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4月29日-1

間に合いました。

「朝か……」


 最近はスイッチでも切れるように寝て起きることができるようになった気がする。


 軽く伸びをして上体を起こす。

 小腹が空いたので脇の椅子に掛けられた上着から昨日渡されたラムネ菓子を取り出そうとしてあることに気付く。

 容器に小さな紙が貼られている、その紙には言葉が書かれており――


「どくいり きけん たべたらしぬで」


 ひらがなのみで書かれたどことなく間抜けな空気があるが、書かれた内容は物騒だ。


 気味が悪いのでもとにもどして、妙に静かな気がするので改めて周りをみる。


 場所は見慣れた部屋――()()()()()


「ん?」


 そこでようやく気付いた。


()()()()()()()()()()()()()


 慌てて飛び起きると、ドアの向こうからパタパタと足音がする。


 ドアから顔をのぞかせたのは、


「よく眠れたようですね、山上君」


 と()()()()()()()()()()()

 いつものワンピースに水色のエプロンまでつけている。


 慌てて殴り掛かろうとして、流れるように一歩踏み込まれて懐に入られる。


「慌てすぎですよ」


 という簡単な一言と共に足を払われてバランスを崩す。


「この家を壊してもいいなら暴れてもいいですけど、どうします?」


 その言葉で動きが止まる。


 確実に倒せるならいいが、考えなしに突っかかって何とかできる相手とも思えない。

 そう考えると大人しくした方が良さそうだ。


「幸次さんは?」


「ふふ、彼は昨日からお仕事でいないだけですから心配はいりませんよ」


 一瞬怪しむが嘘をつく理由は思い浮かばないので信じることにした。

 その後で妙な言葉ががかれたラムネを見せて。


「この紙の言葉って正しいのか?」


「残念ですが本当です、かなり強力な毒が入っているので、本物はこちらです」


 と言いながらエプロンのポケットから見覚えのあるラムネ菓子を出してきた。


 毒が入ってないことを示すためか、一個取り出してリーパーが食べた。


「律義だな」


「性分ですから」


 クスクスと笑うリーパーから受け取りつつ部屋の外に出ると、香ばしいにおいがする。


「朝食を用意したので食べましょうか」


「……おぅ」


 小さく返事をして今はしたがうことにした。


=============================〇==


「悔しいがうまかった」


「お粗末様でした」


 手を合わせ軽く頭を下げる。

 言うつもりはないが、腕前は淡雪以上かもしれないと思った。


 その仕草をほほえみで受けた止めたリーパーは食器を下げて流しで洗い始める。


「今さらだけど、()()()()()()()()()()()()


 手際よく洗い物をしている背中からは何も読み取れない。


「何をさせたいんだ」


 そこで蛇口をひねり水をながし始める。


「なぜこの街なんだ」


 すすいだ食器を水を切るためのラックに立てかけるように並べていく。


「どれかだけでも答えられないか」


 すすぎ終わったのか手をタオル地のハンカチでぬぐいながらこちらを向く。


「その答えになる物をお返ししましょう」


 といってある物を差し出してきた。


 ()()()()()()()


 受け取って待ち受け画面を開くと――


「うわ!! すごい着信」


 と言っている間に一つの着信があったので受け取る。


「すいません、青木さん、今――」


「いる場所はわかっている、よかったつながった」


 と電話の向こうで胸をなでおろしたことがわかる。


「なんでいきなりそっちに居るのさ」


「その……リーパーに誘拐されていたみたいで」


「は!?」


 この報告は流石に驚いたのか比較的驚いた声が返ってきた。


 そこで視線をめぐらすと、どうやらリーパーはもう帰ったらしい。

 乾燥ラックに立てかけられた食器がなかったらまぼろしだと思うくら鮮やかな去り際だ。


「監禁されていたりする?」


「えーと、そんなことはなく朝食を用意してもらったので食べました」


 そこで絶句が入る。


「たまに思うけど、山上君ってすごい事やらかすよね」


「そうですか?」


 自分ではピンとこないので内心首をひねる。


「ともかく無事そうでなによりだねぇ」


 とようやくいつもの調子に戻って情報交換を始めた。

明日も頑張ります。

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