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4月29日-12

間に合いました。

 空気が吸い出される暴風に耐えながら立つ。


 足腰にほとんど力は入らずかろうじて動ける程度だ。

 肩に剣をかつぐように構え直す。


 対して異形は機敏に跳ね回りながら突撃してくる。

 目としてばらまかれたスマホのおかげか見違えるように鋭い動きだ。


「めん  どう な」


 殴られるその一瞬、腰を落として釣り竿を振るうように担いだ剣を振り下ろす。


「やる な」


 直撃する一瞬手前で床をつかんで急停止した。

 たったとそれだけでよけられて――


「く まず」


 剣に身を引かれるようにして体が泳いでしまう。


 そこをつけ込まれて踏み込み腹部を狙った拳が飛んでくる。

 ついさっき考えたくもないほどの攻撃を喰らった場所に入ればただでは済まないどころか胴体から真っ二つになる可能性がある。


「かん べん してくれ」


 右手を放し、飛んでくる拳に合わせてぶつける。


 果物がひしゃげるような音がして右手が破壊された。

 痛みや熱などは感じず、むしろぼんやりと温かい気がする。


 しかし、致命打は避けられた。


「ああ そうか」


 橘から受けた傷も治っていない状態だから、脳が痛いという信号を処理しきれていない。

 さすがに体を補修する機能もへばってきたのか直るのが遅い。


 渾身の一撃をしのがれた異形は落ち着いて一歩引いて右腕を振りかぶる。

 狙いは俺の頭だ。


 飛ばされる一瞬、左腕だけで引いた剣をぶつける。


 火花が散り弾かれる。

 が軌道がそれて頬をかす――えぐられた。


「せい!!」


 右腕を振り切った相手に蹴りを放って距離を取る。

 相手をけ飛ばすというより自分を後ろに押したというのが近い。


「さて」


 破壊された右手もかろうじて握れる程度には回復しだす。


 そんな確認をする間に異形が殴り掛かってくる、

 脇のあたりから腕の一部を展開しているのか四本腕だ。


 腕が届く範囲まで踏み込んできたらそれぞれがタイミングをずらし殴り掛かってくる。


「く」


 呻く。


 するどく、そして暴力的な破壊力を持っている。


 それが絶え間なく飛んでくる。


 体をできるだけ右に寄せる。

 正面から受けるならフックやアッパーも含めてどこから飛んでくるかわからない。

 しかし体を右に寄せていくと、攻撃は必然的に左からに集まる。


「っ!!」


 左手の剣をぶつけに行き何とかしのぐ。


 ――が


「かっ!!」


 隙をつかれ蹴りを入れられる。


 力任せだからかけ飛ばされ、逆側の壁にぶつかって止まる。


「ぅ」


 崩れ落ちて壁に縋り付くようにして立ち上がる。


 そこに全力で駆けこんでくる異形。


 殴られるその瞬間、壁に柄尻を当てるようにして切っ先を異形に向ける。


 甲高い音がして胸の中央あたりに突き刺さった。


 さすがにこれには動きが止まった。


「お!!」


 チャンスだ。

 け飛ばすようにして刀身を引き抜き。

 大上段に構えて――


「さいごぉ!!」


 振り下ろす。


 それは肩から入って股下まで切り抜けた。


 まだ一応動けるのかでたらめに手足を動かしている。


 視界がぼやけ、足元がおぼつかない。


 しかし――


「まだ、まだやるしか」


 そう呟いてゆっくりと前に進んだ。

明日も頑張ります。

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