4月29日-18
間に合いました。
「なんてね」
と言って床に大鎌を突き刺した。
すると床に大穴が開いてそこにナードの首根っこをつかんで飛び込んだ。
「逃がすか!!」
と言って床下の貨物室を覗き込んだが――
「いない!?」
「やっぱりあの移動方法は反則ですね、飛び込んだ瞬間あらかじめ用意しておいた『扉』に飛び込んだのでしょう」
二人して肩を落とす。
が、気を取り直して改めて向かいに居る人物――淡雪の半分だった人をまじまじと見るがやはりどう見ても淡雪にしか見えない。
「あの――」
何かを聞こうとしたとき大きく飛行機が揺れた。
「は!?」
「まずいです、高度が落ち始めています」
「そとの鳥で何とかできない?」
すると非常に言いにくそうに口を開く。
「最初に連射したアレで航空機自体は完全に直しました、でもこの飛行機は落ち始めています、落ちるという事が決められているみたいなんです、つまり下から支えても無理やり墜落すると思います」
「てことは手作業で一人ずつあの鳥に乗せていくしかないのか」
そこで小さくガッツポーズなようなことをして――
「頑張りましょう、奥谷さ――山上さん」
そう言いなおしたことに少しだけ寂しさを得る。
「とりあえず自動であっちに運んでくれるカーゴをここに出すのでドンドン載せていきましょう」
「そう、だな」
同意して乗員乗客全員を助け出すために走り出した。
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「落ちていきますね」
隣に座っている淡雪――に極めて近い存在が少しだけ寂しそうに話す。
「ああ」
いくつか方法を試したそうだがそれでも機体は持ち直さず落ちてゆく。
それを見送りながら地面に降りる。
「行って」
とのせていた人を下ろした鳥に話しかけると空高く舞い上がった。
風を乱すこともなく飛び去った。
残されたのはいまだに気絶している人たちと夕暮れを過ぎた静かな山中に好きな子とほぼ同じ子と一緒にいる。
今まではあわただしかったせいで強く意識できなかったが、こうなってしまっては意識せざるを得ない。
「なんて呼べば――」
といったあたりで首を振って再度問いかける。
「俺の名前は山上 奥谷、君の名前は?」
山の中を静かに風が駆け抜ける。
一呼吸程の時間が経ったあとでようやく口を開く。
「わかりません」
静かに告げるその言葉が本心だろう。
そう考えていると言葉が次々くる。
「ずっと本体――淡雪から送られてくる感情に一喜一憂していました、あの時の事は本当にうれしかった」
恋人同士になったあの時の事だろう。
「実は明確な自我ができたのはそこまで前じゃありません、だから私は淡雪でした」
泣く寸前のような笑顔を浮かべて――
「お――山上さん、起きたら全部夢だった人はどう受け止めればいんでしょうね?」
風に吹かれて消えてしまいそうな人間を前に俺は――
「じゃあ、一からまた築こ――」
といったあたりでどこからともなく声が聞こえる。
「もしもし、あの――淡雪です」
出所は持っているスマホからだ、慌てて取り出すとそれは電話ではない。
「録音機能?」
画面に映るのは録音内容を再生している表示だ。
何にがなんやらわからず二人でその録音に耳を傾けた。
明日も頑張ります。




