20190430-2
間に合いました。
「はい、はい、大丈夫です――それではまた」
ふぅ。
とため息をつき懐にスマホを戻す。
時間はそろそろ日が沈むころだ。
が異様に巨大な何かはまだ顔を見せている。
「なんかあったみてーだな」
針山警部がコンビニのおにぎりを放り投げてきた。
それをキャッチして言葉を返す。
「あのデッカイ奴の正体について」
と言いながら真っ赤に輝く物体を示す。
「わかったのか!?」
驚いた表情で食い付いてきた。
確かに正体不明の明らかにおかしなものが浮かんでいるのは気が気じゃないだろう。
だから特にもったいぶることなく伝える。
「太陽だってさ」
「太陽? でもおかしくねーか?」
その疑問はもっともなので軽く説明する。
「天文学者が飛んでくる光の波長から巨大化した太陽だって特定した、そして深雪ちゃんがハッキングしたリーパーの口から聞き出して確定した」
「なるほど――って待て」
針山警部は一瞬納得しかけるがすぐに聞き返してくる。
その目は不審げだ。
「巨大化した太陽って何やったんだよ」
「細かい話は置いておくけど、時間が経つと太陽は自分自身を作る物質をとどめておけなくなって巨大化するんだってさ、ざっくり数十億年たってるらしい」
「……数がぶっ飛びすぎてて想像できねーな」
同感。
と苦笑と共に答えて、おにぎりの包装をはがす。
「で、なんか面倒なことがあるんだろ?」
「あ、分かっちゃう?」
「なんとなく察しはつくな」
どこか得意げな表情で――
「国外が滅亡している、で今日明日を越えたところで輸入される物がなくなればどうしようもない、そうだろう?」
「おしい、正確には平成を越えたら日本もそのまま滅亡する、なんだよねぇ」
その言葉にはさすがに針山警部は固まる。
「まてまて、それこそ何が起きる?」
「太陽が近くなったから日本国外は灼熱地獄で死ぬってさ、船やら航空機の外に出ていったものは全部音沙汰なしだって」
「おおいおいマジかよどうすんだ」
表情からは困惑が見てとれる。
なので軽く肩をすくめて。
「方針として時間稼ぎとして全部なかったことにし過去の再現に移るらしいね、三十年時間稼ぎができるから」
「……方針転換が早すぎないか?」
さすがに鋭い。
と思うが表情に出さないようにして。
「おそらく手回し済みだったってことでしょ、どうしようもなくなった時とかそんな感じで」
「未来予知でもできるのかってくらい正確だな」
なかばあきれ気味に針山警部がつぶやく。
それに対して同意しつつ。
「リーパーはたくさんの繰り返しから大体予想ができるらしいね」
「異常なほど鋭い読みはそれか」
「みたいだね」
そこでいったん言葉を切って――
「ここからが相談なんだけど、平成に起きてなくて、昭和に起きた事を再現したらいいって話なんだけど」
わかる?
と聞くと、呆れたような口調で針山警部が答える。
「おいおい、もうあと半日もねーんだぞなにす――」
そこでまた言葉を止める。
その顔は真剣そのものだ。
「無理だ」
一蹴する。
「従うやつはいるかもしれない、だが同じように絶対に従わない奴もいるだろう、内部分裂とかありえねー」
「だろうね、となると最後の手段になるね」
「あん?」
怪訝そうな顔で聞き返してくる。
「鍵は山上君と深雪ちゃんだよ」
それだけ伝えると、ほんの一瞬だけ悲しそうな視線を向けてくるがすぐにそれを振り払い――
「仕方あないって奴だろうな」
「僕は二人の事けっこう気に入ってたんだけどね」
針山警部もまた感情をこめない声で答える。
「俺もだよ」
そんなどこか無力感に満ちた声がゆっくりと風に飲まれて消えた。
明日も頑張ります。




