西暦2019年4月26日-4
間に合いました。
喉にひりつくような痛みがある。
肺は酸素を求めて締め付けられるように苦しい。
非常ベルのサイレンが鳴る中全力で走る。
同じように車に向かっている人がまばらにいる。
非常ベルに襲ってきた集団が気を取られているうちに税関エリアを抜けれたのは僥倖だった。
「っはぁ っ――」
距離としてはそこまで遠くはない駐車場への連絡通路。
しかし――
「aratkakakuakkaikaa!!」
後から棒と火炎瓶を投げてくるナニカが追いかけてくる緊張からただ走ることが恐ろしい。
「あと少しですよ」
隣を走っているアズール様はどこか浮世離れした表情で走っている。
私の足に合わせるくらいに余裕があるように見える。
大して息を切らせていない姿に驚愕を越えて頼もしささえ感じる。
と、前に一体の赤い頭ナニカが飛び出してきた。
それを確認した追いかけてきた存在が――
「はっ!?」
脇を走っている仲間に向けて棒をフルスイングして、頭を砕きあったのが見えた。
訳の分からない行動に一瞬混乱するが、前に現れたナニカが口からドロリとしたものを吐き出す。
それは千切れるようにして移動して、後ろに居た数と同じだけのナニカになった。
「Gakajaakkuajsantrie!!」
向こうからしたら獲物が向かってきた。
だから――
「kaakumiekktasuedkeasjwetouszous!!」
大きく振りかぶった棒を前に出ながらふりぬいた。
何が起きたのか理解できていなかった先に逃げていた人は胴体、あるいは胸を両断されて即死した。
ばらまかれた赤い液体――血のしぶきがべったりと掛かる。
鼻をつく生臭いにおいに思わず。
「ぅぐ――」
身を折るようにしてうずくまりその場に胃の内容物を吐きだす。
理性では足を止めるのはとてつもなく危険な行為だとわかっているがやってしまった。
そして腰が抜けたようにへたり込む。
「ひゅっ――」
膝から出た震えが全身に伝播して歯の根がカチカチ言うほど震えてしまう。
「ぁ――」
動かないと死ぬが、動けば死んでしまう矛盾した意識に包まれる。
動けと思う理性は足に力を籠めるが、動くなという本能は腰を上げたがらない。
「立って、というのは無理そうですね」
視線を上げるとどこか困ったような顔のアズール様が見える。
ホワイトちゃんは肩に担がれたままされるがままだ。
「少しだけお願いしますね」
と言ってホワイトちゃんを私に手渡してきた。
手渡されたホワイトちゃんにすがるようにして強く抱きしめる。
ニヤニヤと笑っているナニカが向こうから近づいてくる。
「追ってきた存在が向こうに居るということは逆サイドは手薄な可能性があります、頑張って走って逃げてください」
「そ、それは――」
どこまでもやさしい笑みでホワイトちゃんのおでこに口づけをする。
それは日本人離れどころか人間離れしたその容貌の者同士が行うと絵になっている。
「生きていてほしいの、お願いできるわね? これが私の頼みよ」
「ぁ――」
お客様の頼みをできる限り遂行する。
なんども教え込まれたその行動はうなずきを返す。
――返してしまった。
「私も死ぬつもりはないからあとで落ち合いましょう。 そうね、連絡するわ」
と私の背中を押した。
その力に任せるようにして立って走り出した。
背後から離れていく足音と――
「gauakasanriasdduekaya!!」
そんな怒号が聞こえてきた。
明日も頑張ります。




