4月30日-9
間に合いました。
「深雪ぃ!!」
白熱化した剣が深雪に迫り、刺さる直前で――
「っ!?」
慌てて深雪が弾いて難をしのぐ。
「すまん!! 深雪」
慌てて深雪に謝る。
すると軽く笑みを浮かべて首を横に振る。
気にするなという事だろう。
そこで深雪を空に浮かびリーパーを指さす。
「さて“リーパー”これで終わりです」
するとリーパーはおとなしく両手を上げる。
「これで詰みね、さすがに降参するわ」
と思ったよりずっとあっさり終わった。
完全に素手のその手からは本当に抵抗する気がないように見える。
「え!?」
思わず声が出た。
あまりにあっけないことに俺が不審に思っていることに気付いたのかリーパーはいつも通りの笑みを浮かべて。
「何をどうしてもハッキングされて拘束されるので抵抗しても意味がないので」
淡々と語られて、そんなものかと納得することにした。
「さて、手は抜きませんよ」
よいしょ。
という軽い言葉と共にリーパーは軽くふらつく。
「もう抵抗しないのに厳重ねぇ」
「何をされるかわからないですから、それだけ警戒しているんです」
その言葉にリーパーは軽く肩をすくめる。
「とにかくサポートデバイスの上に移りましょう、あそこならめったの事できないですし」
と言って空に所在なさげに浮かんでいる鳥に向かって移動した。
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どことなくフワフワした見た目の羽毛の上に白い小柄な人影が転がっている。
近づくとナードと名乗っていたノスタルジストのメンバーだ。
ピクリともしていないので慌てて確認するが――
「寝てるだけ?」
「……確かに拘束したので何もできないはずなのでですが、神経が太いとうかなんというか」
と深雪はあきれ気味だ。
「“ナード”はようやく肩の荷が下りたところなので仕方がないと思いますよ」
肩の荷が下りた?
という事は何かの仕事をずっとしていたという事になる。
その疑問に伝える前に深雪がリーパーに質問する。
「まず大鎌はどうしたんですか? 奥谷と戦っているときも一切使っていなかったですよね、どんな仕込みをしてたんですか?」
観念したとでもいうように虚空から見慣れた鎌を取り出して深雪に手渡す。
「どうぞ、使う暇がなかったんですよね」
と言って渡された鎌を持った瞬間、深雪は顔色が真っ青になる
「え!? どういうこと……ありえない」
と何事かつぶやきじっと考え込んでいる。
その様子をリーパーは苦笑に近い笑みで眺めている。
「深雪ちゃん、あなたならソレの意味わかりますよね?」
「……即答できません」
意味深な言葉が交わされているので少し怖いが声をかけることにした。
「何が起きているか全くわからないから説明してほしいんだけど」
そこで俺が居たことを思い出したかのように俺の方を見て話し始める。
その言葉は深雪自身が内容を確かめるかのようにゆっくりとした話し方だ。
「まず“リーパー”が持ち出そうとしてのは核燃料です、それも臨界状態そのままのです」
さすがに驚いたそんなものをどこから調達したのか疑問に思う。
そこでリーパーに目を向けるとうなずいた。
「この鳥の足止めとしてね、核燃料が大量にばら撒かれたら、これで対処するでしょう? とくに臨界状態の核燃料なら」
「もしかして、福島の奴か?」
その言葉にリーパーは頷いた。
がそれに割り込む声が一つ。
「でも違うんです、明らかにおかしいんです!!」
深雪は言い切る。
「量が百や二百機分でも足りないんです」
「は!?」
さすがにおかしすぎる数だ。
深雪に聞き返す。
「日本に存在している原発の炉心っていくつなんだ?」
「停止、解体中も含めておよそ六十機……ありえない数なんです」
明らかに矛盾する数字だ。
日本の原子力発電所で保存している核燃料も含めないと不可能だが――
「いいえ、その程度じゃないんです」
首を振りながら口にするのは――
「すぐに取り出せない位置ですが、もっと多い量のウランやプルトニウムが貯蔵されています」
「おいおい、どこから出て来たんだよ」
クスクスと笑っているリーパーが見える。
「もうそろそろですね」
「え?」
といった瞬間――
「師hsんししっどいあ減だd前おどぇddwd気にオアd苗宇井駄々をいdwせもぢfんcfせcふいんどあういcdばdfhcだうdhがあえあえうぃhwだくあはmdぃうくえcぬいぬいあえうぃうcnydちゃうdmxshしゅdふぁちゃいうえdにゅくえさでdbくぇ――」
でたらめな爆音がそこかしこから聞こえる。
それはまるで空がきしんでいるような音だ。
耳をふさぎ必死に耐えていると不意に消えて――
「し ん げん ごうは――」
変に間延びしてノイズだらけの聞きなれた声が響く。
だが声のトーン自体におかしなところはなく、ようやくその声が誰なのか気づいた。
「俺の声だったのか」
すると、それが紙くずを丸めるように皺だらけになり握りつぶされたとしか言えない光景を挟んで明らかに違和感のある物が見える。
それはまっ赤に輝く巨大な何か。
空ほぼすべてがそれに埋め尽くされているという異常な光景だ。
「な……にが」
クスクスと笑っていたリーパーはゆっくり口を開く。
「ようこそ、これが真実の空よ」
それは禍々しいほど煌々と輝く空の光の下、どこまでも澄んだ笑顔を浮かべている。
明日も頑張ります。




