20190427-1
間に合いました。
「おはようございます」
いつもたむろっている部屋に山上君と淡雪ちゃんの二人が訪れてきた。
なんというか空気が甘いというか、パーソナルスペースが近めになっているように見える。
見ているこっちがちょっと目が遠くなるくらい初々しいカップルの空気で胸焼けする。
なんだかんだで二人が付き合ってからじっくり見ることなんてなかったからこうしてみるのは初めてだ。
全体的に職員は温かい目で眺めていて、一部の女性職員は好奇の視線を向けている。
「おいおい、付き合い始めでうれしいのはわかるが、ちょっとは手加減してやれよ」
と言って針山警部は部屋の隅の若い男性陣を指さして――
「あそこらへんの奴らには目の毒だ」
「はぁ!? いくら警部でも言っていい事と悪い事ってあるんですけど!!」
「よ、嫁が画面から出てきてくれないだけだし」
「興味ないから」
と言いながら視線は泳いでいる。
「ま、そんなことは置いておいてだ」
雑に扱われた三人組は抗議の声を上げるがスルーしながら話を続けている。
「さてもう知っていると思うが、二人はノスタルジストとの戦闘に参加しなくていいそうだ」
「もう大詰めという感じですね」
淡雪ちゃんのその言葉に同意する。
「一時はどうなることかと思ったけど何とかなりそうだね」
今までノスタルジストに良いようにやられていたのは一人一人がとんでもなく強かったこともある。
でも一番大きいのは少ない人数であり、かつ身一つで向かって恐ろしい戦闘力を発揮できるコンパクトさだ。
コンパクトなため行方を追いかけることが難しかった。
アメリカ軍とのつながりも匂わせていたこともあるけど、今はそれらの懸念がなくなって本気で淡雪ちゃんに追跡をかけてもらったらウォーモンガーのしっぽはつかめた。
「とりあえず今はリーパーとウォーモンガーの二人の動向を監視しているようだねー」
残りのメンバーが全く見つかっていないっていうのは気になる。
というか絶対追跡受けているのを分かったうえで迎え撃つつもりとしか思えない。
「まぁ、二人しか出していないのはなにか目的があるからだろうねぇ」
そう呟くと針山警部は山上君たち二人を見る。
「ま、坊主たちだろうな」
「だろうねぇ、一番あり得るのが二人をおびき寄せて遠くで事件をおこすことだろうね」
そう考えるとなかなか面白い戦いだと思う。
こっちは残りのメンバーの場所を割り出すために攻撃を仕掛けて現場に引きずりだすかアジトを割り出したい。
ノスタルジストは山上君と淡雪ちゃんを連れ出したい。
互いに目的は隠れている相手をおびき出す事なので流れが全く分からない。
「でもこっちとしては最大戦力と指揮官潰せればいいって話でもあるからな、分が悪いのはあっちだろう」
「まぁ人数差は正義だねぇ、現代兵器は遠距離からの一方的な攻撃がウリだしね」
そんな会話をしていると山上君が不安そうな顔をしている。
「大丈夫なんですか? ウォーモンガーが強化外骨格着ていたら倒せないと思うんですが」
「一応いくつかの兵器だと無視できないダメージを与えることができるのは私から保証しますが……」
淡雪ちゃんも同じように不安そうな顔で言葉を続ける。
「戦車砲クラスを直撃させることが必要なんですがどうやって持ち込むつもりなのか見当もつきません」
その言葉を聞いて――
「持ち込むのもそうだけど、当てる方もむずかしいよねぇ、ほんとうどうするつもりなのか」
遠く離れた地で今まさに戦いの火ぶたが切って落とされる。
そのことを思い出しながらつぶやいた。
明日も頑張ります。




