4月29日-5
間に合いました。
真下から斬りつけた。
がその音は弱々しい。
「ぁ――」
原因は急激に握力が落ちて剣を握る事すらできなくなったからだ。
同時に膝から崩れ落ちて胸のあたりに橘の体当たりが直撃した。
痛い、というより何かが弾けたような喪失感を得て車にはねられたように大きく飛ばされる。
わずかな浮遊感と共に地面に激突し、勢いのまま転がってしまう。
体じゅうが身をよじるような痛みを訴える。
特にひどいのは胸だ。
満足に呼吸もできない。
そして逆に下半身からは痛みが来ない。
これは――
「背骨……折れた」
事実足が全く動かない。
それらと同じくらい切実な問題がある。
「腹が……へった」
傷ついたこと以上に空気が抜けたように全身に全く力が入らない。
腹の虫もならないほどの空腹を感じている。
注意されていたのに忘れていた。
「燃費が……悪すぎる」
じわじわ体温すら下がっていく感覚を得ながらラムネ菓子を探す。
服はそれほど破壊されていないのであるはず。
と思いながら朦朧とする頭で探す。
ようやく探し出した容器のふたを開けて――
「ふん!!」
「がっぁあ!!」
苛立たし気な声ともにもっている手ごと踏み潰される。
金属の重さが右手に乗せられてくぐもったきしむ音がして、骨が砕かれた。
そして容器をけ飛ばされる。
「勝負あったなぁ、山上ぃ」
足を俺の手からどかさず同時に手に乗せた足をよじる。
「ぎっ ぁ!!」
ねじられ、すりつぶされる、そんな痛みが走り、体をこわばらせる。
満足に悲鳴を上げる体力すら残っていない。
呻くように浅く息をするしかできていない。
「ふん、その様子ならこのまま死ぬだろう」
足を俺の手からどけてどこかへ歩いていく。
耳を澄ませると橘は何かを拾ったようだ。
「もしかしたら拾いに来るかもしれないからな、あばよ」
今度こそどこかへ去って行った。
相変わらず下半身からは何の感覚も来ない。
はね飛ばされ、地面に転がるうちについた傷から流れる血で段々体温が奪われていくのがわかる。
そのせいか体が小刻みに震える。
「さ むい」
体を抱きかかえるようにして必死に丸まり寒さをこらえようとする。
と手に違和感を感じる。
「これ――」
ラムネ菓子だ。
ぼんやりとした頭で思い出すのは、毒入りとそうでないモノ二つあったことを思い出す。
視界もかすれて、手触りも血で滑るのでよくわからない。
だから祈るような気持ちで蓋を噛んではがし全部噛まずに飲み込んだ――
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だれかをかんじる
「おくや、さん」
だれだ?
「――です」
きこえないけどわかる
あわゆきだ
「ごめんなさい」
いい
きにするな
いつあえる?
「……彼女は死にました」
いやだ
「ごめんなさい」
まって
「……」
まってる
=============================〇==
目が覚めた。
「賭けに勝ったか」
目が覚めることができたという事はそういう事だろう。
身を起こすと――
「うわぁ……」
思わずそんな声が漏れるくらい地面が血だらけになっている。
一部はこぼれたような血ではなくてこすったような跡になっている箇所もある。
「どうやって掃除しよう」
とどこかずれたことを考えて頭を抱えた。
明日も頑張ります。




