0426-2
間に合いました。
困惑に近い空気が広がる。
当たり前だが骨組みだけで作られたそれはいかにも頼りない。
隊員の一人が意を決して手をあげた。
「大変聞きにくいのですが、その骨組みだけのように見えるそれは一体なにでしょうか?」
するとどこからともなく声がする。
出所はもう一つのコンテナからだ。
「その質問には私からお答えしましょう」
涼やかな声だ。
このひりついた緊張感の満ちた空間には不似合いとも言える。
しかし、声の主は気にすることなく説明を続ける。
「アメリカ軍で研究されているパワードスーツに聞き覚えがありませんか?」
それなりの人数が頷いた。
それを見ていたのか反応があったあとで言葉を続ける。
「そのパワードスーツに連なる装備です」
まず。
と言葉を続けようとする。
「待って欲しいんだが」
「はい、なんでしょうか?」
質問を待つために声が途切れる。
待てと言った隊員が即座に一つの質問をする。
「あんたは何者だ?」
「善意の協力者です」
いっそ白々しいくらい朗らかな声で話してきた。
更に何かを話そうとする隊員を前に立つ男性が止める。
「そこまでだ!!」
その鋭い言葉に隊員たちは押し黙る。
上下関係は骨身に染みるほど叩き込まれた男達だ。
不満もなにもかも一旦飲み込んで止まる。
「先ほど言っていた怪存在対策の専門家で、度々解決している協力者だ」
言い切るがいまだに不満に近い感情を持っている様子だ。
その隊員たちの様子を見て更に男性は追加する。
「以前にあった日本全土で通信障害が起きた事件があるだろう、それの解決の主役だ」
先ほどのざわめきとは違う種類のざわめきが発生する。
不満げな顔をしていた隊員が手を上げて質問する。
「電子機器の停止も起きた方とその後に起きた方二度あるのですがどちらを解決したのでしょうか?」
「両方だ」
その言葉を聞いて隊員たちは絶句する。
一回起きただけでも国家において致命的な出来事を二度も救った。
そして、自分達はあまりにも規模の大きすぎる出来事だった。
指令を受けるルートがすべて閉ざされ効率的な動きが出来なかった。
感情の方向性は違うが結局は同じ疑問が隊員たちの頭に浮かんでいるようだ。
正体への疑問だ。
しかも声から考えると若い女性、おそらく未成年の少女だ。
男性は更に続ける。
「懸念しているマッチポンプの類いはあり得ない、そう断言しておく」
そこまで言われたのなら隊員たちがとるべき行動は一つしかない。
黙っていることだ。
「怪しむのもたしかだと思います、でも協力したい思いは本当です」
切々と語るその言葉はなんの飾り気もない直球の言葉だ。
だからこそ隊員たちは少しだが態度を軟化したように見える。
その様子を見て男性が言葉を続ける。
「持ち込んできたこの装備への説明を頼む」
「わかりました」
コホン。
と一つ咳払いをして説明を開始する。
「アメリカ軍にて研究されていたアシストアーマーは行動予測と自動で動く鎧を目指していました」
一度言葉を切り話を続ける。
「今回のアシストアーマーはその鎧である部分を省いた量産化したものです」
ただ。
と言葉を続ける。
「相手の攻撃力がかなり過剰で人が着ることが出来る程度の装甲では満足な効果が得られる可能性が薄いのです」
そこまで話して辺りは言葉に耳を傾ける静寂が満ちる。
「なので最初から省略することで軽量化してあります」
そうですね。
とその後少しだけ考えている様子だ。
「おおむね半分程度におさえました、そして軽量化したことで運動能力は向上して避けることで身を守るようにしてあります」
声の主は一呼吸分間を開けて。
「名付けるならアシストフレームでしょうか、運動能力の向上サポートと自動判断による行動サポート、それを目的とする装備です」
善意の協力者を名乗る少女の言葉が倉庫に満ちた。
次に男性が口を開き話始める。
「基本的には習うより慣れろという装備のようだから、まず全員アシストフレームの装着からだ、その後詳しい説明を行う」
以上。
と言葉を切り上げると隊員たちは大きな混乱を起こすことなく順番にアシストフレームに向かった。
明日もがんばります。




