から入り、右肩上まで斬りぬいた。


 そして口を開く。


「わたしの負け、ですね」

明日も頑張ります。

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