4月25日-5
間に合いました。
針山さんが詰めている警察署の部署に向かう。
普段から活発に報告が飛び交う騒がしい空間だが今日はいつもにまして騒がしい。
隅の方に椅子を組み合わせた簡易のベッドで横になっている人間もチラホラいる。
「針山さんは……」
軽く見まわすとひらひらと手を挙げてくれたのでそっちに向かう。
それを読んでいたかのようにもうすでに青木さんも待機している。
針山さんは資料を真剣な表情で読んでおり、青木さんはスマートホンをいじってどこかに連絡を取っていたようだ。
「おはよー、ご飯食べた?」
青木さんは普段の気の抜けるような表情でコンビニの袋を差し出してきた。
ありがたく受け取り、おにぎりがあったのでおかかを選んで返す。
「さて、いまこっちで何が起きてるか知ってるか?」
と針山さんが資料を閉じながら話しかけてくる。
なので素直に首を横に振る。
「よし、まず報道から出ている情報だ」
まぁ、見た方が早いか。
といいながらスマホのアプリを起動してテレビを点ける。
「見てください!! 視聴者のみなさん!!」
と言いながら映るのどこかのビルに集まっている黒い群衆だ。
それぞれうすらぼんやりとしていて細部は把握できない。
「いま今世紀最大の汚職事件にメスが入ろうとしています」
するすると黒い人影たちはビルに入っていく。
リポーターは熱に浮かされたような虚ろな目で叫ぶように繰り返す。
その文言は刺激的だが中身が入っていない浮ついたセリフであることに気付く。
「こんな感じで閣僚やら議員やらに強制的に捜査が行われて、拘束されている」
「……あの黒いの何なんでしょうね?」
「わからん、と言いたいが――」
そこで青木さんが補足説明を入れる。
「おそらくだけどアメリカ軍基地だと物理的に制圧されたので物理的にはどうしようもないものを採用したってことじゃないかな?」
証拠にほら。
と青木さんは画面をさす。
そこには警備員らしき人間をすり抜けて建物内に入っていく黒い人影が見える。
「政党関係なく行っているし、どんな相手だろうとお構いなし」
そこで両手を降参したように上げる。
「お手上げなんだよね、今まで見たいに倒せば何とかなるもんじゃないからさ」
なるほど。
とうなずいて、穂高さんから渡されたデータを差し出す。
「よし、早速」
といって近くのパソコンで開く。
中にはたくさんの表やら図やらが入っている。
「何ですか? これ?」
疑問を素直にぶつけると青木さんが教えてくれる。
「アメリカ軍でノスタルジスト達が行っていた計画やどんな交渉を行っていたかまとめたものだね」
「……あの、どう考えても極秘情報なんですけどどうやって手に入れたんですか?」
そこで二人とも肩をすくめて。
「わからん、でも今はこの情報はありがたい」
「これからかなり地道な作業になるから山上君はよかったら出て行ってもいいよ」
いいよ。
とはいうがどちらかというと出て行ってほしいのだろう。
「淡雪ちゃんの事まだちゃんと探してないでしょ?」
「……そうですね」
深く頷いた。
淡雪が本気で逃げて隠れたら俺だと見つけられない。
そんな思い込みがあったので本腰を入れて探していない。
諦めているんじゃないか?
そんな指摘された気がしてしばらく考え込む。
「少し心当たりがある場所を探してみます」
顔を上げて二人に向かって頭を下げる。
「何かあったら連絡します」
「おぅ」
と針山さんは短く応じてくれて。
「はいはーい、次はちゃんと連れてきてね」
と青木さんはいつものように気軽に答えてくれた。
そのことにありがたさを噛みしめながらその場をあとにした。
明日も頑張ります。




