4月29日-10
間に合いました。
妙だ。
機内で振り回すには長すぎる剣をできるだけコンパクトに振り。
突きと斬り上げで二体に対応しながら胸の内で呟く。
橘と異形の二体しか攻撃してきていない。
見るからに斬った張ったに向かないナードはともかくリーパーなら二体の間を縫って攻撃にしかかれるだろうにその様子はない。
離れた場所でじっとこっちを見ている。
「しゃぁ!!」
天井を蹴って真下に飛び降りてくる橘と身を低くして突撃してくる異形。
段々と連携が取れてきたようだ。
――が。
「こっちも慣れてきた!!」
橘ははやく鋭い。
対して異形は手数は多いが狙いは甘い。
軽く軸をずらすだけで空振りする。
だから半歩下がり避けて、余裕をもって突きを放って橘を迎撃する。
盛大に火花が散り空中で身を翻し、たわませて突撃を仕掛けてくる。
剣先を床につけて傾斜をつけた刃で受ける。
「ちぃ!!」
寸前で橘は上に跳び、正面から刃に突っ込むことを避ける。
「がら空き!!」
腰を落としかがみ、できるだけ身を低くすると見えるのは跳んでがら空きの橘の懐だ。
全力で斬り上げて正中線に斬りこむ。
――が。
「くっ!!」
斬りこめた――だが、そこまでだ。
装甲に食い込んだがそこから先へ刃がいかない。
単純な腕力不足だ。
無理な姿勢で振ったとしてもうまくいかない。
「まずい!!」
これ以上斬りこめない。
と橘は理解したのか唐突に体重をかけてきた。
コンパクトとはいえ金属の塊の上に簡単に人をねじ切れるパワーを持っている。
押し倒されたら終わりだ。
だから柄を握ったまま全力で後ろに跳ぶ。
金属がこすれ合う音と共に何とか難を逃れる。
「あっぶな」
手近な酸素マスクを口に当てて息を整える。
そこを狙っていたかのように異形がダッシュしてくるが、ぶつかる瞬間の目測を誤ったようにたたらを踏んだ。
「ん?」
明らかにおかしな挙動だ。
今更なことに気付くが、手足を集めて作られたのがあの異形なら目や耳はどうなっているのだろうか?
普通に考えれば元の目や耳を残している気がするが、無言で殴り掛かってくる異形には目も耳もない。
「おかしい」
つぶやきながら考えを続ける。
ふとした弾みにまた倒れないように隙を見て飴玉を口にほおりこむ。
考えてみれば飛んだり跳ねたり、三次元的な動きをするのは橘ばかりで、異形の方はほとんど動きはまっすぐだ。
「何なんだこの違和感」
つぶやいたらその違和感が増していく。
そもそもなんで今まで隠れ続けていたナードがこんな危険場所に連れ出されたのか。
と、唐突にあることが閃く。
「ナードが操作しているか?」
突拍子もない考えだ。
しかし、できるだけの戦力を集めたいならあの異形も必要だろうが、直接戦えないナードを連れてくる理由はリスクが増えるだけのはずだ。
だが、あの異形を動かすときにナードも必要なら話は変わる。
「確かめるか……」
そう呟いて構えをとった。
明日も頑張ります。




