4月25日-15
間に合いました。
「つ、疲れた」
適当な椅子に崩れ落ちるようにして腰かけながら言葉を吐く。
時間は夕刻に入り、あわただしさが収まり始めている。
「なんでこんなに時間かかったんだか」
怪物と対峙するより後始末に近い倒れた人への対処でここまで時間がかかった。
それでも起きた被害から考えれば常識外れのスピードでの対応だったようだ。
街の外からの救急車も動員しての大規模な搬送作戦はうまくいったようだ。
市内の消防や警察への連絡網を回復させたら空を飛べることを利用して、手作業で一人一人抱えて運んだくらいだ。
はやい事ははやかったが、救急車と違いまともな医療機器もないので病院に運ぶまでわからないことが問題だった。
「斬った張ったしか能がないって辛いな」
通信網を回復させたのは淡雪がやってくれたからで今回は本格的に怪物を切り伏せたことくらいだ。
とりあえず一息ついていると警察官が近づいてくる。
思わず立ち上がって頭を下げる。
強化外骨格は脱がない方が良いと助言されたのでそのままだ。
すると相手は面食らったような顔をする。
「どうしました?」
質問をすると若干言いにくそうな表情で答えた。
「腰が低くて驚いただけだ」
「そうですか、中身は未成年なので警察官が来るとやっぱりびくっとしますね」
その言葉に苦笑に近い表情を向こうがした。
「化け物を倒した凄腕がいるというからきたら、少し印象とずれていただけだ」
「ただ力を借りているだけですし大したことはないですよ」
すると警察官は軽く頭を下げた。
「火だるまになっていた人間はヤマは越えられそうだ」
「それはよかった、間に合わなかったらどうしようかと思っていたので」
素直にそういうと改めて驚いた顔をされて。
「なんというか変な気がするな、声と話すことを聞いていたら普通の高校生にしか思えないな」
「そうでありたいですから」
思うのはそれだ。
今が特別なだけで、本当は毎日将来のために勉強を積みかさねるのが本分だ。
様々な場所をめぐることで強く思うことが、できる事とできない事は明確に存在しているということ。
そしてほかの人ができない事をできる人がやることで社会は少しずつ動いているということだ。
今日なんかはすごくわかりやすい。
人がバタバタ倒れるような環境でも問題なく動いて元凶を倒せる俺が倒して。
地域や組織ぐるみで連携して動くことで危険な人から助けていくことは俺ではほんの少ししか助けができなかった。
「手伝えることってありますか?」
「あると言えばあるが――」
何かを少し考えている様子で。
「便利に使われないうちに行った方がいいぞ」
それを図ったかのように連絡が入る。
相手は青木さんだ。
「はいはーい、元気そうで何よりだねー」
「見えてるんですか?」
ちがうねぇ。
と気楽な調子で続ける。
「怪物バッサリ斬った後もちょくちょく働いてるでしょ? そういう話は知ろうと思えば知れるからね」
「なるほど」
そこまで話して聞き返す。
「このタイミングで連絡をしてきたということは何かあったんですか?」
「何もないんだけど、居ても大きな助けができないならこっちに戻ってくることも手だよってこと」
「そうですねぇ」
考え込む。
周りを見ると確かに手助けできることは少なそうだ。
なので決めた。
「わかりました、東京の方に戻ります」
「ん、待ってるよー」
といったあたりで連絡を終了させた。
続いてその場にいる警察官に頭を下げる。
「本当はもっとちゃんと挨拶をするべきだと思うんですが」
「わかった、こっちから伝えておく」
「よろしくお願いします」
と伝えて空に向かって飛んでこの街を離れることにした。
明日も頑張ります。




