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4月30日-3

間に合いました。

 とある山の中で目を伏せてじっと待つ。

 服装は高校の制服。

 手には何も持たず自然の中に立っているというのは少し場違いだ。


 まだ日も高く少し開けた場所には柔らかな日の光がさしている。

 風もゆるくしか吹いておらず静かだ。


 と――


「来たか」


「来たぜ、山上」


 足音が聞こえる。


 そちらを見ると俺と同じように制服を着た男がいる。

 前に見たときより頬が若干こけて、眼光もギラギラとした光が増しているが知っている人間――橘だ。


 そのことについて俺は感想を口にする。


「意外だな」


 俺を足止めするために誰か割かれるだろうという見通しでどこからも離れた場所に俺を配置した。

 そうして釣れたのは純粋な性能ではおそらく一番高い橘だった。


「確実に足止めをしないといけないらしい」


 橘はじっと俺をにらみながら話す。


 立ち方は自然体で町中で偶然出会った時のように気軽だ。

 しかし理解できる、互いに段々と戦うための間合いに入ってきている。


 ジワリ。

 と一歩ずつ近づく。

 互いに拳を握りあい殴り合うように。


 だから橘にむけて最後の確認をとる。


「もう知っているんだろ?」


「ああ、オレが忘れたとても大切な人間についてだろ」


 顎を引くようにうなずく。


 それに対して橘は少しだけ何かを懐かしむような表情を見せたがすぐに消え去った。

 代わりに獣のように獰猛な笑みを浮かべる。


「だから取り戻すんだよ、四月のあたまに戻ってな」


「その言葉を信じるのか?」


 その言葉に橘は叫ぶように返す。


()()()()()()()()()()()()()()()()()!!」


 腹の底からの叫び。

 それはどこか獣の咆哮にも似た響きを持っている。


「ほかにもたくさんの人をこの手にかけた、山上ィ――」


 その目は様々な感情が混ざり合い濁りきっている。


 ほぼ顔を付き合わせるような距離まで近づいた。


「もう戻る道なんてねえんだよ!!」


 そのまま固く握られた拳が顎に向かって伸びてくる。


「このっ!!」


 逆に俺からは右拳で橘の側頭部を狙う。


「ふざけるな!!」


 同時に鈍い音が鳴る。


 一歩互いに下がるが――


「クソが!!」


「チィィ!!」


 互いに踏みこみ体重を乗せた左を打ち込み――


「がっ!!」


「ぐ――」


 直撃


 互いに人ではない膂力で殴り合い。

 尋常ではない耐久力で気にせず殴りあう。


「あぁっ――!!」


「しぃっ――!!」


 くぐもった殴打音が連続する。

 殴り合い、下がった分を前に進みただ殴り合う。


 が、その均衡が崩れる。


「ぐ――」


 膝を落としたのは――


「どうだっ!! 橘ぁ!! いい加減目を覚ませ!!」


 ()()


「くそ――が、再生力任せに殴ってきやがって」


 口から赤く染まった唾を吐き捨ててその場で伏せるような姿勢をとる。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 俺に跳びかかってきながら強化外骨格をまとう。


「知るか!!」


 叫び、まとった強化外骨格ではね上げるように殴る。


「ちぃ!!」


 宙に舞った橘に向けていうべきか迷っていた言葉をぶつける。


「お前が――」


 腹の底にあった重くそして火傷しそうなほど熱い言葉だ。

 それは橘に向けるべきではない恨み。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 かつての親友に明確な殺意を向けて呼び出した剣で斬りかかった。

明日も頑張ります。

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