0426-1
間に合いました。
成田国際空港近くの倉庫に複数台のトレーラーが運び込まれる。
それを二種類の雰囲気を持つ男たちが整列して待っている。
一つは屈強な男たちで大木のような安定感を持っている。
それぞれ十人ずつだ。
もう一つは鋭い眼光の男たちで抜身の刃のような張り詰めた空気を持っている。
前者は警察における暴徒鎮圧を目的とした部隊である機動隊。
後者は緊急時の犯人の射殺までも辞さない攻性特殊部隊である。
任務の内容が全く違うこの二つの部隊が集まっている理由はいまだ伝えられていないらしくどこか困惑している様子だ。
停止したトレーラーの助手席から一人の年かさの男性が降りてくる。
その顔に刻まれた皺とその厳しいとまで言える表情は警察官としての長年の経験を示しているようだ。
そして男性の胸につけた階級章を見て並んでいた全員が反射に近い速度で敬礼する。
男性は手で指示をして休めの体勢を取らせる。
「さて、ここに集まってもらったのは他でもない、ある任務を行ってもらうためだ」
ざわり。
一瞬泡立つような空気が満ちるがすぐに収まった。
不意の出来事にたいして即時に平常心を取り戻すほどの精鋭部隊を示しているようだ。
その様子を満足げに眺めて男性が続けて話をする。
声には張りがあり、誰かの前で話をすることになれているのだろう。
「諸君らはここ最近起きている怪事件を把握しているな」
全員がはっきり頷いた。
「特に新しいのが昨日に起きた国会議員や内閣閣僚の事務所に押し込んだ怪存在だな」
特に強く頷いたのが機動隊の隊員だ。
仲間同士で殺し合いになりかけたというのはどこか思うところがあるようだ。
「その集団が別の手勢を使ってとある場所に襲撃をかけてくる」
空気がきしむような音がする。
それはその場にいた全員が体に力を込めたからだ。
まるで自身のうちの激情をおさえ込むためかのようだ。
隊員たちの視線だけで人を射殺せそうなほど鋭い複数の目を悠然と立つ男は真正面から受け止める。
その姿は多数の人の命を背負ってきた歴戦の男のみがもてる立ち姿だ。
「場所は諸君らも察しているだろうが――」
倉庫の窓の外にかすかに見える背の高い建物。
「――成田国際空港」
空気が泡立ち、明らかに隊員たちの覚悟が硬くなったのがわかる。
成田国際空港は日本の玄関口にして、過激派左翼集団との攻防の象徴に近い。
国と住人との関係がこじれにこじれたのはそれこそ運が悪かったとしか言いようがない。
それは今の警察官たちには直接は関係がない。
しかし、大きな意味を持つことだ。
「さて、ここまででなにか質問は?」
静寂が満ちる。
しかしそれは絶句ではなく猛る想いを漏らさないためだ。
すると一人が手を上げる。
眼鏡をかけた特殊部隊の隊員だ。
「ひとつよろしいでしょうか?」
「話せ」
きびきびとした動作で手を戻す。
その後話始める。
「かの存在は正体不明の能力を有していると聞いております」
その発言を聞き、前に立つ男性はピクリと方眉をあげる。
先程の言葉は何度もあったしくじりを今回もやるかもしれないと指摘されたと取られてもおかしくない。
周りの隊員たちが視線を質問した人間に集める。
心配しているようだ。
「君の懸念ももっともだろうーー」
そして、前に立つ男性は質問をした隊員に向かい。
「たしか君はとある集団に一つの自薦を行ったそうだな」
「はい、行いました」
はっきりと頷いた。
そこで、険しい表情をしていた顔のままーー
「君の要望通り、日本での第一号試作のオペレーターになる」
と言って手を叩く。
するとトレーラーに牽引されていたコンテナの側面が開く。
そこには金属で作られた人の骨にも似た装備ーーアシストアーマーが人数分並んでいた。
明日は頑張りたいです。




