西暦2019年4月26日-7
間に合いました。
たどり着いた先の警察官は目を白黒させています。
大型のバイクで逃げてきた人を見かけたらだれでもびっくりすると思う。
アズール様は警察官の声に従ってあくせるを緩めて停車させる。
「もしかしておねえさんたち空港から逃げてきた?」
言葉こそ疑問形だが、口調はあくまで確認と言った様子で質問してきた。
その言葉に大きく頷いた。
後からヤツラが追いかけてきている様子もないので一安心だ。
「なるほどね~、とりあえず向こうにならんで」
と言って示されたのは大型のバスだ
それの乗り口に人が並んでいる。
そういった警察官は一瞬鋭い目つきで私たちを見た。
思わずその顔をじっと見てしまう。
すると鋭い目つきが嘘だったかのように目つきの鋭さが消える。
「どうしました?」
「な、なんでもないです」
格好はごく普通の交通整理をするような、いわゆるおまわりさんだし他に不審な点はない。
言われた通りのバスに向かう。
するとそこに先客がいる。
前から順番に詰められているが、違和感がある。
乗り込んで促されるまま座席に座る。
すると違和感の理由に気付いた。
家族連れが異様に多い。
片側二列の座席に男女が座り膝の上に子供を座らせて必死あやしているの八割近く。
残りも大人と子供の複数人の組み合わせ集団ばかりだ。
全員一様に覚えており、この状況の異常さに気付いていない。
「え?」
と疑問の声を上げるとバスの出入り口が閉まった。
逃げられない。
と直感的に理解した。
が、何もできずに座ったままでいるしかなかった。
バスが出発してようやくこの場から離れることになるのでどこかゆるんだ空気が満ちる。
が、明らかに偏った人選もそうだが、もう一つおかしな点がある。
よくよく考えれば保護された場所は空港のはずれでヤツラが大挙してこれるような場所ではない。
しかし閉じ込めるようにしてどこかに送る。
一言で言うと不穏だ。
しばらくすすむと周りに物が何もない郊外に停車する。
いよいよ嫌な予感が高まる。
車内に今更不安に満ちた声が出始める。
しばらくすると一台の車がやってきて一人の人間を下ろす。
格好からすると学生だろうか?
観察していると車は行ってしまった。
移動手段は足かバスしかない。
走って逃げたとしても追いつかれるだろう。
そこまで思って首を横に振る。
「どうして逃げる前提なんですか」
声を潜めてそう呟く。
心当たりがないのなら堂々としていればいい。
なのになぜか逃げる事の方が先に来てしまった。
そこまで気づいたときある光景がフラッシュバックする――
悲鳴と獣じみた奇声
ズタボロの人体
人が燃える異臭
「大丈夫? かお真っ白」
とホワイトちゃんがこちらを心配そうにのぞき込んでいた。
その顔に精一杯の笑顔を浮かべて頭をなでる。
滑らかな髪の感触を感じながら、私自身を納得させるように何度も繰り返す。
しかたがなかった
と何度も何度も。
すると出入り口が開き車から降りてきた少女がバスの中に乗り込んできた。
可憐を立体化したような少女だった。
どこにでもあるような制服だが、それゆえに少女の造形が際立って目立っている。
視線はゆっくりと車内を見渡して――
こっちを見て止まった。
明日も頑張ります。




