20190411
何とか間に合いました。
山上奥谷と淡雪の二人を無理をしてでも存在しないことになっているここに連れてきたのは正解だった。
五分もしないうちに関東一帯が解放されたという報告が入ったのだ。
「いやぁ、すごいねぇ」
腕利きが何時間かけてもお手上げだった作業が瞬く間に処理されていくのは頼もしくもあるが恐ろしさも感じる。
発電所などのインフラ関連はもちろんそれこそ軍の基地、省庁のメインフレームにアクセスし開放していく。
裏を返せば彼女たちはやっていなかっただけで、これと同じことをできていたのだ。
「というか、この施設の性能を超えるとかどんなトンでも存在なんだか……」
この施設は日本や極東のあらゆる通信を傍受解析可能なのだが、その施設を限界まで酷使している。
そのため機器を冷却する装置がフル稼働して、コートが欲しくなるほどだ。
ブルリと、体の芯から震えがくる。
それは部屋の気温のためだろうか?
それとも国家が懸命に作り上げ維持している大型施設すら追いつけない存在が目の前にいるからだろうか?
「ま、考えすぎかもしれませんがね」
さしあたり二人ともごく一般人に近い感性をしている。
たまに暴走していたそうだが、省みることはやろうとしている様子がある。
「おや? もうそろそろ半分といったところでしょうかね?」
サービスのつもりなのかモニターに日本地図が表示されて開放した場所は白い色で塗られている。
一応確認の意味を込めて解放された場所に連絡を取って、裏を取ることは忘れない。
「さーてここからは一進一退の――って、は?」
押し込んでいた逆サイドが一気に削られた。
どうやら最初からそのつもりで準備をしていたらしく、あっという間にすべて開放したらしい。
しばらくしても二人はまだ起きてこない。
不安になって起こそうとしたときに、モニターに文字列が急に現れた。
「えーと、このまま電子的に解体できないかやってみます、だって」
その言葉には慌てて返信する。
いま日本上空に『恐怖の大王』がいて、そのサイズは巨大だ。
もち落ちてきたらとてつもない被害が出る。
「ストップストップ、『恐怖の大王』? だっけ? まぁそいつが落ちてきたらどうするの」
「ぅ」
わかりやすいほど言葉に詰まった。
「とにかく僕がが『恐怖の大王』の弱点等を探すから待ってて」
「わかりました」
「そっちでも探ってくださいね」
とふ二人にも行っておくと。
短いながら承諾の言葉が返ってきた。
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各地の機能が回復したのならあとは早かった。
様々な研究機関から情報が挙げられてきたので、信ぴょう性が低いものを弾いてい行く。
二人はいまだにコンピュータの中でたまに送り込まれる存在を倒しながら全国を回っている様子だ。
なので確証が高い情報を伝える。
「頑張る二人に朗報だよ」
「なんですか?」
「『恐怖の大王』の正体がわかった」
「なんですか?」
テキストでは驚いているのかがわからないから少しだけ気落ちする。
がそれよりは優先すべきことなので口を開く。
「あれはある種の無機物が含まれた雷雲だよ」
「雷雲……」
三点リーダーをわざわざつけるノリの良さに口の端に苦笑が浮かぶ。
「で、この無機物の性質が厄介で様々な電磁波を吸収するんだよ」
「するとどうなるんです?」
「日本全土にチャフがばらまき続けられるようなもので、このせいで大規模な通信障害が発生しました」
そして、と続ける。
「この無機物は首尾よくどこかのコンピュータの回路に接触できたなら、自己組織化を開始します」
これが日本全土のコンピュータの機能不全を引き起こした。
「作るのは簡単にいえばアンテナ、つまり物理的な侵入経路を作るわけ」
「反則じゃないですか? それ?」
などと言っている本人が反則じみた性能をしているので思わず言葉が出かけてしまうが飲み込むことで我慢した。
「でも今普通に電波での交信ができているのですが」
「アンテナを作ってさ、そのアンテナから出される信号を吸い取ると思う?」
「なるほど、それを使っているわけですね」
「そういうこと、自分自身で最適化しだすから、乗っ取り返したらそのアンテナごと取り返せるってわけさ」
ただいつまでもというわけではないという報告があったので、急がなければならない。
「で、『恐怖の大王』が下から出していたものだけど、あれは遠くに自身の一部を届けるための形態だったようだね」
「なるほど」
そして、『恐怖の大王』の中身の仮説も立てられている。
それは――
「自己組織化した超大型のコンピュータだね、それが『恐怖の大王』」
「では結構もろいのでした攻撃すれば――」
「そうだよ、でもできない」
構造としてはあまり強くないのは確かだ。
でも――
「それをして、火でも付いたら燃えてしまう、空気中に散布した金属粉が燃えるようにね」
金属粉が発火して火事になるのはそれなりに存在する事故だ。
「日本全土を覆うような物体が燃えたら、日本の上空から酸素がごっそりと減る、そうしたらちょっとシャレにならない衝撃波が発生して今までと比較にならない被害が出る可能性がある」
「なるほど……」
一呼吸程して。
「では雨でも降れば――って駄目ですね、水への汚染がひどすぎますね」
「いっそ火口に向かって自分で少しづつ飛び込んでくれるか、一か所に固まって軟着陸してくれればいいのに、もしくは自己組織化ができないくらい濃度が薄まってくれればいいのに」
などとつぶやくと。
「あ、それですよ!!」
「? 何が?」
と、モニターに簡略化した『恐怖の大王』が出てくる。
「遠い場所に送ることしていましたけど、それを極端にはやめるのです」
「ああ、ドンドン送って崩壊させるってこと?」
「はい、 目的地は火口とか選ぶ必要がありますが、完全にハッキングして制圧すれば自由にできますよ」
『恐怖の大王』を利用する考えが頭をよぎったが振り払って無視する。
余計なことはやらない方が良いのだ。
「じゃあ、ハッキングで『恐怖の大王』の対処をお願い」
「わかりました」
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その後、『恐怖の大王』は発光し、身震いをしたらバラバラに砕けるように風に溶けていった。
とりあえずは一安心というやつだ。
二人はそのまま寝始めたらしく寝息を立て始めている。
その様子に苦笑を浮かべて、上がっている被害を見る。
そこにはおそらくという枕詞つくが通信やコンピュータが機能不全を起こしたために死亡したり負傷した人間、破壊された建物などが並んでいる。
広範囲かつ長時間深刻な影響を受けていたにしては驚くほど少ない。
が、これを二人に伝えたところで落ち込むだけだろう。
だから今だけは僕の懐に収めておく。
まぁ、これから処理しなければならないことを考えるとすこーし気が遠くなるが、それが仕事だと割り切り立ち上がった。
もうだらだら書くのはやめます。
もっと推敲せねば。
明日も頑張ります。




