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Apr. 23 2019-1

間に合いました。

「お仕事お疲れ様です」


 分厚い扉の脇にある透明なボードで隔てられた面会室のような部屋の中にいる方に向かって挨拶する。

 普通に座っている様子だが、目線が少し上向きになる。

 扉には取っ手がなく、外と内を区切るボードも防弾仕様と物々しい。


 そんな人に向かって表情は見えないでしょうがそれでも笑顔を浮かべて挨拶する。

 

 まぁ表情筋が物理的にほぼ死んでいるのでできたとしても口の端をひくつかせる程度ですが。


「あ、お疲れ様でーす、ここに何の御用ですか?」


 相手もにこやかに返事を返してくれますが明らかに不審者の私をじっと観察している。


 その目はごくごく自然な物なので気にすることなく書類を一枚差し出す。


「中の死体の検分と利用に来ました」


 我ながらかなり物騒なことを口走っていますが、相手は納得した様子です。


「ああ、話はきていますよ」


 と、扉からロックが外れる重々しい音が響く。


 そして自動的に開かれる。

 中は二重扉になっているようで、小さい部屋だが監視カメラがつけられている。

 壁もみたところかなり頑丈な素材で作られている。

 そして先ほどの部屋につながる窓どころかダクトもなさそうだ。


 つまりここは誰かが押し入ってくることが想定された建物だ。

 扉の開閉すら内側からしか行えず、その場所に入るために防弾仕様の仕切りを破壊してその上でよじ登る。

 上から観察されるので不審な行為もしにくい。


 私は特にそんなつもりはないのですんなり中に通してもらえる。


 二つ目の扉を抜けた先はごく普通のオフィスのように見える。

 が、よく見ると窓や通気口はなく、物々しさが隠しきれていない。


 すると奥から疲れが隠しきれていない男性が歩いてくる。

 足取りはどこかフラフラしている。


「初めまして、リーパーさん」


「えっとたしかこちらの調査班の班長の方でしたよね」


 相手は薄く笑みを浮かべて、右手を差し出し握手を求めてきました。

 それを返しながら。


「よくご存じで、そして協力感謝します」


「私もこの状態を何とかしたいというのもありますし」


 そこですこし間をおいて。


「治療しないと半日で死んでしまうので」


「え?」


 そこで班長の足が止まる。

 その目は冗談かどうかを判断しようとしてるように見える。


「放射線によって体の深部まで死滅していて死にかけているんですよ」


「じ、冗談ということにしておきましょう」


 少し引き気味で答えた。


 ともかくそのままずっと奥まで案内される。

 何度かの扉と階段を抜けて、手術台のようなものに寝かされている“ディープスロート”がいる。

 気づかいなのか身体の大部分を覆うようなシーツがかけられている。


「それにしても死後これだけ時間が経っているのに死後硬直すら始まていないのは不気味ですらありますね」


 と言ってシーツを少しだけまくり、機械化されていない場所をつまむ。

 すると弾力を持っていることがわかる。


「そこのところは追々お話ししますね」


 触れてみるとわかる。


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 表情筋が動かないことに感謝する。

 おそらく笑みを浮かべていたので。


「あと不思議なのが人体とよく似た臓器の配置をしているのですが、おかしな点が一つあるんですよね」


「おかしな点?」


 班長は一つうなずいて言葉を続ける。


()()()()


 と言って胸の中心をしめす。


「心臓が溶けているかのようになくなっているんですよ、血管の断面から血液らしきものがこぼれることなく」


「なるほど」


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 でも嘘は言えないので曖昧にうなずくだけで止めておく。


「ところで、調べたら再起動できそうなんですがどうしますか? そうしたら調べやすくなると思うんですが」


 そう提案したら、目を白黒させて――


「え? 本当ですか――」


 しばらく考え込み。


「リアルタイムでデータをお取りたいので機材の準備を待ってもら手tもいいですか?」


「大丈夫ですよ」


 そうして待っている間に次々機材が運び込まれ“ディープスロート”の体にセンサーが取り付けられる。


 そして一応忠告しておく。


「起きたら多分暴れますので、離れておいた方が良いですよ」


「なるほど、みんな下がっとけ!!」


 と号令を下したら潮が引くように人が下がっていく。


 十分人が下がったことを確認して、シーツを引きはがす。

 そして久しぶりに感じるメインウェポンの鎌を取り出して、以前抜き取った心臓を返す。


「っがぁ!!」


 大きく体が飛び跳ねて身を起こす。


 その目はもうすでに明確に意志が戻っていて、まず行った事は――


「死んでくれるかしら?」


 最大出力の音波を両腕から放射して、避けようのない一撃で私の内臓の大部分を破壊した。


「いやぁ、ぬかりました」


 口からどす黒い血が漏れる。

 直感でわかるこのままだと間違いなく死んでしまう。


 “ディープスロート”はそのまま容赦なく私の首をつかみ。


 ねじってへし折った。

明日も頑張ります。

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