4月29日-7
間に合いました。
「羽田に来てみたわけだが……」
移動自体は大きなトラブルもなく、昼寝を挟んだくらい順調だった。
獲物である長尺の剣は別に運び込まれている。
「準備があるからと早めに搭乗手続きしたが、暇だな」
滑走路に面した場所はガラス張りになっており、開放感のある空間だ。
並べられたベンチに座りながら携帯栄養補助食品をかじる。
あまり食べたことはないが、素朴なメープル味が好みだ。
家族ずれもいてなかなか和やかな空気だ。
この人たちを何としてでも無事に向こうにたどり着けるよう気を引き締める。
「穂高さんの話だとVIP用の待合室があるって話だけど……」
ノスタルジストは金だけはあるのでそこに居るかもしれないってことで見張っているそうだが、結果は芳しくないらしい。
民間の場所なので官があんまり介入するのはよろしくないとかで思い切ったことができていないと頭が痛そうにつぶやいていた。
そうこうしている間に乗り込むことを促すアナウンスが――
「JALAjAKさsぁwONめおあwでsryつおい##!”!#1」
心当たりがあるでたらめな音声だ。
やはりみられていた通り臨時の一二三便は化け物たちが用意したものなのだ。
背筋にひやりとした感覚を得て腰を浮かべる。
ふと気づくと以上に人が多い。
それなりに閑散としていた印象だったのだがすし詰めに近いくらい人が集まっている。
「まさか犠牲者数まで乗せるつもりか!?」
嫌な予感がして慌てて人の流れに合わせて乗り込む。
航空券の確認すら行われないままドンドン飛行機に押し込まれてしまった。
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「何人乗りこめましたか!?」
電話口で小声で穂高さんに問いかける。
「搭乗手続きで弾かれて、結局一人もむりだったわ」
「無理やり乗り込むのは無理でしょうけど、裏口的なものはなかったのですか?」
短いが鋭い言葉で返事が返ってきた。
「官からおさえようとしても、そもそもどこの会社が運航しているかすら把握できなかったの」
「だから普通に搭乗手続きを踏ませようとしたんですね」
「そういうこと、でも明確に軍人はダメだったわ」
そこまで聞いて一つ息を吐く。
「つまり今ここにはノスタルジストや昭和の化け物に対応できるのは俺だけなんですね」
ある程度覚悟はしていたが、急激に増えた責任に思わず肩を落とす。
「運び込んでもらっていた武器の方は?」
「そっちはしっかり運び込まれてるのは確認しています」
そのことには胸をなでおろす。
あとは取り付けた発振器を頼りに探し出すだけだ。
「誰が来ているかわからないですし気を付けます」
「向こうもかなり本腰を入れているのか、外からは何もわからなかったの」
そこで申し訳なさそうに一言。
「今までは淡雪ちゃんの装備や私たちからの支援があったけど、今回ばかりは何もできないわ」
「やるだけやります」
そう言葉を伝えて電話を切る。
キャビンアテンダントは全体的に判別できない。
客席の並びもどことなく異常に感じる。
なぜか巨大な生物の腹の中のような気がして、頭を振ってそんな妄想を振り払う。
「さてどうなることか」
といったあたりで飛行機が滑走を始めた。
明日も頑張ります。




