4月24日-10
間に合いました。
「平成が生み出したクリーチャー?」
今まではノスタルジストが作り出した存在だと思っていたのでオウム返しをしてしまいます。
その様子にリーパーは小さく笑いながら話しかけてきます。
「おかしいと思いませんでしたか?」
クリーチャーを地面にたたき伏せながら話し続けます。
その口調はどこか楽し気だ。
「四月一日にクリーチャーが現れましたが、なんで現れたんですか?」
「え?」
私自身が呆けたと認識できるほど気の抜けた声が出てしまいました。
頭の片隅ではこの隙にハッキングを仕掛けるべきだと考えていますが実行に移せていない。
「当たり前の事ですがなんでもない日に突然出てくることなんてないわけです、原因がないとこのようなクリーチャーは現れるわけがないのです」
そして足元のクリーチャーを示して話しかけてきます。
「歴史を変更しようとするその反動として出てくるわけです」
「で、でも……」
クスクスと笑いながらこちらを諭すように説明を続けています。
否定しようとしますが言葉がうまく思い浮かずただじっとリーパーを見つめてしまいます。
「クリーチャーが現れてそれに襲われていた山上君を助ける、それとは全く無関係に私たちが訪れた方が不自然です、むしろ私たちが訪れたからクリーチャーが生み出された、そう考えた方が筋が通ります」
その言葉はじわじわとしみ込むように私の頭の中に入ってきます。
全部必然だった。
それは納得できる話です。
しかしまだまだ疑問は尽きない。
その疑問を受けてたつようにリーパーは優雅に待っているように見えます。
「平成が生み出したクリーチャーを倒す必要ってなんなのですか!? そもそもなぜ事件や事故、災害などの悲惨な出来事ばかりを元になっているのですか!?」
「平成の出来事が起きたら今は平成でしょう? だからそれを多少なりとも否定させるためにクリーチャーを倒すわけですね」
次の質問ですが。
とそこで一拍だけ間を取って口を開きました。
「悲劇の方が記憶に残るものでしょう」
その言葉に言葉が詰まってしまいます。
「それ だけ?」
絞り出すように何とかその言葉をだしました。
するとリーパーが困ったような表情で話し始めました。
「と、言われましても私はクリーチャーではないですから、ただそう判断した方が無理がないという仮説ですね」
そこでようやく絶対に聞かなければならないことを思い出しました。
それはさっきの説明でその時間軸に人間の助けを得てクリーチャーを倒すのが目的だ。
と伝えられましたが、なぜ必要なのかというかということです。
「なんで、この時間の人の助気が必要なんですか!? 戦うだけなら私だけでもいいでしょう!!」
「平成の人間を巻き込んで否定させた方がより強く否定したことになる気がしませんか? 確認したわけではないので確証はありませんが」
「そんな理由でですか!?」
リーパーは不思議そうな顔で顔をかしげながら――
「文句はこの作戦の計画を立てた人に言ってほしいですね、私たちは命じられた側でしょう?」
「う……」
確かに私たちは定められた目的に従って行動をしています。
だとしたらリーパーに抗議をしても見当はずれです。
私はノスタルジストの手によって作られて送られてきた存在で、平成のクリーチャーを倒すためだった。
そう考えると筋は通っています。
「私は――ノスタルジストに協力していた」
「正確には少し違いますが――ご苦労様あと少しですよ」
それは部下をねぎらう温かな響きが含まれた言葉です。
頭の中の考えがまとまってきません。
そうしている間にクリーチャーが立ち上がり――
「GRRAaragaa!!」
叫んでトンネルが揺れる。
必死に瓦礫を避けながら――
「リーパー!!」
「はい、なんですか?」
覚悟を決めて問いかける。
「山上さんが巻き込まれるのは計画通りだったんですか!?」
はっきりと首を横に振られる。
「ノスタルジストの計画では、誰でもよかった――つまり、偶然です」
ただ。
と言葉を続けてきます。
「二日目に直接狙われたのは、淡雪ちゃんのせいですよ、つながりがある者として狙われた、協力者予備軍としてね」
頭の中が真っ白になり、ただぼんやりと謝罪と悔悟に近い思いばかりが湧きてきます。
リーパーはそのまま軽やかに飛び上がりながら――
「それでは人命救助を続けてくださいね――ノスタルジストのために」
追いかけるより前に、怒り狂うクリーチャーへの対処が先です。
だが、武器を持つ手には震えがある。
本当にいいのか?
そんな疑問から発生した震えです。
「Galagaragaraa!!!」
クリーチャーはそれを好機と見て襲い掛かってきました。
明日も頑張ります。




