4月26日-5
何とか間に合いました。
「ところで、もう一つの方は?」
二か所で現れたという話なので、もう一か所しかもそちらは怪物が現れているという話だ。
場合によっては今から急いで向かう必要がある。
「そちらの方は何とかなっているようですよ」
「え? 本当に?」
聞き返したら答えがあっさり返ってくる。
「はい、巨大なアメフラシのようなクリーチャーが現れているそうですが――」
といってその場所の映像が映る。
豪雨によってシルエットがぼんやりとしか見えないが建物との対比から考えると数百メートル近い。
「大きすぎじゃない?」
「まぁ、その気持ちはわかります」
ついでに複数の映像も開かれる。
よく見るとどれも違う場所の映像のようだ。
「は?」
「西日本を中心に複数のアメフラシが現れています」
さらっと言ったそのセリフはかなり驚くべき内容だ。
一体だけでも難しそうなのに複数も現れた。
「え? なんでそんな落ち着いて……」
と言ったら、映像の巨大なアメフラシに炎の花が咲いた。
同時に衝撃波か何かで画像がかすかに揺れた。
「ん?」
「豪雨で普通は誘導できないのですが、そこはドローンによる位置の測定と誘導装置のデータリンクの実証にちょうどいいので行ってます、爆弾を落としているのは雲の上なので豪雨の関係なしです」
建造物を攻撃する兵器は流石にたまらないのか悶えてノタノタと移動しだす。
「攻撃が開始されたのはついさっきで急激な豪雨のせいで元々避難が始まっていたのが幸いでしたね」
「……災害で押し流されるのは覚悟していたかもしれないけど、爆弾で吹き飛ばされるのはどうだろう?」
そこで淡雪は少し考えて。
「そこを考えるのは大人の方の仕事なので」
「まぁね」
と言っている間にさらに何発か当たるが――
「痛がってはいるけどあんまり決定的なダメージになっていないような気が」
「あれは本命ではないので、あくまで誘導です」
淡雪は説明を続ける。
しかしの端に大まかなアメフラシのイメージ画が浮かぶ。
「まず構造としてかなり巨大というのが被害を思ったように当てることができない理由です」
「まぁ、そうだろうね、あれだけ大きいと多少当てても大きなダメージは入らないだろうね」
ええ。
と淡雪は続ける。
そしてアメフラシの外皮が拡大されて――
「そして外皮の特殊な性質が問題なんです」
「というと?」
その疑問には拡大された外皮に爆弾が落ちてきたときのシミュレーションが行われる。
すると、外皮は爆弾が直撃したら大きく広くへこむ。
そして爆風を矢印で表現しながらほとんどが上に逃げてしまっていることを表した。
「程よく柔らかく、程よくかたい、そのせいで体の方に爆風がいかないのです」
「厄介な……」
せっかく正確に爆弾を落とせてもそれではあまり意味がない。
「普通なら戦車などの大きな砲で攻撃するのですが……」
画面に映った地面を見る限り不可能ではないだろうが――
「運ぶ手段がないんですよ、戦車なら大体の泥濘は踏破できますが運搬手段がない」
「……手詰まりじゃ?」
その言葉に淡雪が否定する。
「そのためにアメリカ軍に協力を要請したそうです」
「? 爆弾の類は効果が薄いんじゃ?」
「もうそろそろ来ますね」
と言われて頭の中がクエスチョンマークで満たされながら待っていると――
唐突にアメフラシがのけぞった。
同時に爆弾が当たった時よりも激しく画面が揺れた。
続いて――
「は!?」
真っ二つに弾けた。
さすがにその損傷はどうしようもないのか悶えながら崩れていく。
「え? 何が起きたの?」
「いわゆるバンカーバスターですね」
聞きなれない名前なので疑問を込めて聞き返す。
「バンカーバスター?」
「地面の下の施設を吹き飛ばす爆弾ですね、使用用途だけにさすがに自衛隊は持ってないですし」
しばらくして他のアメフラシも同様にはじけて消滅した。
それを見ながらポツリと――
「現代兵器って怖いな」
「大火力、広範囲、長距離というのは私たちだと今は無理ですしね」
二人である意味のんきともいえる感想を言い合いながら真っ当に戦えばお手上げに近い存在だった超巨大なアメフラシが一歩的に撃破される映像を眺めていた。
明日も頑張ります。




