4月29日-2
間に合いました。
起きてからの事を青木さんに伝えた。
するとある言葉を口にした。
「グリコ・森永事件かぁ、なるほどねぇ」
と納得したような返事が来た。
「確かにあれは昭和の大事件だ」
「そうなんですか?」
言葉に出てきた二つの会社はコンビニに行けば両者のお菓子が売られている。
とてもありふれた会社だ。
昭和を代表すると言っても過言ではないまで言いそうな様子の青木さんに疑問を覚える。
「もしかしてその二つは元は同じ会社だったとかですか?」
「ん? ああ、そうか知ってるわけないもんね」
一つ咳払いをして口を開いた。
「昭和の事件で大企業のグリコの社長を誘拐して身代金の要求、食品会社への脅迫、毒入りの食品をばらまいて、警察への挑発を報道機関に送るなどやりたい放題やられた事件だよ」
そこで一呼吸だけおいて話を続ける。
「そして未解決事件の一つでもある」
「え!?」
にわかには信じられない内容だ。
「それだけのことをやっても捕まらなかった!?」
「そーいうこと、まぁ原因はいろいろあるけど、犯人は金品を要求はしたけど受け取りに出てこなかったこともあるだろうね」
「え? 身代金の要求や脅迫までしたのに?」
その返事に青木さんは力ない言葉で答える。
「だよねぇ、そういうわけで動機も不明、遺留品からの特定も難しい、そして急な終息宣言で一切行動しなくなる本当に謎の事件でねー」
と言いながら何かをすする。
「で、毒入りラムネに書かれていた言葉 どくいりきけん たべたらってやつだけどその言葉が書かれたお菓子がばら撒かれて、調べたら実際毒入りだったんだよね」
「なるほど」
その言葉を聞いて頷いた。
そのあと含み笑いをしているような声で続ける。
「まぁ、マメだよね、同じお菓子用意してわざわざその言葉を書いたものと入れ替えるとか」
「いつもにまして行動が読めなかったです」
実際途中からリーパーが何をやってくるか予想することはあきらめて流れに身を任せていた。
「まぁお疲れ様、とりあえず近くの警察署に向かってくれない? その家に迎えをお願いしてもいいけどすごく騒ぎになるよ」
「わかりました」
確かに誰もいないはずなのにパトカーが来たら騒ぎになるだろう。
だから徒歩で指定された場所に向かう方が良いだろう。
そこで思い出したかのように青木さんから言葉が追加される。
「あ、そうそう、昨日渡された剣ちゃんと持ってきてね、こっちにないみたいでさ」
「あ、忘れてました」
言われるまで各印することすら忘れていたことを思い出す。
部屋に戻り丈夫な黒い布袋に包まれた剣があったことを確認した。
何となく気が進まないが中を確認する。
口を縛っている紐をほどくと、見覚えのある柄が見える。
「よっと」
鞘から抜いて構える。
それは窓から入ってくる光を鈍く反射している。
特に問題ないことを確認して鞘に戻す。
元のようにちゃんと口をひもで縛って中が見えないようにする。
ほかに持ち物もないのでラムネ菓子と――
「一応持っていくか」
といって毒入りのラムネ菓子もわかるようにしてポケットに入れる。
その後、幸次さんにむけた書置きを残して家をでた。
明日も頑張ります。




