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20190428-2

間に合いました。

「完全にやられてた」


 協力を『お願い』していた病院の理事長室から出てきて針山警部に伝える。


 車の助手席に乗り込み元の署に向けて発進してもらう。


「くそ!! 嬢ちゃんがいなくなったからって好き勝手やってくるな!!」


 針山警部が苛立たし気にハンドルを指で叩いている。


「まぁその辺はこれから考えよう、デジタルが介入できない通信手段とかね」


 肩をすくめ返す。

 相手がどこまでのことができるかわからないがとにかくこの情報を持って帰ることが大切だ。


 電子的なネットワークがかなりの部分で掌握されていると。


「ともかく向こうさん腰がかるいよねぇ」


 しみじみと感想を漏らす。

 ここまでの事件で驚くのはノスタルジストメンバーのフットワークの軽さだ。

 瞬間移動じみた移動方法と飛行できることから考えてもあまりに動きが早い。

 というよりも――


「耳が早すぎるんだよねぇ」


「……まぁな、こっちの動きにそく合わせて動いてくる」


 今回の件が顕著だ。


 送り届けた後、すぐに理事長に偽の連絡を行い橘君を連れ出して雲隠れする。


「まるで内通者がいるように鮮やかだよねぇ」


「……本気でいってんのか?」


 低い声で返される。


 その目はただこちらを見つめている。


「本人にそのつもりがなくやっている可能性がある、例えば――」


 といって懐のスマートホンを取り出して示す。


「これとかね」


「……定期的にクリーンにしているから大丈夫なはずだがな」


 言葉とは裏腹に針山警部の視線は不安げだ。


 ハンドルを握る手に若干力が込められているように見える。


「……連絡は?」


 その質問が来ることを見越して何度か連絡しようとしているが――


()()()()()()()()()


 その瞬間針山警部はサイレンを鳴らしてアクセルを踏み込んだ。


「急ぐぞ!! GPSで追跡されてるってことだろ!?」


「まぁね、針山警部のスマホも頂戴ね」


 念のため針山警部の受け取って真っ二つにへし折る。


 物理的に損傷させただけでは中のデータが壊れるわけではないので、残骸は袋に入れて邪魔にならな場所にほおりこむ。


「カーチェイス?」


「そうなるな!!」


 と言っている間に見覚えのある人影が出てきた。


 それは人の手足を人間の形に押し込めた存在――


「堀田か!?」


 その叫びに対応するように、地面スレスレを跳ねるような軌道で追いかけてくる。


 周りの車は素早く脇に避けてくれるので事故の心配はない。


「ああ、もう、僕は戦闘要員じゃないだけどな!?」


 若干手になじんだ拳銃のグリップを握りぼやく。


「車載無線ならネットにはつながってないからこっちで応援――いや迎え撃つ準備をしてもらう」


「無理無理、拳銃じゃ効かないって」


 金属の塊、それも銃弾を見切れるような反射神経の相手に拳銃がきくとは思えない。


 狙って撃とうとするが、狙いが定まらない。


「ならなんでお前は銃構えてんだよ」


「こうするため!!」


 マガジンから弾を抜いて、地面に投げる。


 狙いは追っ手が足をつく地点だ。


「うまくいけば転ぶはず!!」


 その結果は――


「……」


「無言はやめてくれないかな」


 あっさり飛び越されて黙る。


「銃弾避けれる奴が地面を転がってくる障害物をよけれないわけがないわな」


「うまくいくと思ったんだけどな」


「あと、あとでちゃんと弾拾っとけよ」


「うへぇ……」


 若干げんなりしながら、空になったマガジンを銃に戻してつぶやく。


 こんなことなら多少重武装してくればよかった。

 などと後悔しながら話しかける。


「逃げ切れるかな?」


「無理だ、直線でなら同じスピードだが――」


 日本の道はどもまでも続く直線なんかない。

 つまりどこかでカーブに差し掛かる。


 車は一定以上のカーブではスピードを落とさざるを得ない。

 最高速度を維持したままカーブできる腕を持つのはレーサーくらだろう。


「カーブで詰められる」


 その言葉のとおり、追っ手はカーブを壁面を足場にしたり、体のばねを使用してほとんど減速せずおいかけてくる。


「高速乗ったら!?」


「その手前で追いつかれてスクラップだ」


 八方手詰まり感が強い。


「あ」


 とあることに気付いた。


「なんだ何か思いついたのかよ」


 向かう先は川にかかる橋だ。


 これは賭けだ。

 だけどこれしかないというかけ。


「――!!」


 いよいよ追いついてトランクに掴みかかってひしゃげさせ登ってくる。」


()()()()()()()!!」


 いきなりの話に――


「はぁ!? ()()()()()!!」


 察して迷わず川に向かってハンドルを切る。

 同時に二人で足を踏ん張り、両手で頭を挟み全力でヘッドレストに頭を押し付ける。


 柵をぶち破り、川に一直線に落ちる。


 その衝撃でエアバッグが膨らみ、そこに上半身ごとぶつかる。


「せーので窓を破ろう」


「おう!!」


 エアバッグにはさまれながら、合図をおこない。


 二人で拳銃のグリップを使って窓を破る。


 勢いよく水が入ってくるが、その間落ち着いてシートベルトを外す。


 車体を叩く恐ろしい音が連続するがちゃんと待ってある程度車内が水で満たされる――()()()()()()()()()()()()()()()車外に泳いで出る。


 視界には手を突き出して殴り掛かってくる追跡者。

 しかしその動きは水の中という事もあって格段に鈍い。


 殴られて骨がきしむが耐えた。


 が――


「――!!」


 足を掴んできた。


 ここまでか。

 と思ったら。


 針山警部がジェスチャーで僕が手に持っている物を渡せと示している。

 ダメもとで投げる。


 それに必死の形相で飛びつきマガジンを抜いた。

 その後針山警部は手に持っていたリボルバーから銃弾を抜いて僕の銃のマガジンに装填した。


「!!」


 喰らえ!!


 と針山警部は口を動かして、僕をつかんでいる手の親指にほぼ密着させて発射する。


 寺の鐘を叩いたような鈍い音と破裂音が響いて火花が散る。


 至近距離の銃弾が指という細いものに直撃したらさすがに浅くないダメージが入ったようで梗塞が緩む。


 だから必死に水をかいて水面に向かう。


 対して追跡者は金属製の体ではさすがに浮かぶことができないのか沈んでいった。


「助かった!!」


「感想は後だ、とにかく逃げるぞ!!」


 距離を離しただけなのでその意見にうなずきつつ岸を目指して泳いでいった。

明日も頑張ります。

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