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20190423-4

間に合いました。

 周りのデモ隊メンバーはかなり吹っ切れたのかもうがなり立てるようなレベルだ。


 そこであえて事前に申請したコースから外れて歩き始める。

 デモ行進はあらかじめ申請したコースを歩く必要があるため、無認可のデモ行為になりまじめに処罰対象になる。


 腕時計に軽く目を落とす。


「そろそろだな」


 誰にも聞こえないようにつぶやく。


 それを聞いていたかのように派手にサイレンを鳴らしたパトカーが手はず通り急行してくる。


 そこでメンバーに明らかに動揺が走る。

 しかし、その動揺は収まる。

 本人たちは決まりにのっとってデモ行進を行っていると信じているからだ。


 結局前の人間について行くなんてことだけやっていて周りを見ていなかったせいで――


「そこの集団!! とまりなさい!!」


 パトカーにつけられたスピーカーで増幅された鋭い声が通る。


 収まった動揺が前回の倍以上の速度と濃度で広まった。


 意味もなく疑問の声を出して、そこでようやくあることに気付いたようだ。


「ここって――どこだ?」


 そこでやり玉に僕が上がる前にパトカーに向かう、両手を上げて出頭する。

 混乱が収まらない間が勝負だ。


 やらかした奴は逮捕される。

 その光景はこれ以上ないほどの衝撃を与えるだろう。


「おにいちゃんたちさぁ、なにをやっているの?」


 相手は厳つめの顔の中年の域に入った男性警官だ。

 目配せをすると、かすかだが頷いた。


「今の政府はあまりにふがいない、これは国民の思いから出た行動だ!!」


「なるほど、でもあらかじめ提出されていたコースはここじゃないよね?」


 と言って写しを出してくる。


 そこでわざとらしくうろたえる。


「な、そ、それは……」


「とにかく話は署で聞くからね」


 といって手錠をかけてもらう。


 その金属音は当たりに寒々と響いた。

 結構な人数が今この場にいるが、押し黙っているらしい。


 そんなメンバーに対して神妙な顔で叫ぶ。


「逃げろ!! 今なら一人だ!!」


「あ!! こら!!」


 地面に引き倒されて組み敷かれる。

 仲間がこんなことされたら気合が入ったメンバーなら止めに入るかもしれないが、それより早く我先に逃げ出した人間につられて蜘蛛の子を散らすように逃げ始めた。


「あ、コラ!! 仕方がない」


 と肩をすくめて僕をパトカーの中に押し込んだ。


 その後パトカーが走り出してからようやく口を開く。


「お仕事お疲れ様ー」


 忘れかけていたいつもの口調で相手に話しかける。


「いやぁ、何とかなってよかったです」


 といって赤信号の時に手錠を外そうとしてくれるが静止する。


「署に入るまではこうしといた方が良いと思うね、どこで誰が見ているかわからないから」


「そのようなものですか?」


 そうだよー、細かいことがたいせつだよー。

 などと話しながら首尾を聞く。


「知ってたらでいいけどどんな塩梅?」


「それが本官はここしか担当していないので」


「そりゃしょうがないね――」


 と言ったときに無線が入った様子だ。


「失礼」


 無線を取ると針山警部からだった、目立たないように音量だけ上げてもらいこっちの言葉はパトカーの刑事にお願いする。


「大体うまくいったようだな、曖昧に何となく参加した人間がほとんどで八割方はしっぽまいて逃げた、残りの二割はガーガーうるせーけどまぁ大人しいもんだ」


「それはよかった」


 ほっと胸をなでおろす。

 最初から暴動を引き起こすことが目的の覚悟が決まった人間がいなかったことが幸いだ。

 そうなったら機動隊を投入しても鎮圧が難しい局面もあったかもしれない。


 やってみたら大きな混乱もなく終了したが危険だったことには変わりはない。


「とにかくまだ仕事があるから、もうひと踏ん張りやりますか」


「おぅ、そうだな」


 とそこで会話を切って、警察署に急ぐことにした。

明日も頑張ります。

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