Spring, Thirty days-3
間に合いました。
「……」
ロッカールームに作りつけられたベンチに深く腰掛けながらため息を一つはく。
それは重々しい失意が混じっている。
追いかけていたクリーチャーを追いかけきれなかった。
水の中の相手を追跡する装備を持っていなかったので仕方がない。
そんな言い訳はできるがあと一歩で逃したという事実は変わらない。
「少しは肩の力抜け」
と操縦士が肩に手を置いて話しかけてくる。
表情こそ平静を保っているが目は俺と同じように悔しさを噛みしめているようだ。
ついで片手に持っていた湯気の出ているコーヒーを渡してくる。
「あと一歩で逃してしまう悔しいのはわかるが、固執すると肝心な場所で視野が狭まるぞ」
「わかりました」
コーヒーを受け取りすすると、腹の奥がほぐれるような感覚を得て、腹の虫が鳴る。
そこで食事をとっていなかったことを思い出す。
「恥ずかしい話ですね」
「化け物相手なんて誰だって初めてだ仕方ねーさ」
と言って紙袋を渡してくる。
中には冷え切ったサンドイッチらしきものが入っている。
俺が落ち込んでいる間にどこかからくすねてきたらしい。
「ありがとうございます」
「さて腹ごしらえが済んだらブリーフィングだ」
「え? もう発見したのですか?」
そこで少し呆れた顔をして答える。
「お前なぁ、あの化け物どこ向かっていたと思う?」
「あ、なるほど」
目的地は最初から発電所なのだ。
軽く恥ずかしい思いを得ながらそれをごまかすように急いで食料を腹に納めた。
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「追いかけていたクリーチャーは元々水中に適応しているわけではないようだ」
机の上には目的地とされる発電所の周囲が記された地図が広げられている。
俺たち以外にも戦車乗りや大砲屋の隊長格がいる。
俺たちのボスがこっちを見て手招きする。
どうやら実際に見た俺たちの意見も聞きたいらしい。
「聞きたいことは主に一点、上陸した瞬間に同時にもてる限りの火力を打ち込む計画を立てている」
操縦士を見ると顎を引くようにうなずいたので俺から話すことにする。
「ヘリ一機程度の火力で動きを止めるほど凍結したことを考えると、芯まで凍るのは確かですが凍りすぎるかもしれません」
「……どういうことだ?」
あの時の事を思い出しながら説明を続ける。
「四肢まで凍ったのは足りない熱を四肢から奪った可能性と、氷からさらに奪ったために極低温まで下がった可能性があるからです」
「後者の場合は水が氷る程度では済まず、あたり一帯が極低温になるのか……」
「あくまで可能性の話ですが」
そこまで伝えると指揮官が軽く顎を引くようにして頷き。
「なるほど、それは少し考えよう、そしてこっちがソナーを解析して出た影だが――」
できた時間を無駄にすることなく話し合いを重ね。
準備を積み重ねていった。
明日も頑張ります。




