20190424-1
間に合いました。
「というわけで緊急事態だよ、と」
ずいぶん久しぶりな気がする程度に仕切りを行う。
相手は針山警部と山上君の二人。
穂高二佐があらかじめ僕らを集めてなかったら完全に分断されていた可能性があるから助かった。
「在日米軍に混乱が生じているっぽいんだよね」
「え? 今確か淡雪たちは」
うなずく。
「そう、在日米軍の駐屯地へ行ってるね、そのせいで三人と連絡が取れない」
本来は逆で連絡が取れないから、一応生きている有線の電話で東京の人間に連絡して確認してもらったのだが。
「!?」
それを聞いて山上君は飛び出そうとしたらすぐに引き留める。
「はいはいストップストップ、あくまで僕らの法じゃどうしようもないだけで、山上君の方ならどう?」
そこまで言われて慌てて強化外骨格を着てどこかへ連絡を取り始める。
「それに、穂高二佐はともかく淡雪ちゃんとブラックスミスちゃんをどうこうできないでしょ」
と言ってる間につながったらしく、山上君のスマートホンから声が聞こえる。
一度繋いだら大丈夫らしく、山上君は強化外骨格を元に戻す。
「みなさん、そちらの様子はどうですか?」
声は穂高二佐だ。
どうやら無事に脱出できたらしい。
「怖いくらいに何もなし」
「やっぱり」
スマホからは確信に満ちた声が聞こえる。
「やっぱりそうなんですね」
「というと?」
軽く一呼吸した後に話し始める。
「実は平成二十四年は日本の電波事情で大きな転換期だったのです」
そこまで言われてようやく気付く。
「アナログ放送終了」
「そうです、おそらく情報を発信する機能がほぼ死んでいます」
それで納得する。
何か起きても伝えられないから、何も報告が上がってこないのだ。
そこで針山警部が怪訝な顔で意見する。
「まてまて、アナログ放送の終了は平成二十三年だぞ」
「何もなかったらそうでした」
穂高二佐のその言葉に針山警部はようやく気付く。
「東日本大震災か」
「その通りです、東日本大震災によって、デジタル放送への移行が遅れました」
穂高二佐がさらに続ける。
「完全に後手に回っているでしょうが、積極的な情報集を始めましょう」
「だね、情報化社会の弊害というか情報の通知だけは早くて正確だったツケが来たっぽいね」
ゆっくりと言葉を続ける。
「何も報告が上がらなかったら、何も起きていないっていうのは怠惰だったね」
この場にいる三人の表情が今まで以上に引き締まる。
その空気が伝わったのか穂高二佐も真剣な声で命令を下す。
「こちらは淡雪ちゃんのドローン群で直での情報収集を始めてもらいます、山上君は針山警部と青木氏を東京まで送り届けてください、お二人は有線での情報網の回復を急いでください、災害を受けた地域が連絡するという行為すら忘れてる可能性があります」
「りょーかい」
「わかった」
山上君は恭しくうなずいた。
「それでは状況開始してください」
その声と共に情報網が寸断されたなかで最大限の事を行うために動き始めた。
明日も頑張ります。




