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Apr. 26 2019-4

間に合いました。

 五月に近い時分とはいえ、夜になると気温も低くなる。

 特に海に面する場所となればなおさらだ。


 隠れ家から離れた場所――“ウォーモンガー”と落ち合う地点は開けた磯だ。


 待っているがなかなか来ない。

 なので、はいていた靴とストッキングを脱ぎ裾をくくるようにして素足になり浅い場所に足をつける。


 冷えた海の水は身を引き締めるような感覚を与えてくる。

 波に煽られるが重心を制御することで体軸はずらさない。


 砂利のこそばゆい感覚を足裏に感じながら一歩二歩と歩く。


 しばらく歩いたら空に月がかかっているのが見える。


「まだかしら?」


 疑問を口に出して、足を磯の潮溜まりにつけたままふちに腰を下ろす。


 じっとしているとざわめくような潮騒とささやき声のような風の音だけが聞こえる。

 柔らかな風に吹かれてしみるような寒さを感じる。


 と暴力的な鋭い音が聞こえる。


「やっとですか」


 空を仰ぐと赤い人物――“ウォーモンガー”が飛んでくる。


 静かな空気を塗りつぶすようなけたたましい音を立てて着地――墜落した。


「やられた!!」


 前も聞いたことがあるようなセリフに思わず呆れながら――


「あなた前も似たようなこと言っていなかった?」


「ちっ!!」


 バツが悪そうに顔を背ける。

 その様子も前と同じなのでなおさら笑いがこみ上げる。


 その体を見ると思ったより損傷は少ない。


「思っていたより五体満足ですね」


「あん?」


 “ウォーモンガー”は眉をしかめてこちらをにらむ。


「おいおい、アタシがやられるみたいじゃないか」


「ふふ」


 小さく笑い、水面を蹴り上げるようにして水を飛ばしながら。


「風呂場から強襲しようとするも一合目は凌がれる」


 視線は“ウォーモンガー”に向けず淡々と話し続ける。


「感覚センサーの完成度の違いを利用して隣接し一撃を加える」


 “ウォーモンガー”は無言でただ半歩下がった。

 まるで恐ろしいものを見ているかのように。


「そこで有利になったので性能任せに斬りあいに移り時間を稼がれて外部からの介入を受ける」


 本来はすぐに撤退を選ぶべきなのにそれを選ばなかった。

 一対一に特化したからこその弊害かもしれない。

 だとしても遊ぶようなことはやめて最速最短での命を刈る動きを優先するなどあるはずなのだが……

 なんにせよ頭の痛い問題だ。


「その時、相手がなりふり構わず爆発物を使用していたら“ウォーモンガー”、あなた下半身吹き飛ばされていましよ」


 右腕を掲げ、払うように振る。


 すると――


「背後に目でも付いてるのかい!?」


 細身になった剣を弾いた。


「それくらい読みやすい思考をしているんですよ」


 単純であることを信じて振るう愚直さこそがウリなのに余計なことを考える。


「ともあれ肩の銃創ぐらいでしたら問題ありませんね」


「ああ」


 本格的に体を休めることができる場所はあそこしかなかったからできるだけ粘らせた。

 その結果ある程度の損傷は想定しており。

 八割は無傷、一割は軽傷、のこり一割は重傷。


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 そのことは黙って笑顔を浮かべる。


「で、拠点は?」


「あ、私たちは向かいません」


「は?」


 “ウォーモンガー”は怪訝な顔をする。


「気づいていないかもしれませんが、“ウォーモンガー”あなた追跡されてますよ」


「……そんな気配はなかったけどね」


 そう思うのは仕方がないと思う。

 が、淡雪ちゃんも帰ってきて日米での連携が強化、未来の技術が積極的に流出して解析も進んでいる。

 そうなったら追いかける方法なんていくらでもある。


 それこそ高高度からの無人機による目視での追跡。

 ドローン群を集中的に投入して物理的に追いかけるなどだ。


「ナードにはまだまだ仕事があるもの、私たちはそれを助けるための陽動がこれからの主な仕事ね」


「てことは、これからまとまった休みはないのか?」


 その言葉に小さくうなずいて肯定する。


 あと数日程度なら“ウォーモンガー”は余裕だろう。


 問題は定期的な睡眠が必要な私だ。


「ま、その辺は流れに任せるしないわね」


 腰を上げて、おしりを払い塵を落として空を見上げる。


「さあ、行動を開始しましょう」

明日も頑張ります。

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