4月27日-3
間に合いました。
俺とウォーモンガー。
淡雪とリーパー。
自身の相手はわかっているかのように自然に分けられた。
ウォーモンガーは大上段に剣を構え。
俺は腰にマウントした剣の柄に手を当てる。
ウォーモンガーは降った雪が蒸発し湯気をまとい。
俺は降った雪が踏み重なっていく。
対照的だ。
と感じる。
互いに踏み込みを重視しているのか空を飛ぶことなく足首の上あたりまで雪に埋まっている。
アシストフレームに搭載された未来予測システムは俺の強化外骨格にも搭載されている。
その未来予測はウォーモンガーはただまっすぐ振り下ろしてくることを示している。
ウォーモンガーを視界にとらえてただ待つ。
淡雪の見立てが正しいならウォーモンガーに時間は残されていない。
それにウォーモンガー自体が我慢強い性格ではない。
だから――
白い爆発が起きる。
同時に赤い砲弾が湯気を突き破るようにして飛んでくる。
それは空気を裂くように――いや音を裂いたときにできる陽炎のような空気の密度差をまとっている。
ただ踏み込み剣を振り下ろす。
その動作で地面を踏み割り、音を超えた。
避けることなく前に進み、正面から受ける。
その衝撃で地面に打ち込まれるようにしてめり込む。
そのウォーモンガーが逃げようのない一瞬に居合の要領で剣で斬りかかる。
体の各部からプラズマジェットを吹きだし、のこぎりでも引くように体全体で後ろに跳んだ。
あまりに高温の為か雪は一気に酸素と水素に分解され小規模の爆発が連続している。
地面にめり込んだという事は固い地面に足がついている。
全力で踏んで前に跳ぶ。
空気が冷たいせいか加速が甘い。
前より遅い。
居合で抜き放った剣を翻し、向こうの左肩から袈裟懸けに斬りかかる。
ウォーモンガーは空中で地面に剣の切っ先を向けて、砲口を展開。
即発射する。
着弾した場所は急激に雪が蒸発し――水蒸気爆発を起こす。
その衝撃で距離をあけられて、ウォーモンガーは林立する岩に三角とびの要領で鋭角に跳んだ。
細身の剣は赤熱を越えて、白く輝いている。
加速をしながら急降下し大上段から振り下ろしてくる。
俺は剣で受けて、カウンター気味に刀身を切り落とそうとする。
肘そして肩をコンパクトに畳み軌道を変更する。
音を置き去りにした世界のためか未来予測が意味をなしていない。
振り下ろされた刃はたやすく地面を蒸発、溶解させる。
しかし、雪が積もるという状況を再現しているのか溶解した瞬間以外は雪に覆われている。
ウォーモンガーは振り下ろした剣を水でもかき混ぜるように岩を溶解させて斬り上げてくる。
左拳で打ち払い、右の剣で足を払うように斬りかかる。
空中で膝から下をたたんで縄跳びでもするように避けられる。
そのまま空中で持っていた剣を手放して、左手に逆手にもつようにして地面を突いてきた。
地面が泡立ち――足が沈み込んだ。
狙いは俺自身を倒すことではなく、足場を崩し行動不能にさせることだ。
それに気づいて空に浮こうとする。
そこで胸の中央に対して押すような蹴りが入る。
バランスを崩したたらを踏む。
その足が泥に降りたように沈み込む。
突き立てられたウォーモンガーの剣の周りは地面が泡立ちその範囲が広がる。
赤く泡立つ波紋が広がったかと思えばそのあとすぐにまた雪に覆われる。
水面に雪が積もっていくような光景だ。
飛ぼうとしたら上回っている出力で叩き落とされる。
かといって遠距離を攻撃できる手段もない。
と、視界の端に林立する白い柱が見える。
あることを思いつき泥のように溶けた地面に沈みかけながら柱に向かって空を飛ぶ要領で加速する。
地面に剣先を突き刺したままウォーモンガーが追いかけてくる。
絶妙な距離を保っているため地面はずっと俺を飲み込むように溶けている。
高度を上げようとすると蹴りが飛んできて弾かれるかもしれないので向かいあうようにして低く飛ぶ。
柱まであと少し。
その瞬間ウォーモンガーは地面から剣先を引き抜き柱に向かってプラズマ砲撃を行う。
それは中ほどで大穴が開き、サイズが半分以下になる。
おそらくそれを足場に体勢を立て直すのだと思ったのだろうが――違う。
上半分が消し飛んだ柱の周辺の地面に目を凝らす。
揺らめいていない場所があった。
そこに飛び込み――一気に体が雪に飲み込まれた。
それもそのはずだ。
爆発をしのぐためにリーパーが掘った穴に飛び込んだからだ。
思った通りあなのそこは溶解していない。
視界は雪で埋まり全く見通せない。
しかし未来予測システムは動いている。
視界に示されたウォーモンガーの進路ははっきり見えている。
雪を突き破るようにしてそこに向かって一太刀浴びせる。
手ごたえはあった。
空中で鞘に納刀して振り返る。
と、白熱化した剣を持った左腕が空を舞っていた。
明日も頑張ります。




