4月最後の夜-2
間に合いました。
「ふふ」
「がっ!!」
いつの間にか距離を詰められる独特の移動で距離をつかみ損ねて左のいいのをもらう。
軌道はフックのように側頭部に打ち込まれる。
衝撃に近い大音響が中で響き、めちゃくちゃにされる。
「それ以上させません!!」
深雪が割り込み頭部狙いで左足でハイキックを放つ。
「あらあら、はしたないですよ」
のんきともいえるほどの言葉と共に後ろに身を引いて回避した。
「まだまだ!!」
軸足である右。
その足首のバネだけで鋭く跳びコマのように回転して右のかかとを打ち込みに行く。
「お行儀が悪いですよ」
右腕で跳ね上げるようにして受けた。
空中で体勢を崩し、ほんのわずかだが制御が効かなくなったようだ。
「ふふ」
跳ね上げた右腕をねじるように前に突き出した。
その貫き手は陽炎をまとっている。
「間に合った!!」
リーパーの貫き手に左拳を打ち込んで受ける。
甲高い金属音が響いて止めることができた。
「ここ!!」
深雪が叫ぶ。
同時に周囲の地面から大小さまざまな刃物が射出される。
「へぇ」
感心したようなそのセリフをリーパーはつぶやいた。
俺は逃がさないように一歩踏み込んで殴り掛かる。
避けても受けても周囲から飛んでくる武器への対処が遅れるタイミングだ。
「よいしょ」
リーパーは一番手近な武器の柄をつかんだ。
そのせいか切っ先は顔面手前だったが眉をピクリともさせていない。
手にした剣でまず俺の拳を受け流して密着し、体を入れ替えてきた。
そのせいでほぼすべての武器が俺の体で弾かれた。
「くっ!!」
呻く。
それに対してリーパーは笑みを浮かべて――
「深雪ちゃんにお返ししますね」
楽しげに口にして、弾かれ空中に跳ねあげられた武器をつかんで一瞥もせずに投げ始める。
銃弾のように加速がつけられた武器はまっすぐ進む物もあるし、弧を描き襲い掛かる物もある。
その投擲武器の連射を向けられた深雪は軽く息を吸いながら話す。
「これならなんとか!!」
空中の不安定な体勢のまま飛んでくる武器を弾く。
うち手ごろな大きさの剣を両手に一本ずつもち地に降りる。
「挟んだ!!」
叫び深雪と一緒に両サイドから攻める。
俺は居合抜きの要領で斬りかかり。
深雪は外から内へ挟むようにして振る。
避けようのないタイミングはずだった。
「すこしせっかちすぎるわね」
言った瞬間消えた。
いや、違う。
一瞬で腰を落とした。
ただそれだけだが、虚を突かれた。
俺の剣は向かいに居る深雪に伸びて――
「く!!」
上に軌道をずらし、振り上げるような格好になる。
深雪の剣も俺の装甲にぶつけられガラスのように割れた。
つまり二人とも無防備だ。
「隙だらけね」
気軽な口調とは裏腹に右手は深雪、左手は俺に密着させる。
中身をかき回されるような衝撃が入る。
「ぶっ!!」
ただでさえ残っていない内臓がかき回される。
プラズマが直撃した深雪は胴体に大穴が開いて――
「危ないですね!」
すぐにそう返す。
疑問に思っているとその穴は逆再生でもするようにふさがる。
おそらく物質の分解を再構成を自分の体に使用したのだろう。
「まだだ!!」
それを確認し、すぐに移動できないリーパーに近づきローキックを放つ。
正直体調は本調子とは程遠いが歯を食いしばりながら攻撃を行う。
「そうでないと」
どこかうれしそうにつぶやき右腕を差し出してくる。
そのままでは右腕ごと破壊できる。
不審に思うが迷わず振り切る。
「っ!?」
直撃する瞬間プラズマを発生させる。
その勢いで蹴りの威力を殺し受け止められる。
受け止めた勢いでリーパーはフワリと跳びあがり距離を離す。
「さて、仕切り直しね」
表情的にはまだまだ余裕がある。
一度も攻撃を通せず、逆に何度も痛打を喰らう。
しかもリーパーは大鎌すら使っていない。
そのことに少し心がなえかける。
しかし横に並んできた深雪が俺の手を握り言い切った。
「絶対大丈夫です、勝ちましょう」
「……ああ」
気を引き締め鞘に剣を納める。
勝ち方はわからないが、それでもまだ負けていない。
大切なのはきっとそれだ。
それに何となく理解できたことがある。
「リーパーも必死なのだと思う」
その言葉に深雪はうなずいた。
そしてどことなく俺たちに越えていってほしいようにも見える。
だか――
「やろう」
「ええ」
どことなく寂しげにたたずむリーパーに向けて二人でまっすぐ向かった。
明日も頑張ります。




