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4月29日-17

間に合いました。

 不意に鳥が視線を外す。


 そして少しずつ小さく――離れていく。

 普通なら胸をなでおろす状況だが思わず口から出たのは――


「待て!!」


 鳥はもう一度だけこちらを見た。

 そのまま去る前にもう一回言葉を投げる。


 目を見たときなぜか心がざわついたからだ。

 それはほぼ結び付かない名前が思い浮かんだからだ。


()()!!」


 普通ならまずつながらない名前だ。


 それを聞いたリーパー達も呆然としている様子だ。


 が、鳥には大きく影響が出ている。

 離れることから一転して近づいてきた。


「やっぱり!!」


 叫んで非常扉ギリギリに近づく。

 それに合わせて鳥が大きく一つ鳴いて、何かを飛ばしてくる。


 それは見覚えのある青みがかった髪を持った人間で――


()()()!!」


 叫んで受け止める。

 あまりの勢いに思わず転がってしまう。


 腕の中の淡雪は初めて会った時のようなワンピースを着ている。

 淡雪は恥ずかしそうに視線を外す。


「その……」


()()()()()


 気の利いたことなんて言えないので思いを伝えて抱きしめる。


 淡雪の頬に朱がさして俺の胸に顔をうずめようとして――


「これ邪魔ですね」


「……実は俺も思ってた」


 胸に突き刺さっている杭をさして二人で笑う。

 しまらないなぁ。

 と二人で笑う。


 と――


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」


 そう聞いてくるのはリーパーだ。

 何が起きているのかわからないとでも言いたげだ。


 それに対して淡雪は立ち上がり言い返す。


「私は正確には淡雪と呼ばれていた存在ではありません」


 沈黙が流れる。


 目の前に居る人間はどう見ても淡雪だし。

 俺を奥谷と呼んだ。

 淡雪じゃないとおかしいはずなのだ。


「四月十三日、何が起きたか覚えていますか?」


「えっと」


 あまりにも多くの事が起きていたためすぐには思い出せない。


「……私たちが本格的に活動する前ね」


「そんなに前なのか?」


 言われて驚く。

 もうずっと戦っている気がして、それよりも前と言われると途端にものすごく昔に思える。


 すると淡雪ではないと名乗った少女が口を開く。


「……『回転者』を覚えていますか?」


「ん? ああ、確か俺の内臓をめちゃくちゃにかき混ぜることが可能な奴だったな」


 その答えに相手はゆっくりとうなずく。


「その時、()()()()()()()()()()()?」


「へ? えーと確か()()()()()()()()()()()()()――」


 あ。

 とあることに思い当たる。


 だがしかしすぐに否定する。


「いや、でも下半身はバラバラになって川に流されたはず……」


 その言葉にリーパーもうなずいた。


「いくら私たちでもその状態からは再生なんて……」


 が、すぐにリーパーは首を振って否定する。


「ああ、なるほど()()()()()()()()()()()


「そういえばバラバラになった体を回収したって聞かなかったな」


 半分になった後で成長して元の大きさになったはずなので、確かにバラバラになった方は何も言っていなかった気がする。


「ええ、本体も気づいていなかったようですが、バラバラになった後で時間をかけて集合してずっと川の底で待ち続けました」


 リーパーは窓の外の鳥を指さして。


「アレはなんで作ったのかしら?」


 その質問には視線をそらし。


「ひ、暇だったんですよ、本体から来る情報を眺めているだけだと暇だったので周りの物でサポートを作っていたらあんな大きさになっちゃったんですよ」


 そこまで聞いてリーパーは肩をすくめ。


「今日はここまでにしておくわ、さすがに分が悪いもの」


「逃がすと思いますか?」


 スルリとどこかから見覚えのある細い剣を構える。


 俺の右手に視線を下ろすと、ほぼ同じデザインの剣を持っている。

 疑問に思うが今はそれどころではない。


「いくぞ」


 と俺も口に出して、調子のよくなった体で剣を構える。

 外には淡雪が制御するサポートの巨大な鳥が飛んでいる。


 圧倒的に有利な状況でリーパー達を追い詰めることができた。


 そんな状況なのにリーパーは余裕の態度を崩さず。

 微笑みながら――


「きなさい、相手になるわよ」


 だから二人で全力で突っ込んだ。

明日も頑張ります。

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