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卯月廿三日-3

間に合いました。

「ふぅ……」


 ノスタルジストメンバーの立てこもり事件が解決した。

 その報告を聞いてようやく気を抜いた。


「危なかった」


 ()()()()()()


 たった一人に二桁の人間が殺された。

 それも結構な情報を流していた上でだ。

 そして一応協力者である淡雪ちゃんが来るまで待つように一応伝えたが待たなかったらしい。


 とりあえず頭を切り替える。


「残りのナードとウォーモンガー、そして橘少年の足取りはわかりますか?」


「いいえ」


 ふむ。

 とつぶやいて考える。


 ナードはブラックスミスが立てこもりを行う前に襲撃してきたときの情報かく乱を行っていた可能性が高く。

 ウォーモンガーは動いた様子がない。

 橘少年に至ってはそもそも生きているのかどうかもよくわかっていない。


 東日本大震災をほぼしのいだといってもいいだろう。

 そうなったら、まず確認したいのは橘少年の安否だ。


「淡雪ちゃ――」


 と言おうとしてさらに適役がいることを思い出す。


「リーパー、少し聞きたいことがあるのだけど」


「何ですか?」


 画面にはガスマスクをつけて、白い防護服を着た人物が映る。

 一瞬驚くが、納得する。


 放射能への防護服は普通は外からの放射能に触れないようシャットアウトするための代物だ。

 ということは乱暴な話だが、それを着れば中からの放射能を遮断できる。


「こんな格好ですいませんね」


「考えてみればそれしかないですよね、洗い流せる場所があればいいんですが……」


「放射性廃棄物の最終処理施設に潜り込んで着替えるしかない気がしますね、道具を持ち込んでこっそり」


 防護服に着替えること自体はそこまで難しくはない、リーパーも山上君も空を飛べるので原発内の塵に触れることなく着替えることはできるだろう。

 しかし、街中で着替えると放射能をばらまくことになる。


「実際どのくらい残っているんですか?」


「放射能の塵といっても、結局塵なのでしっかり原発の囲いの内で払えば問題ない程度には落とせますが、印象はよくないですよね」


 確かにそこが問題だ。


 明らかに高線量の放射線を被爆した人間が大丈夫だからという理由で払っただけで出てきたらイメージがよくない。

 やっぱり防護服のまま着替えと高容量のエアダスターでしっかり払ってもらって着替えるのが当たり障りがないだろう。


「じゃあ、そういうことでお願いするわ」


「はい」


 と、そこで通信を閉じられかけるが、話を続ける。


「ストップ、聞きたいことはそうじゃなくて、橘君の話だけどいいかしら?」


「ええ、良いですよ」


 悩むのも時間の無駄なので直で聞く。


「生きているの?」


「生きてはいますね、あれ以上無茶な改造を施していない限り」


 その質問で安心する。

 が、まだまだ聞くべきことはある。


「どこに隠れている――いえ、隠されていると思う?」


「おそらく一人で残されているでしょうから、しばらく人の出入りがなくても不審がられず、近づかれることがない場所に隠すはずなので、中型のプレジャーボートじゃないでしょうか?」


 リーパーは言葉を続ける。


「海の上に漂わせていたら不審に思われるでしょうから港に係留した中に、外から覗けないように不自然ではない程度に目隠しをしていると思います」


「なるほど、そっちを当たらせてみます」


「助けになったのなら何よりです」


 とリーパーがほほ笑んだ気がした。


 とりあえず聞きたいことは終わったので通信を切って、時計に目を向けると作戦開始から結構な時間が経っている。

 報告書に目を通すが、さすがに疲れがひどく焦点が若干ぼけている気がする。


 疲労がたまりすぎるのは判断ミスを誘発する。

 そろそろ休みを取ることにする。


「奥で三時間ほど仮眠を取ります、何かあったら報告してください」


 目頭を押さえ、眠気を振り払うようにして奥のとりあえずマットを敷いただけの仮眠スペースに向かい横になった。


 そのあとすぐに落ちるように眠り始めた。

明日も頑張ります。

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