4月13日-3
間に合いました
ソレは生まれてしまった。
――いや、放たれた。
「IIIIIIINIIIIAYAYAYANLLALALALLAAAAAAA!!」
それは回転する。
空気を建材を――二人を巻き込んで轟音を立てて回る。
「あぁぁ――」
それは不自然にゆがんだ声から段々と調律されるように自然な声に変わる。
そして――
「先手必勝!!」
淡雪の声に従い剣で切りかかる。
「がぁ!!」
明らかに手ごたえがあった。
何となく受け止められるかもしれないと思ったが拍子抜けしつつ鞘に納める。
同時に淡雪も容赦なく金属球を打ち込んでそのたびに重い打撃音がする。
が、それもすぐに収まり。
一人の人間が立っている。
服装としてはどこにでもいるような淡い色合いの服だが印象に残らない。
男物なのか女物なのかすらわからない。
顔もまた男性にも女性にも見える――言い換えよう、橘にも安逹にも見える。
「神よ!! わたしは生まれたぞ!!」
と叫んだ。
明確に人の言葉を話した化け物など初めてのため驚愕する。
「ともかく一人」
と言って、淡雪の方に向き直り。
ただ触った。
「っぁ!!」
捻じれて。
千切れた。
「は?」
あまりにも現実離れした光景に一歩距離を取った。
それが命を救った。
一瞬前まで俺がいた場所を通り過ぎる相手の腕。
「!!」
「ほぅ、良い勘だな」
そのまま、踏み込み張り手でもするように右手を突き出してくる。
それを抜剣し叩き切った。
相手の腕は切り落とせたが、同時にこちらの剣も粉々にされた。
痛み分けだが、圧倒的に違うものがある。
「手は二つあるんだ」
と左手で突いてくる。
装甲を信じてもいいが、原理不明の攻撃は触れたくない。
と――
「私は生きてますよ!!」
と言って高速でぶつかった金属球が相手の足を払う。
それで二個砕かれた。
顔と腹部にめり込むように撃ち込まれ川へと弾かれる。
そこでさらに二個砕かれる。
「くっ!!」
声を漏らし、欄干をつかみとどまろうとして――
「最後!!」
最期の一個で欄干を砕いて確実に突き落とす。
「なんだアイツ!?」
明らかに今までの化け物とは毛色が違いすぎる。
「どういう原理かわからないですけど、触られらたねじって切られました、回転している力場のようなものをまとっています、とりあえず『回転者』とでも言いましょうか」
「もしかしたら俺のこの装甲も危なかったのか?」
そこは即座に否定が来る。
「装甲は大丈夫です」
「そっか、なら――」
しかし、そこで待ったがかかる。
「装甲は無事です、でも力場なので装甲を越えた場所をねじられたら、即死ですね」
下半身がなくなっている人間が言うと説得力が出るな。
などとどこかぼけたことが頭の片隅に浮かぶ。
当人は「まだ動かせるから大丈夫です」などと言っていて、改めて頑丈な体をしていると思う。
「とにかく相手はまだやる気みたいですよ」
と言って橋の下をしめす。
そこには大渦で水をのけたアイツ――『回転者』が立っている。
そして橋脚に悠然と近づき。
「あ、まさか!?」
橋脚をねじって壊した。
=============〇==================
「くっ」
うなり、淡雪の上半身を抱えて空を飛ぶ。
直感でわかる、川に入ったら危険だ。
「わかっていると思いますが、水は空気より重いです、下手をすると水流で身動きできなくなります」
「わかった」
とは言ったが、悩んでしまう。
結局こっちは近接武器しかないのだ。
「むむ、しばらく時間を稼いでもらえるなら決定的な隙を作れると思えますよ、だから、えーと、頑張ってください」
「とにかくやるしかないってことか」
内心肩を落としつつ、淡雪をまだ崩れていない橋の部品におろして、突撃する。
メインの剣がなく素手だがやるしかないのだ。
『回転者』も迎え撃つつもりなのか構えをとっている。
[危険なのは強化外骨格の中で力場を出されたときです、常に動いて狙いを固定させないでください]
「わかった!!」
と言いつつ、突き出してきた腕をくぐり横腹を殴った。
試したことはないがコンクリートは余裕で破壊できる拳はあまりダメージを入れた様子はない。
見た目は人間のようだが、中身は全然違うらしい。
淡雪の助言通り、殴ったらすぐに引いて距離を取る。
相手もまた近接しかなく、しかし空を飛べそうにないのでこのまま時間を稼ごうと思ったら――
「侮るなよ!!」
と叫んでロケットのように飛んできた。
回転する力場利用してカタパルトのように射出した様子だ。
よく見ると微調整もしている様子なので、空中での機動力が低いということもなさそうだ。
「よし、こい!!」
覚悟を決めて殴りかかった。
=============〇==================
時間としてはそれほど経っていないが、精神的な疲れがすごい。
流れとしては一方的にこちらが殴っているが、こちらは一撃で死ぬ可能性がある上に堪えた様子がないのが精神的な疲労を加速させる。
空中をジャンプし続けるような相手の動きは滑らかさはないが、緩急が激しいためになかなか捉えづらい。
と、上を取られた。
「くっ!!」
うなりそれを交差した腕でガードして、そのまま殴られた方向に飛んで――
川に落とされた
「まず!!」
出る前に『回転者』は川に飛び込んでかき混ぜてきた。
「くっ!!」
少しも耐えることができずに濁流に流される。
まずい!!
流されている状態はいつどこに来るかがわかってしまう。
『回転者』も不敵な笑みを浮かべている。
チェックメイトだ。とでもいうように。
つまり死――
「!!? なんだこれは!?」
『回転者』が驚いた声を上げる。
見えたのは空を飛んで蹴りかかる上半身がない下半身だ。
服装からすると淡雪だろう。
「確かにポロっと動かせるって言っていたけどさ!!」
ありえない光景に『回転者』は確かに完全に動きを止めた。
だから濁流から飛び出し――
「とった!!」
抜剣し、首を切り落とす。
それでも足りない可能性があるので、落ちかけている頭から竹を割るように真っ二つにした。
「ま、だ だ!!」
割られた断面からナニカ巨大なものが飛び出した。
明日も頑張ります。




