4月11日-4
間に合いました。
短めです。
その声を聞いて反射的に立ち上がろうとして思いとどまる。
今は授業中だった。
飛び出すべきかどうかを迷っていると――
「山上 奥谷君 すぐに職員室に来なさい、」
と校内放送が入る。
教師に目を向けると、うなずいたのですぐに教室を飛び出ることにした。
その時、ふとある席が空いているのに気づく。
橘の席だ。
朝に続いて妙に頭にひっかることばかりだ。
今日――できればすぐにでも橘を探したい。
が、今はそれよりも急がなければならないことがある。
なので頭の片隅にとどめておくことにする。
ともかく教室を抜ける口実を作ってくれたのだ。
職員室に向かう前に通信で話をする。
[場所は?]
[二か所です、片方はこの街、もう一つは日本ほぼ全土]
[は!?]
と言っている間に空が暗くなり始める。
向かう道の脇にある教室からもざわめきが聞こえる。
窓から空を見ると黒い球体が浮かんでいる。
[あれは……]
[平成十一年、1999年、ノストラダムスの予言での恐怖の大王ですね]
[なんだ? それ?]
黒い球体の下部に穴が開き小型のナニカが排出される。
[1999年に流行った終末論の一種です]
[それが実現化した、と?]
[それと2000年問題ですね、いま日本の電子機器は死んでます、さっきの電話は私が無理やりこじ開けてつなぎました]
[……まずくないか?]
電子機器が動かず、明らかに何らかの攻撃を行おうとしている。
[そして、街にも一体出ているんだろ?]
その頃にようやく職員室についた。
しかし全員が窓に張り付いている。
ノイズしか流していないテレビが一層不気味に見える。
「手分けは――」
周りに聞こえないように声を抑え気味にして話す。
淡雪もそのつもりか抑え気味だ。
「あくまで私の意見ですが、山上さんが街の方を対処してください」
「ものとしては俺が恐怖の大王を叩きにいった方が良い気がするが……」
「日本全域の電子機器が死んでます、これが意味するのはいま誰も助けを呼ぶことができていません、事故などがってもです」
「頼んだ」
まずい。
そう思ったので即答する。
「頼まれました」
それだけを伝えて電話を切る。
近くにいた教師に、用事ができたので帰ることを伝えた。
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指定された場所はどこにでもあるような家だ。
中からは嫌な空気が流れている。
すると、警察署から飛ばしてきたのだろうパトカーが急停止する。
「君が淡路さんの言っていた協力者か!? 見た目はどう見ても不審者だが……」
「話はあとです!!」
います。
と言葉を告げて、ドアを破って突入する。
警察官が何か叫んでいるがそんなものは無視をする。
今まさに殺される瀬戸際の人がいるからだ。
「ぁ――!!」
ひどい暴行を受けた女性が首を絞められている。
絞めているのは幼い子供の仮面をつけた大柄な人型だ。
特徴的なのは主に2点。
ロープのように伸びた指と子供のように甲高い声だ。
「ドラドドラダオラデえあぱあっだ!!」
足元にはすでにぐったりしている子供がいる。
頭に血が上る前に警察官が先にキレた。
「きっさまぁ!! 何を!!」
手錠を取り出し逮捕しようとする。
そうすれば相手の積みだが。
「らdらdrたああぴあああ!Q!!」
金属がひしゃげる音と野菜を切断するような音がして、手錠を持っている手首が切り落とされた。
獲物は化け物の指だ。
それは鞭のようにしなりあっさりと手首を切り落とした。
「なんでだ!? 逮捕すれば終わるはずでは」
呆然とする警察官の首に刃物の鞭が振り下ろされ――
「逮捕できないように手首を落とした、ということでしょう」
鞘から剣を抜き指を切り落とす。
それは地面転がったら白濁した液体を漏らして跳ね回る。
「いいいいいいいいやややっややい!!!」
以上に痛がる化け物その様はどこまでも子供じみている。
が、女性にやっていたことは子供のそれからは離れている。
「刑事さん!! 子供の方を!!」
「あ、そうか!!」
口と残った片腕で切られた方の腕の付け根をネクタイで縛った警察官はぐったりしている子供の呼吸を確認し、すぐに心肺蘇生を始めた。
剣を構えたまま化け物に対峙する。
「ふっ!!」
踏み込み大上段から剣を振り下ろす。
と、後生大事に捕まえていた女性を盾にするように突き出した。
仮面の奥で下劣な笑いを浮かべた気がする。
迷った隙にもろとも殺すつもりなのだろう。
だからそのまま頭に向かって振り下ろす。
「なっ!?」
警察官から見たら化け物ごと叩き切ろうとしたように見えただろう。
が女性に当たった瞬間剣が砕けた。
抜いてから三秒以上空気中にさらしていたため錆て本来の切れ味は出せなくなっていた。
だから剣は皮や髪に切れ込みを入れることすら出来ずに割れて砕けた。
「????」
一瞬だが化け物は呆然としている隙に、首を絞めている指を引きはがし、引きちぎる。
化け物は叫ぼうとして息を吸おうとしているが――
「もういい」
思い切り殴る。
それで喉がつぶされて声が出せなくなる。
崩れ落ちそうになるのでアッパーカットで無理やり立たせる。
そこで残った指で他の人間を狙ったので頭をつかんで一回転させるようにねじった。
「終わりました」
「その一瞬、彼女ごと切ろうとしているように見えて驚いた」
そう話している間に子供は、しゃっくりをするように呼吸を始めた。
女性も命に別状はなさそうだ。
「あの剣は鞘から抜いた三秒間はなんでも斬れます、それを越えたら切れ味は極端に悪くなるとは聞いたので、半ばかけでした」
「賭けって……もし砕けなかったら?」
「いえ、死なないように刃筋はずらしていたので、肉は切るでしょうが骨は切ることはできないというのはわかってました、だから頭を狙ったのです」
頭なら髪や皮・肉の下は頭蓋骨なので間違っても重要臓器を切ることはない。
その話を聞いて警察官は目をむいた。
「明らかに普通の人間の考えじゃないぞ」
「淡ゆ――淡路から戦闘経験などのダウンロードを受けたので、どこか機械的な判断になってるんだと思います」
半信半疑の目で見られる。
が、今はそれよりも恐怖の大王だ。
一礼して、後のことを任せて外へと飛び出した。
明日も頑張ります。




