0426-6
間に合いました。
ノスタルジストと呼ばれる危険なテロリストが潜伏しているホテル。
潜伏している部屋である最上階付近にたどり着く。
基本的に出入り口は直通エレベーターが一つあるだけの場所だ。
素直にそれを使うと察せられる可能性があるため普段は施錠されている非常階段を使用する。
ホテル側もにわかには信じることができなかった様子だった。
しかし令状を見せたらさすがに渋々という形だが協力することを了承した。
途中までは他のエレベーターにて移動し、十階ほどは非常階段を使用する。
続いて突入と同時にエレベーターその他の電源を落とす。
間取りはすでに入手済みでそれぞれがいると思われる部屋の想定も終了している。
「スタンバイ」
秘匿回線で階段からの突入組と窓からの突入組両方に合図を出す。
ファイバースコープにて中の偵察をしていた隊員が、
「エントランスに敵影なし」
その言葉に首を縦に振って了承して――
「合図があるまで待機」
「了解」
短い返事が返ってくる。
一人が預けられた鍵でロックを外し、極めてゆっくりノブを回す。
どこまでも静かに非常ドアは開かれた。
エントランスには監視カメラはあるがそれは下のロビーにて管理されているので問題はない。
そして向かうのはドア――
ではない。
正面の扉が開いたらいくら静かにしていても気づかれる。
だからさらに二手に別れる。
人の脳は多数の出来事が起きると思考の効率が極端に落ちる。
故に三手に別れて正面扉、窓、そして壁を撃ちぬいて乗り込む班で別れる。
「……」
呼吸音さえかすかにしかしない中、壁と扉に特殊な爆薬をセットする。
厚い絨毯のおかげもあってここまでほぼ物音を立てずに準備できた。
ほぼ半々の三人ずつに分かれる。
外には窓に映らない位置に三人が張り付いているだろう。
「サン」
秘匿回線で宣言する。
隊員たちが静かに安全装置を解除する。
「ニイ」
爆薬の起爆装置に手をかけたのが見える。
我知らず銃を握る手に力が入る。
「イチ」
ジワリと熱がこもるのがわかる。
「ゼロ」
連続する爆破音と窓を突き破る音が重なった。
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突入してベッドに改造された少年が寝ているかと思ったら――
「いない!?」
頭は驚きと同時にどこに移動させたかをはじき出していく。
足もまた前に進み、蝶番の部分をサブマシンガンの弾で破壊して扉をけ破る。
手はず通り互いに視野をカバーしあいながら奥へと進みウォーモンガーと呼ばれる戦闘要員がいると思われる寝室に扉ごと銃弾の雨を打ち込む。
続いて乗り込むが――
「確認できず!!」
短い報告を機械的に行う。
が内心は降り積もる嫌な予感で胸の内が一杯になる。
ほかの突入班に連絡を取りたいが、やるべきことをまずこなすことが優先される。
アシストフレームからはまだ予測情報が来ていない。
あまりに情報が少なすぎるからだ。
「……」
次は小さめのバスルームだ。
扉をけ破りスタングレネードを放り込んで一歩離れる。
轟音と閃光が発生し、中にいる存在が怯んでいるうちに銃弾を浴びせかけ――
「うぉ!!」
体が勝手に後ろに跳んだ。
同時に壁が斜めにずれる。
人だと気づかないような小さな起こりに反応したらしい。
「ちぃぃ、やっかいだねぇ」
薄い患者衣のような物を着た女――ウォーモンガーが右手に細身の長い剣を持って立っている。
火のように赤い髪は一本にくくられ、患者衣は水にぬれている。
その左袖には中身がないようだ。
「わざわざ残してまで回復を図ったっ成果を見せてやるよ」
その言葉を聞いて――
「撤退する!!」
即断する。
奇襲で有効打を与えられないなら撤退する。
アシストフレームがあっても性能差は絶望的だ。
その号令に従い他の八名は迷わず窓に向かい――
「了解」
命綱もなしで窓の外に飛び出した。
当然だが投身自殺ではない。
隊員たちそれぞれは虚空に向かってザイルを投げる。
と、ナニカ――透明化していたドローン群だ。
それにひっかけることで落下する時に一度急ブレーキを入れて安全に降りる。
「あんたは逃げないのかい」
片手で細身の剣を回して切っ先をこっちに向ける。
「全員で逃げたら空を飛んでおいかけるだろう?」
サブマシンガンを右手だけで持ち、左手で腰からナイフを取り出し逆手に構える。
ウォーモンガーは鼻を鳴らすようにして――
「わかっているじゃないか」
小さく息を吸い、隊員たちを生かすために――
「行くぞ!!」
「きな!!」
前に全力で加速した。
明日も頑張ります。




