Ⅳ月ⅩⅩⅤ日
間に合いました。
「くたばれ、化け物!!」
そんな声と共に何かが口の中に突っ込まれて――
「かぁ!!」
衝撃――熱――喪失感――
「――だ」
怒り
憎い
苦しい
痛い痛いいたいたいあいあいうあいいあいあいあたい――
「に――げ―だ」
片腕がもげたソレをなぐる、ちぎるねじるかじるつぶすきるわるふむ――
「にんげんだ!!」
ガチャガチャ音がして顎が再建された。
たたくったくなぐるふむえぐるもぎとるさすかみきる――
そのたびにのたうつそれにおもうさま破壊する。
誰かがみえる――きがするが覚えがない。
突かれたような懐かしい泣き笑い――そしているのは誰だろう?
そこでミンチができていたこと気づいて――
「きぃぃぃぁぁaAAlLIiLI!!」
喉の奥から叫ぶがおかしい、機械音のように変に甲高い。
だがどうでもいい。
きになるのは自分の姿だ。
脱ごうとするが脱げない。
「あぁぁAaaAaa!!」
地面になんどもなんどもなんどもこする、
地面がえぐれるだけで意味がない。
「いいぃぃぃ!!」
ガリガリ顔を掻くが脱げない。
ガリガリガリガリかくが何もひっかからない。
顔が抜け落ちたように。
「だれなんだ!!」
叫んで顔をつかむ。
全力で握るとミシミシ音がする。
だからそのまま引きはがそうとして――
「そこまでです」
静かな声が響いてそこで固まる。
誰でもいいから襲い掛かろうとして――
「ぎゃ!!」
動きが唐突にロックされた。
声の主はスラリとした女だ。
「さて逃げますよ、追っ手は?」
と、なにかが三つ転がされる。
人の頭だ。
驚愕にゆがめられた目はぼんやりとしていて何も映していない。
首を転がした相手は――
「逃げた先が、アタシたちが用意したものだから、まぁ閉じれるわな」
と赤い女が口にした。
その言葉を聞いて意味もなく泣けてきた。
「移動方法はおいおい考えますが――そろそろですね」
そう呟くと空から銀色にひかる杭が連続して降ってきた。
「そこまでです!!」
鋭い声と共に一人降りてきた。
アダチが着ていた制服をきた女だ。
鋭い声とは裏腹に表情は優れていない。
「あら、淡雪ちゃん昨日ぶりね」
「あなたたちを捕まえます」
杭が変形し球になって浮かぶ。
赤い女が嬉しそうな口調で――
「やってみな!!」
「止まれ」
その一言で赤い女がストップした。
「な!? このスピードでハッキングだと!?」
「相手するのは何度目だと? そしてあなたの強化外骨格を整備したのは誰?」
「ブラックスミス――あ!! クソ!! てめぇは電子戦が専門か!!」
思い出したように吐き捨てた。
「リーパー!!」
鋭く叫ぶのと同時に、リーパーと呼ばれた女は俺の首に何かを突き刺した。
痛みはない。
「さて、そのままハッキングしたら橘君は死にますよ」
「く!!」
そしてそこで一人の白い女が出てきた。
歩き方がどこかおかしくフラフラしている。
「対抗 中 全力」
目や耳、鼻からポタポタと血をこぼしている。
そこで赤い女がようやく動き出す。
「くそ!! やっと動けた」
そう毒づいている。
リーパーはそのまま言葉を続ける。
「交渉しましょう、そちらの死体四つと橘君にミンチにされたその死体が着ていた装備の記憶領域と交換で私たち橘君も含めて見逃しなさい」
「ことわ――」
ズン。
と衝撃が走って首が転がる。
まだ生きている。
が、段々意識が遠くなる。
「わかりました」
「即決ありがとうございますね」
と言われてつなげられる。
リーパーはクスクスと笑いながら。
「覚悟を決めず、フラフラするだけではなにも成せませんよ」
口を真一文字に引き結び、じっとリーパーを見据えている。
「そうかもしれません――」
でも。
とつなげて少しだけ強い口調で言い返した。
「それだけが答えではないはずです」
「ま、探す時間はかけてもいいですが、時間は有限ですよ」
「ノスタルジストがいいますか」
それに、ちいさい笑みでリーパーは堪える。
「過ぎ去った時間を惜しむからこそですよ」
と答えて踵を返す。
「それではごきげんよう」
リーパーのその言葉とともに意識は闇に包まれる。
ああ、それにしても瞼にぼんやりとみえる疲れた泣き笑いをする君の名前は何なんだろうか?
それだけが心残りだ。
明日も頑張ります。




