4月25日-3
間に合いました。
モニターに映るリーパーに向かって声を絞り出す。
「何故だ」
しかしリーパーは表情を変えずに話し続ける。
「ちなみにこれは録画された映像ですので何を言っても伝わりませんよ」
しれっとそう言われて思わず叩こうとするが、思い直す。
「これも大切な情報だからちゃんと見とかないとな」
同時に録画も始める。
そこで口元だけで柔らかく笑い。
「まずもうとっくに気づいているでしょうが淡雪ちゃんは我々ノスタルジストのメンバーです」
「……それくらい察してる」
と口に出すがはっきり言われるのは流石に心に来るものがある。
が映像はお構いなしに進む。
「目的はこの平成での協力者を得て、平成が生み出した存在を倒してゆき否定を行うことです」
「……」
画面には淡雪が作られたときと思われる映像が写っている。
手術室にあるベッドのようになもの寝かされており、薄手のシーツがかけられているだけだ。
奥には何かの設計図やタイムスケジュールらしきものがある。
思わずその体の起伏を凝視しようとして気づく。
「……なんでこんな映像を流しているんだ?」
そもそもノスタルジストもこっちがその話をつかんでいないはずがない。
そして後ろの図面なども含めて思わず目を引く映像を流す。
核心に入る様子も見えない。
そこまで考えて気づく。
「時間稼ぎだ」
当たり前だ。
録画なら相手の話を律義に聞く必要なんてない。
「この映像データをダウンロードしたいけど……」
悩みながら近づくと自動でダウンロードを開始したメッセージとパーセンテージが出てくる。
「うーん、この人工知能やっぱり便利だな」
とつぶやきながら探索を開始する。
半開きのドアがあったので何の気なしに覗くと――
「脱衣所!?」
慌てて出ていったためか衣服が洗濯籠に入ったままだ。
なんだかやましいものを見てしまっている気がしたのでとりあえず深呼吸して後回しにする。
「なにかこう、むっつりスケベみたいだよなぁ」
とつぶやく。
今さらすぎる気がするが先に進むと台所を見つけた。
流しには洗い物前の鍋と食器が重ねられている。
ゴミ箱にはなぜか大量の乾麺の袋が捨てられている。
「何か情報は……」
とおかしな箱に気付く。
「何だこれ?」
中には乾電池ほどの大きさの金属の棒が乱雑に詰め込まれている。
とりだしてみると中は空のようで軽い。
端にはガス缶のような接続部分がついている。
「もしかしてこれって、橘への投薬か」
ありうる気がする。
もうずいぶん前の気がするがその時は人の体を無視した動きをしていた。
それを考えたら強化外骨格を脱ぐことはできなくなっている可能性は十分あるように思う。
「何とかしないと」
そう呟いて他の場所を見回ってみるが素人の目のせいか他に発見はなかった。
肩を落としてダウンロードがどれくらい進んでいるかを確認すると大体八割終わっている。
「これをダウンロードしたら終了かな」
と思いながらさっきの部屋に戻る。
と、どうやら映像は繰り返されているようで前に聞いた文言を言っている。
「さて、いつ終わるのか」
待つ体制に移ってふときづく。
「時間稼ぎが必要だった証拠ってあったか?」
どれもこれも時間で劣化するような証拠はなかったと思う。
そしてそれなりに時間をかけているのに終わっていないダウンロード。
「やられた!!」
時間稼ぎが必要なのはこっちのコンピュータのデータだ。
人工頭脳に命令して元の映像データの量を確認させると、今この瞬間に元ファイルが増えている。
不審に思われない程度に少しづつだ。
「だったら!!」
専門家のナードがかかわっている可能性が高いのでシステム的なシャットダウンは不可能だ。
だからコンピュータを物理的に破壊してこれ以上のデータの消去を止める。
コードらしきものを切断し電源を物理的に落とすことで動きを止めた。
「最善ではないけど、出来る限りはやったか」
とつぶやいて座り込む。
あとはアメリカ軍の専門家の出番になるからその場で人が来るのを待つことにした。
明日も頑張ります。




