4月11日-7
何とか間に合いました。
淡雪に連れられてネットワーク上での攻防に連れてこられたわけだが、しばらく戦っているうちにルールが把握できた。
「陣地をとってそこのリソースを利用して道具を作る感じか」
人間の倍ほどのサイズの蜘蛛を頭から断ち割りながら淡雪に話しかける。
崩れていく蜘蛛は黒い粒に分解されて消えてなくなる。
「……正確には少し違いますが、似たようなものですね」
と淡雪は言いいながら光るタイルから円盤状のロボット掃除機らしき物を作り出して放流する。
「目的は二つ、航空機へのアクセスを開くことと、滑走路への誘導装置を開放することです」
「管制塔から直では航空機にアクセスできないのか?」
「山上さんの話を持ちだしますと、リソース不足です」
そこで今まで作っていなかったものが出来上がった。
見た目は空飛ぶ回転鋸だ。
それは一直線に蜘蛛に飛んでいく。
「私たちを排除するために相手もリソースを振っていると思います」
「するとどうなる?」
回転鋸は蜘蛛の足を切断して動きを止める。
すかさず走りこんで撃破する。
「汚染の進行を抑えられます」
「よし分かった」
と、元気に飛び回っていた回転鋸は動きを止めて光の粒になる。
すぐさまそれは淡雪の手元に戻る。
「思ったよりまきこめなかったですね」
「多いからな」
いまだにドンドン送られてくる蜘蛛に段々押され始める。
が、淡雪は余裕を持ち。
「ま、そろそろですね」
とって、自動掃除機を回収し巨大なモップを作る。
人の身長ほどもあるそれを軽々と持ち上げて。
投げた
それは黒くなってしまっている飛行機らしきものに直撃して――
「豪快というかなんというか……」
炸裂するように黒い汚れが吹き飛んだ。
砕けた槍はまた光の粒に分解されはじめるが――
「一掃しましょうか」
と、それはたくさんの掃除道具に変わり地面に降り注ぎ蜘蛛を押しつぶしていく。
「俺いらなくないか?」
「私のやる気につながります!!」
面と向かってそう言われると何も言えなくなるのはズルいと思う。
「で、あとこれを何回だ?」
と言っているうちに地面から大きなパチンコのようなものが生えてくる。
それは勝手に飛行機を狙って撃ち始める。
「いえ、一度どこかへのアクセスが行えたら自動で繰り返せるので飛行機のコンピュータの開放はもういけます」
「……効率的なのはわかるが、見た目が非常に問題ありすぎるんだが」
一番原始的な射撃武器で余計な構造がいらないので頭では理解できる。
が、汚れを吹き飛ばすエフェクト関係上、バシバシ航空機を撃ち落とすパチンコという非常に奇怪な光景が出来上がる。
ふと周りを見ると蜘蛛やらはすでに引いたようだ。
逆に制圧し返すつもりはないようだ。
「滑走路への誘導装置はリソースを確保するついでに開けておきました」
すると、一つの連絡が入った。
「ありがとう、まさかこんな短時間で!!」
「え?」
結構時間が経ってしまっていた気がする。
疑問に思ったので淡雪の方を見る。
「思考速度がコンピュータの速度になってますからね、おそらく一分も経っていないと思います」
「相変わらずとんでもないな」
「それほどでもないですよ」
とその間に飛行機が一機ずつ降りてくるのがわかる。
「では次は成田ですね」
「全国飛ぶのは流石につらいんだが。 というか間に合わなくなる」
すると淡雪は笑みを浮かべて。
「飛行場の全リソースの回収は終わったので、ここから遠隔地の空港の開放を行います」
「できるのか?」
「すぐ近くに成田があるのでそちらを制圧すればあとは物量で押せますね」
相変わらず顔に似合わず脳筋思考なのに苦笑する。
「ここから巻き返しの時間です!!」
と言って周囲からビル程の大きさのロボット掃除機が現れる。
それは何の冗談か側面から立派な翼を生やして滑走路に掃除しながら進んでいく。
滑走路にたどり着くと後ろからジェットエンジンらしきものを生やして、動き始めた。
耳をふさぎたくなるような轟音が響き渡り加速し――
「あの掃除機が飛んでいくのは流石にシュールなんだが……」
「自動で掃除をする物って考えるとあの形が結構合理的なんですよね、あとこれだけ大きいと攻撃用のあの蜘蛛の一緒にお掃除できるので」
次々現れては飛び立っていくロボット掃除機。
「元の商品みたいに迷子になったりはしないよな?」
「向かう先は設定してあるので大丈夫です」
と自信満々に言い切ったが――
「あ、早速一台コースはずれた」
「これは、えっと、あ、もう一台!?」
大慌てで淡雪は設定をし直し始める。
大部分は問題なく向かっているので直接移動するよりかは早いはずだが、手間が増えている気がするのはきのせいだろうか?
当面手伝えることがないのでぼんやりとその様を見ている。
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淡雪は四苦八苦しながら設定しなおした後は早いもので、次々と空港が回復していくのがわかる。
それを見届けると現実の方に戻ってきた。
そこは、ある種の戦場だった。
各飛行機から上げられてくる報告を元に矢継ぎ早に降ろしていく。
全員が自身の仕事に没頭している様は静かな熱気をこちらにつたえる。
と、スマートホンが着信を告げる。
誰かと思って受けると、内調を名乗った男性らしい。
「いやぁ、すごいね、あっという間に全国の空港の機能を回復させるなんて」
「で、でしょう」
いつも思うが、人の電話に割り込めるのはどういう機能なのかと思うが便利なので無視をする。
実は結構手間取っていたから淡雪はかすかに言葉に詰まっている。
ごまかす表情はなかなか見れないのでじっと見ていると――
「さて、米軍からも感謝の連絡が来てたよ、色々あって最近手伝えないこともちょっと気にしてたっぽいね」
「ああ、そうか気づいてなかったけどアメリカ軍も同じように機能不全だったと」
「まぁね、そして次の問題も結構急ぎでね」
そこでいったん言葉を切って。
「幸いなことに発電自体はうまく行っているから電気は届いてるんだけど、発電所の制御が効いてないみたいでさ」
「何が起きてるんですか?」
聞き返すと、一言で返してくれる。
「発電所が過剰に発電してて壊れるかもしれない」
「え?」
驚いてもらえると説明しがいがあるねー。
とどこか軽い口調で続けられる。
「発電所は電気の使用量に合わせて発電量を制御しているんだけど、いま交通機関や製造機械も粗方オシャカでさ、使用量が減ってるんだよね、でも発電所はそれを下げることができていないので老朽化が進んでる発電所は壊れる可能性が高いね」
「もしかして電子力発電所も……」
「ああ、それはないない停止するだけならコンピュータ関係ないから」
「ならいいけど」
というわけで、
と前置きをして言葉を続けてくる。
「全国各地の発電所のシステムを復旧させてほしいんだけど」
そこで淡雪が割り込む。
「あの、全国の電力消費量を元に戻すのはどうでしょうか?」
「ふーん、そうすれば余剰がなくなるからいいんじゃないかって?」
「はい」
しばらく言葉が途切れて、重々しく言ってきた。
「今いるのって羽田だよね?」
「そうですけど」
「飛行機を回すからそれに乗ってくれないかな?」
疑問に思う。
「それなら行く先を指定してくれたら飛んでいき――」
「ちょっと場所を知られるとまずいところでさ、迎えの飛行機は多分米軍機になると思う」
「は!?」
相手はこちらをなだめすかすようなこと言っているが、意外過ぎる提案にあまり頭の中に内容が入ってこない。
脇にいる淡雪に目配せして。
「どうなると思う?」
「お相手は私たちを利用しようとしています、でも乗るしかないです」
「だよなぁ、胡散臭いのは確かだけど情報やコネクションが圧倒的に上、俺たち二人じゃ飛行機の事は頭が回らなくて大事故になっていた」
口に出すと元々選択肢なんてなかったのだ。
「うん、待とう、信じるしかないから」
「ええ」
といって相手の言う通り待つことにした。
明日も頑張ります。
orz
こんなに長引かせるつもりはなかったのですがまとめきれないです。




