April 25th 2019-3
間に合いました。
「くらえや!!」
対物ライフルを発砲する。
パワーアシストの入った体は一切ぶれを生じさせない。
その間に腰に形見と言えるドッグタグと手りゅう弾をぶら下げる。
「よし!!」
弾丸は命中し大きな火花を上げる。
ビーストはのけぞったが――
「くる!!」
視界に光る帯が浮かぶ。
それ大まかには人型をしており、俺の首を刈り取るように腕を伸ばしてくる。
先読みできても人の反射神経ではどうしようもないタイミングだ。
「がぁっ!?」
だったら機械ならどうだ?
腕は自動で動き、腰から引き抜いたナイフでその腕を迎撃した。
金属がかみ合う甲高い音が聞こえて弾かれた。
それは軌道としては地面にこすられるような低い軌道で、制御不能になる。
が、優秀なオートバランサーが作動しており勝手に足裏は地面と平行になり腰を落としながら制動をかけた。
その姿勢はそのまま射撃姿勢になり。
「っ!!」
三度引き金を引く。
それは狙った個所にきっちり撃ち込まれた。
眉間と右手と右足首だ。
さすがのビーストも対物ライフルの銃撃には無傷では済んでおらずへこみが見える。
「よし!!」
手ごたえを感じる。
が――
「グルrグル――」
きしむような音がして元に戻る。
内心舌打ちする。
歩兵が持ち歩ける銃では意味がないとわかったからだ。
「おっと!!」
視界が何かを感じ取る前に一歩踏み込み、頑丈な肩アーマーで何かを受ける。
ビーストが突撃をかけて左手突き込んできていた。
それを肩の曲面で流すように受けた。
といっても削られる盛大な音付きでだが。
「!?」
普通ならもう死んでいる。
そのからくりは偉い学者が言うにはAIがどうたらって話だが――
「機械には機械の速度ってな」
確率が高い動きを予想して、それの対処を自動で行っているそうだ。
そうするとアシストアーマーを着ている俺は不意の動きに体を痛める可能性が高い……らしい。
着ている人間にいかに無理をさせずに自然に動かすかが課題だったそうだ。
それを解決するために複数のAIが今この瞬間も動いて、着ている人間だったらどんな動きで対処するのかを学習し、それに従って動かす。
先読みで手に入れた情報に従ってロスタイムなしで動かしているようなもののために理論上は弾丸をつまめるそうだ。
この考えが持ち込まれるまでは脳改造やドラックによる強制的な反射速度を上げることも視野に入れられていたため没だったらしい。
「ま、そんな話は関係ないか」
言っている間に懲りずに殴りかかってきたのをナイフで弾く。
が、さすがに真っ二つに折れた。
舌打ちして、蹴りを入れようとするが――
「強度不足ってか!!」
警告が鳴ったので横にステップして避ける。
「ええい!! くそ!!」
残り七発のうち三発を眉間に連射する。
じっくり狙ったわけでもないのに全く同じ場所に火花が散った。
「ええい!! でたらめに頑丈だな!!」
毒づき損傷を確認する。
それはピンホールショットを行ったが着いたへこみはさっきとほとんど変わっていなかった。
となるともうできることはただ一つ――
「こちらアサルトチーム!!」
伝わっているかどうかはわからないが、情報を残して次に生かしてもらうことだけだ。
「コードネームビーストと交戦中、試作アシストアーマーは順調に作動中」
狼のように地をかけて首をねらっってくるビーストを銃撃で牽制しながら話し続ける。
「行動アシストも順調に作動し、これなら戦える可能性は高い」
二連射して距離を取る。
「しかし、強度と火力は足りない、対物ライフルで眉間に三発同じ個所に当てたがへこみ以上の損傷はない」
最後の一発は噛みついてくるビーストの口に銃身ごと突っ込んで引き金を引く――
「繰り返す、ビーストの装甲は歩兵がもてる銃器は意味がない」
その銃身をかみ切られれて轟音がする。
煙が晴れると多少がススが着いたビーストが悠然と立っている。
「戦車を相手にする武器の使用が適切だ、以上」
もう無手だ。
ここまでくるといっそすがすがしい。
それを理解しているのかわざとゆっくり距離を詰めてくる。
だから頭部を外して――
「よぅ、けだもの」
気軽に挨拶する。
俺の持っている武器ではどうしようもないのでもはやできることは悪態だけだ。
「かぁ――」
骨が砕ける音がして俺の頭をまるかじりするくらい大きく顎を開く。
だから見えるように中指を立てて。
「くたばれ、化け物!!」
俺の意思を読み取って、アシストアーマーが機械の速度で安全ピンを抜いた手りゅう弾をビーストの口に突っ込んだ。
明日も頑張ります。




