April 27th-1
間に合いました。
泣く子も黙らせる海兵隊隊員にとってボスからの命令は絶対だ。
アシストフレームの頭部に後付けした暗視装置ともう一つの装置を起動させる。
「感度良好、いつでも突撃可能」
近接攻撃部隊のメンバー全員が準備完了したことを確認すると――
「支援の煙幕来ます」
控えめな炸裂音が響く。
広がるよう一瞬まって――
「Go!!」
叫んで全力で跳躍してとびかかる。
フレームで強化された足は一跳躍で数十メートルを詰める。
風を切り、車を圧倒的に超える速度で隣接し煙幕の中に突入する。
暗視装置は相手が出す微弱な赤外線を画像に変換している。
なので煙幕に隔てられていても相手を見ることができる。
「先進ソナーも良好」
音で相手を見る。
詳しい原理はわからねーがコウモリの様に耳で見ている。
それによって煙幕の中だろーと昼間みたいに見える。
テロリストの二人がひそんでいる岩がむき出しの場所にたどり着く。
穴と立てられた岩で見通しがきかねー場所だ。
視界には黄色くハイライトされた隊員たちが見える。
つけているアシストフレームが位置をリアルタイムで割り出して味方への誤射を防ぐ。
地面にはたまに薄い赤のサークルが映し出されている。
煙幕弾が着弾する予想地点を表している。
岩の林を走り抜けながらテロリストを探す。
と――
「しゃぁ!! この辺か!?」
穴から飛び出てきた真っ赤な人型――テロリストだ。
頭を下げて避ける動作をする。
頭上を何かが通り過ぎる音がする。
「くそ!! 視認不能かよ!!」
見えずともアシストフレームは先読みで回避を行ってくれる。
声からするとウォーモンガーだろう。
ウォーモンガーはさっきの一撃は完全な勘だったようで追撃は来ていない。
情報によれば奴らはまだ銃がきく状態のため、自動小銃を構え至近距離で発射しようとしたら――
「危ないですよ、“ウォーモンガー”」
と言って流れるような動きで突然目の前にもう一人のテロリストが現れた。
煙幕で視界がふさがれているのに狙いすましたように俺の銃をつかむ。
アシストフレームの方からは何も反応がない。
しかしとっさに手を放し、後ろに下がる。
「ちぃ!!」
死角から蹴りが飛んできていた。
下がってなかったら蹴り殺されていた。
どういうことかわからず。
とりあえず一丁の銃を手に取る。
「不思議でしょう? 見えないのに完璧に位置を合わせて――」
奪われた銃はこちらをピタリと狙っている。
「予測できない」
アシストフレームは避ける方向を支持していない。
一か八かで右に跳んで避ける。
「これはまぁ、簡単な話で」
言いながらこっちを追って銃弾が着弾する音がする。
フルオートで撃ったせいかすぐに弾が切れてその場に手放したようだ。
「私は人と比べて鋭い程度の聴覚しかないのですが――」
地を這うように一瞬で距離を詰めてくる。
「足音くらいはわかるのです、後は経験ですね」
来るであろうあたりを狙って引き金を引く。
この時もリーパーと思われる奴がくる予測は行われていない。
放たれた銃弾を当たり前のようによけながらさらに話してくる。
「予測できていないのはもっと単純に、そちらが私の動きを解析しているロジックの裏を突いているだけです」
さらっとトンでもねーこと言い出すのに背筋に寒気が走る。
向こうは結局視認できていないおらずまだこっちが有利だが楽観視したら即死する。
そんな覚悟をキメながら祈るようにもう一発放った。
明日も頑張ります。




