西暦2019年4月26日-2
今日ははやめです。
「ごめんなさいねこんなこと頼んで」
申し訳なさそうに表情を曇らせながらアズール様が頭を下げられます。
「いえ、お客様の要望に応えることが仕事ですので」
笑顔を作り返事をします。
行っていることは一種の引っ越しの手配です。
日本に両親から譲り受けた別荘があるどうだが大分人の手が入っていないそうです。
そして、海外からですと色々手間がかかるそうなので旅、行がてら日本に訪れて持ち込んだ荷物の配置と家のクリーニングの手配をお願いしたいということでした。
変わった仕事ではあるが問題のない内容だったので、つつがなく終わらせました。
同時にこの後に出かける場所もあるそうで車の手配も済ませます。
話している間にホワイトちゃんが今度は片手で立体パズルを解き始めます。
「ホワイトちゃん、すごいですね、大人でもスムーズに解けないパズルをあんなに簡単に解けるなんて」
「ホワイトは数学が得意なのですが、特に三次元の構造を把握するのが得意なんです」
とアズール様は少し得意げです。
名前が呼ばれたことに気付いたのかちらりとこちらを見上げてきました。
「……」
顔を伏せてまた少し離れました。
その愛らしい仕草に思わず笑みがこぼれます。
また距離を取ってしまったホワイトちゃんにアズール様が苦笑をしながら、
「すこし人見知りが激しいのでもう少し心を開いてほしいんですけどね」
と悩まし気にため息を漏らされました。
何気ない仕草にふとにおわせる色気に同性なのに少しドキッとする時があります。
すると奥からちらりとこっちを見てゆっくりと近づいてこられます。
その仕草はどことなくネコに似ております。
「怖いくないですよ」
と、できるだけ柔らかく笑いながら、視線を合わせるためにしゃがみます。
そこでホワイトちゃんは一瞬足を止めるが――
「……」
すぐ近くまできて――
「ホワイトです……よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げられあした。
こちらも頭を下げて――
「お世話をさせていただく堀田です」
頭を上げるとニコリと笑ってすぐわきのソファーに腰を下ろしました。
最初から比べるとかなり距離が近づいております。
アズール様は目を丸くしております。
「ホワイトがここまで早くなれるのは中々ないですよ」
「ならよかったです」
とすこしうれしくなりながら返事をいたします。
アズール様はくすくすと笑いながら、思い出したかのように少し離れた場所に向かいました。
そしてしばらくして戻ってきた手には銀色の弾を持っていました。
いぶかしんでいますと――
「新しいパズルです」
と言いながらクルクルと何度もひねりました。
どうやらルービックキューブの一種のようです。
そして十秒ほどで元の形が全く分からないほど歪な形状の物体になっております。
「え?」
ルービックキューブは普通は面ごとに色分けされているのでそれが手がかりになっているのですが。
これは銀色一色でかつ、球体です。
何が手掛かりになるかも全く分からない状態にみえます。
そんなパズルをホワイトちゃんは嬉しそうに受け取って。
「たのしみ」
とうれしそうにいじくり始めました。
どこをどうねじったらどんな形状に少しくらくらいたします。
するとインカムに連絡が入り。
「アズール様、車の手配ができたようです」
「あら、ありがとうございます」
とお礼をされました。
「さて、荷物の指定は――」
「先ほどいただいたリストに従えばよろしでしょうか?」
ちいさくうなずかれて――
「ええよろしくお願いしますね、レイアウトはそうねぇ」
「掃除する業者と引っ越し業者は提携しているそうで、そのサービスで掃除後に全周囲カメラでとり三次元データに起こしてくださるそうです」
と言いながら手元のスマートホンにサンプルイメージをお見せして――
「その後引っ越し業者がトラックに運び込むときに荷物を三次元データを起こし、モデルとして配置するサービスがあります」
と言ってスマートホンを操作して家具を配置する。
「これは便利ですね」
「どこの企業も必死ですから」
そこまで説明しますと――
「ということは今すぐは指示を出さなくても大丈夫ということですね」
「ええ」
はっきりとうなずきました。
すると、一つうなずいて。
「では車で向かう場所ですが――」
一旦言葉を切って、口を開きました。
「成田国際空港です」
何でもない単語のはずなのに、なぜか私は背筋に氷を入れられたような鋭い寒気が走りました。
明日も頑張ります。




