4月29日-6
間に合いました。
「なんで警察署に向かうまでに一度死にかけてるのさ」
警察署のロビーにて受けた電話の向こうからあきれ気味の声が聞こえる。
しばらくぶりとはいえなんだかんだで顔見知りになった人にたまに頭を下げながら電話を行う。
「面目ない」
「無茶させているこっちも悪いんだけどさぁ」
としりすぼみになる。
そのあとで青木さんが一言謝る。
「ふがいない大人たちでごめんねぇ、どこかで落ち合う形にすればよかったね」
「その、頭に血が上って」
思い出してみれば結構すごい事を口走っていた気がする。
同年代で因縁もあるのでテンションが上がってしまい顔から火が出そうだ。
「反省はここまでにして、これから山上君の動きなんだけど――」
そこで言葉に詰まっているようだ。
「問題の一二三便は東京羽田発だったんだよね、つまり一度関東に出てもらわないといけない、できたら民間の国内線でね」
「新幹線より速いのはわかりますけど、なんで民間の飛行機限定なんですか?」
その質問に青木さんは一瞬だけ言葉に詰まり、話始める。
「一二三便にはよくない話が有ってね、自衛隊機や米軍機が撃墜したって話」
「え? 違いますよね」
「もちろん、原因ははっきりしているんだけどねぇ、どこの時代どこの場所にも受信しちゃいけない電波を受信する人がいるんだよ」
とどこか呆れ気味に話した。
「ともかく実際は置いておいて、そんな噂があるような事件でうかつに軍用機を飛ばしたら何かのはずみで撃墜させるかもしれないからねー」
「間に合うならいいんですけど」
そこで不安になっていること聞く。
「どの航空便で起きるのかという事ってわかるんですか?」
「ん? ああ、ええとねどれかわからないなら作っちゃえってことで欠番だった一二三便をねじ込んじゃったみたい」
「え?」
とっさに飲み込めないとんでもないことを言われた気がする。
「いやいや、航空機の路線便の名前ってそんなポンポン変えることができる物じゃないですよね、印象でしかないですが」
「うん、だから言ったでしょねじ込んじゃったって、何をどうしたのかわからないけど今日の全く同じ時間に羽田から一二三便が飛んじゃうの」
どこか他人事のように青木さんは言った。
いや、どこの誰がやらかしたのかは分からないのなら実際他人事なのだろう。
「というよりも言ってしまえば出来事に合わせられた方が近いかもね」
「……つまり墜落するために飛ぶ一二三便が用意されたってことですか?」
突飛ともいえる考えを口に出した。
「そうかもしれない程度だけどね、なんにせよこの飛行機には乗客ものるみたいだからね、史上最悪の航空機事故を止めないと何人死ぬかわからない」
その言葉を聞いて背筋を伸ばす。
「まぁ自衛隊とかそっちからも腕利きは乗り込む予定だそうだからあまり気負わずにねー、さすがに今度は僕は関係ないぞ」
「なぜそんなことを?」
聞き返すと明らかにトーンが落ちた声で返される。
「なぜか僕、怪物やらと戦うことが多くてねぇ、本職じゃないのに……」
はぁ。
と小さくため息をついて。
「そういう星の元に生まれたのかなぁ」
「その、なんというか、ありがとうございます」
その答えは流石に虚を突かれたのか一瞬空白が開いて。
「どういたしまして」
とおいうあたりで迎えの車が来たようだ。
「迎えが来たのでそっちでよろしくお願いします」
「うん、待ってるねぇ」
といういつも通りのゆるい口調で電話が切られた。
よし。
と心構えを新たに、身の丈ほどの得物をもって車に向かった。
明日も頑張ります。




