4月31日-7
間に合いました。
「どうしようも なかったんです」
傷だらけの顔で泣きそうな表情で話し始める。
二人で手をつなぎ、殺風景ともいえる道端に倒れてじわじわと死に近づきながら重ねるように言葉を交わす。
「どうしようも……なかった て?」
「針山けいぶの じさつで す」
こころの痛みを吐き出すように話を続ける。
「そこ は私のためにつくられたキルゾーンでした」
何かを思い出すようにとつとつと続ける。
「車爆弾、針山警部の至近きょりからの銃撃、ふねからの砲撃 ここまでは しのげました」
でも。
と深雪は首を横に振る。
「まわりに伏せていたスナイパーで詰みました」
そうして示すのは胴体部の穴だ。
「奥谷さん がやられたのもあって わたしのほうがちょっと」
俺の方でエネルギーを食っているので深雪自身の回復に手が回ってないという事だろう。
何か言おうとして――
「ご がぁ……」
湿った音と共に血の塊を吐いた。
八割方金属片が混ざっている。
すると深雪は慌てて続ける。
「あ いえ べつにそんなつもりはなくて――」
「わか て」
必死に言葉を伝える。
深雪は安心したように表情をほころばせる。
「そして 針山けいぶは 隠し持っていた手りゅう弾で……」
その言葉を最後まで聞くことなく、ゆっくりとうなずく。
だがそれでも深雪は言葉を続ける。
「でんし機器 いっこももってなくて」
「 うん」
執念だろう。
確かに俺たちはいままでお世話になってきた人がここまで極端なことはやらないはずと勝手に思っていた。
だが違っていた。
たったあれだけの時間で俺と深雪をここまで追い詰める策を用意した。
それも深雪に気付かれないようにこっそりとおこなった。
「な ぁ」
「なんですか 奥谷?」
「くやしいな」
ポツリと漏らしたその言葉に深雪はゆっくりとうなずいた。
最初から手遅れだった。
その事実は今更心にのしかかる。
「みんな しぬなんてくやしいなぁ」
「えぇ」
太陽――ひいては明日への公開が降り積もる。
必死に活動したが、結局無駄だったという徒労感ばかりを感じる。
死に近づくのとは全く別に体から力が抜け落ちていく。
「なんで こうなった?」
「……」
深雪に視線を向けるとただ力なく首を横に振った。
仕方がない。
とでもいうように。
すると軽やかな足音が聞こえる。
「ここに居たのですね」
ちらりと目線を移動させるとリーパーがいる。
いつの間にかナードも一緒だ。
二人に見下ろされている格好になる。
まるで勝者と敗者のようにだ。
「なんで ここ に?」
「そろそろだと思いまして」
クスクスと楽しそうな口調で話しかけてくる。
「もうあきらめたらいかがです? 地球は太陽の熱に飲まれ、助けてくれていた人もしに、何より死にかけている」
手詰まり。
そういう言葉がピタリと当てはまるような状況だ。
だが。
「いやだ」
叫ぶように体に渇を入れ全力で立ち上がる。
深雪もつかんだ俺の手に体重をかけるようにして立ち上がる。
そしてリーパーに向かい――
「たのむ ちえを貸してくれ」
と頭を下げた。
それに対してリーパーは楽しげに笑みを浮かべて。
「わかりました」
「は?」
あっさり頷かれたので肩透かしを食らう。
「とりあえず山上君と深雪ちゃんが死にかけているのから何とかしないとですね」
そう呟いて俺と深雪を小脇に抱えて――
「できる限り飛んでいてくださいね」
「あ、ああ」
「そういえば」
と深雪がつぶやく。
「さっきの流れで忘れていましたけど二人とも完全に私たちの味方でしたね」
「なんか、こう、しまらないなぁ」
とつぶやきながら、刻一刻と夜明けまで近づく空に飛びあがった。
明日も頑張ります。




