4月24日-9
間に合いました。
意識が暗闇から目覚めました。
時間にしたら一秒未満だが致命的な隙です。
しかし、私は追撃を受けた様子は見受けられません。
そのことを疑問に思いながら体を起こすと――
「GragaragAAagGGarRgaga!!」
リーパーとクリーチャーの一騎打ちが行われています。
立ち位置から考えると私を守るような位置で戦っています。
考えるのは優先順位です。
リーパーの先ほどの言葉は気になりますが、クリーチャーにとって優先して攻撃する対象は私なのは確定しています。
そしてリーパーは私を攻撃していましたが、私を守るという矛盾した行動をしています。
「なら!!」
慎重に立ち上がり、クリーチャーと私でリーパーを挟むような位置に移動する。
「なるほど考えましたね」
クリーチャーが私に襲い掛かるにはまずリーパーを排除しないといけない位置にいるため、クリーチャーはリーパーに攻撃をしかけています。
殴るというよりファンのように体ごと腕を回転させるような攻撃動作です。
私は金属を杭に変形させて遠巻きにリーパーに攻撃を仕掛け続けます。
すると、リーパーが軽い笑みを浮かべているのに気づきます。
「消極策は、下策ですよ」
と口に出しながら向かってきている杭に手を添えるようにして進行方向をずらしてクリーチャーに向かわせました。
それが牽制になって一瞬ですがクリーチャーは怯みました。
同時にリーパーは――
「え!?」
無人の乗用車を蹴り上げ、私に向かって蹴り飛ばしてきました。
脆い地面をものともしないその動きに反応が遅れてしまいます。
「くっ!!」
一瞬視界が遮られてしまい、気づいたときにはリーパーは逆サイドに立っています。
「さて、お話をしましょうか」
リーパーとクリーチャーから距離を取るために飛びあがろうとしました。
すると――
「Gaaaaaaragakaraa!!」
頭上から瓦礫が――いや押さえつけられるような力、重力で地面に叩きつけられ、一瞬息が止まりました。
「か ふっ」
その瞬間を狙ったようにリーパーの踏み込みが顔に入り、骨がきしみますが足をつかむために手を伸ばしますが避けられました。
「不思議に思いませんか?」
「な にが ですか?」
殴り掛かってくるクリーチャーの一撃を後ろに跳びながら食らうことで距離を開けつつ聞き返します。
「先ほどの二度の攻撃はウォーモンガーであろうとただでは済まないはずなのに――」
そのまま重さを感じさせない足取りで近づいてきて、大鎌を振るってきました。
「どうして戦闘行動を続けているのですか?」
「ただ単純に私が頑丈なだけです!!」
柄の部分に手にした棒を押し当てるようにして振って弾く。
リーパーは小さく笑う。
「他にもナード以上の電子戦能力とドローン制御、ブラックスミス以上の視力と装備製造能力、ディープスロート以上の聴覚、そして指揮能力も有しているとてつもなく強力な個体です」
「それがどうかしましたか? 未来にもノスタルジストに敵対する勢力がいるということでしょう」
その言葉に不思議そうに首をかしげながら。
「だとしたらおかしいことだらけですよ、なぜ淡雪ちゃんしか送り込まないんですか?」
「え? それは私レベルを複数作ることができないからで……」
語尾が弱まったときにクリーチャーが体当たりを仕掛けてきます。
それを飛んでかわしながらリーパーの方に視線を向けました。
「淡雪ちゃん一人作るより、私たちをもう一セット、十人作った方が安上がりでしょうね」
「だったら、その、一人しか送れないからじゃ?」
放置された自動車からくすねたと思われる発煙筒を一気に着火してこちらに放り投げてきました。
煙で視界が遮られるその瞬間、濃い笑みを浮かべていました。
「莫大なドローン群と一緒に来たのにですよ」
「っ!?」
考えてみれば確かにそうです。
なぜ私は一人だったのか?
その疑問が頭に浮かんだ時、煙の向こうからリーパーの声が聞こえます。
「様々な疑問はたった一つの答えで説明がつきます」
するり。
と、顔の前に現れて、こちらの頭をつかんできました。
「淡雪ちゃんはノスタルジストメンバーだった」
そのまま地面に叩きつけられてしまい身動きが取れなくなりました。
「たったそれだけで説明がつきます」
なんとか顔を上げると、クリーチャーを大鎌の石突で押しとどめているのが見えました。
「その時間軸の人間と協力関係を築いて、平成が生み出したクリーチャーを倒すためです」
その言葉がトンネルに反響し、唸るようにその場に満ちました。
ようやくあらすじに仕込んだ小ネタを回収しました。
ここまで長かった。
明日も頑張ります。




