4月26日-7
何とか間に合いました。
大急ぎで地元に戻ると幸次さんが待っていた。
合間合間に連絡を入れていたので温かく迎えてくれた。
ついでに事情を話すと難しい顔をして――
「学生のうちは制服で良いだろうな、それに出かける際は学生服でと校則で決められているしな」
「なるほど」
とセンスがあまりない二人は無難な選択肢を選んだ。
着替えてすぐに淡雪を迎えに向かった。
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「ごめん!! 遅れた!!」
場所は淡雪が宿泊しているホテルのロビー。
食事会に呼ばれるにあたって淡雪も着替え等をしたいので地元に戻ってきていたらしい。
それを知ったのは制服に着替えた後だったが――
「いいえ、大丈夫ですよ」
目をしならせるような笑みで俺を迎えてくれた淡雪は制服姿だった。
そのことを疑問に思っていると――
「制服でくると思ってましたから」
と笑顔で言われてしまう。
読まれていたことに面映ゆい感覚を得ながら手を差し出す。
すると淡雪が嬉しそうに手を取って指を絡めるような握り方をしてきた。
その滑らか肌に添わせるようにして俺も握り返した。
そこで顔に若干熱を感じる。
「すこし、気恥ずかしいな」
「私もです」
素直にそう返した淡雪の頬にかすかだが朱が入っていることがわかる。
そのやり取りを見ていたロビーの人たちは目を細めほほえましいものを見ている様な表情だ。
周りの視線に気づいて顔の熱がもう少し上がる。
なのでホテルの外に向かう。
淡雪の歩幅に合わせるために少しだけゆっくり気味に歩く。
すると淡雪が――
「もう少し時間がありますし少しショッピングにいきませんか」
「わかった」
急に言われたのでどこに行こうかと考え始めると――
「せっかくですからお洒落しませんか」
「え」
自慢じゃないがファッションセンスに絶望的に自信がない。
だから何とか避けれないか考えを巡らせる間に――
「まずは奥谷さんの方ですよ!!」
と明らかに弾んだ声で俺を引っ張って街に向かっていった。
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ティーンのメンズ向けファッション店に連れ込まれてしまった。
店内は白の照明で照らされて、小さめの棚にはサイズごとに分けられた様々なデザインの服が置かれている。
おそらく洋楽と思われる軽快な音楽が流されている。
その空気だけで段々場違いな気がしてくる。
が、淡雪はにこにこと俺に服を合わせている。
その笑顔には勝てないので半ばあきらめの境地で突っ立てていると――
「彼氏さんはこっちのが似合うと思うなぁ」
と二十代の垢ぬけた格好の店員が一着のジャケットを唐突に差し出した。
そのことに驚いていると――
「それはそうかもしれないですけど、少し派手ですね」
と自然に会話を続けながら二つを比べる。
片方はダークグレーの薄手のフード付きコートで、もう片方は明るいグレーのジャケットだ。
「奥谷さんはどっちが好みですか?」
「……正直に言っていいか?」
淡雪と店員は俺を見ている。
そのことに申し訳なさを感じながら――
「よくわからない、ただジャケットの方はちょっと……」
淡雪はジャケットの方を返す。
その顔は少し楽しそうだ。
楽しんでくれるならまぁいいかと思いながら何気なく値札を見て――
「は!?」
「どうしました?」
淡雪は明らかに困惑している表情で俺に話しかけてきている。
内心とあることに衝撃を受けながら、心配させないように受け答えをする。
そのことに少し不思議そうな顔をしているが納得したようで少し離れていった。
「こういう店に来るのは初めてだったけど――」
値札には普段買っている服よりはるかに大きい数字が書いてある。
ため息をつきながら、財布の中身の心配をしながらできるだけ安く上がること祈りながらしばらくは淡雪に任せることにした。
明日も頑張ります。




