Apr. 23 2019-2
何とか間に合いました。
目覚めた瞬間に飛んできていたナイフを叩き落とす。
少し離れた場所に淡雪ちゃんが驚いた顔でいる。
“ディープスロート”を巻き込むようにこちらに駆けてきている。
「今ならまだ!!」
弾いたナイフ、そして淡雪ちゃんの両手を補強している金属がはじけるようにして針に変形し、全方位から飛んでくる。
一つでも入ればそこから体が破壊されるだろう。
「なかなかやりますね」
体を覆っていた包帯を手に取って高速で振り回し近いものから順番に弾き続ける。
数も早さも大したものだけど、結局は針だから刺さる前に切っ先をずらせるなら大した脅威ではない。
同時に大きく後ろに跳んで距離を開ける。
「待ちなさい!!」
淡雪ちゃんはそう叫んで距離を詰めてくる。
この間もハッキングをかけてくる抜け目のなさは流石だと思う。
「さて、と」
部屋の外に出て呻いている相手から銃をもぎ取ってあたりの人間に向かって乱射する。
「くぅ!!」
針の嵐がすぐさま盾に変形して守り始める。
「これで近づけますね」
笑みを浮かべて密度が薄くなった針の嵐を切り抜けて、淡雪ちゃん――正確には淡雪ちゃんの近くに伏せている“ディープスロート”の死体に触れる。
同時にエネルギーを幾分か渡して音波で無差別破壊を行うように指示を下す。
人格や思考能力はないが機能はまだ生きているので渡したエネルギーが切れるまでは一種の破壊兵器だ。
「さて、私のハッキングを続けていてもいいんですか?」
「っ!!」
私へのハッキングの手を緩めて“ディープスロート”の機能を解体することを始める。
視界の端で建物の壁が砂のように崩れ始めているのがわかる・
ここで時間を食っていたらまたハッキングが仕掛けられるので素早くこの場から去ることにする。
「それじゃあ淡雪ちゃん、またどこかで会いましょう」
「待ちなさい!!」
そう叫ぶが私には待つ理由は一切ないのでもろくなった壁を鎌で切断して外に出る。
空に飛びあがりながら“ナード”に呼びかける。
「さてナード、首尾はどうかしら?」
「“ブラックスミス”は拘束された、“ウォーモンガー”は山上を足止めするために暴れている、船で安静にさせていた橘は“ウォーモンガー”への加勢中」
「なるほど、“ブラックスミス”が拘束されたのは痛いわね」
そこであるビルの屋上に降りる。
すでに“ナード”が待機していた。
「あら、良い読みね」
「あそこから逃げたならここに来ると思っていたから」
と、そこで“ナード”がいぶかし気な目でこっちを見る。
「ところで服の趣味変わった?」
「どういうことかしら?」
そこで“ナード”が自身の視覚情報を送ってくる。
それを見ると――
「これは流石にはしたないですね」
“ディープスロート”の最大出力の音波攻撃を受けた結果か、おなかのあたりを中心に千切れ飛んでいて露出度がすごい事になっていた。
「……直しますか」
最初の仕事が服の繕いというのはしまらないですね。
などと思いながらその場をあとにした。
明日も頑張ります。




