4月10日-2
すいません。
今日はかなり短いです。
ヘリ搭載型護衛艦の甲板で広範囲に飛ばしたドローン群による要救助者の正確なマッピングを行う。
『グレイゴースト』は強力なクリーチャーだ。
心配になるが、超音速の中では余計な手助けは逆に足を引っ張りかねない。
こらえて待っていると――
雷のような破裂音が絶え間なく響き始める。
遠く離れたこの場所にまで余波が届くほどの激戦となっているが祈ることしかできない。
今はただ無心で要救助者の捜索を急ぐことにする。
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「Gaaaaaa!!」
無造作に伸ばされる手が音速を超えている。
直撃はしなくてもまとった衝撃波に巻き込まれてなす術がなくなっている。
巨大な存在が人そのままの動きを行った暴力がこれだ。
繰り出す拳はたやすく音速の壁を越え、踏み込みで簡単に距離を詰められる。
その巨体で機敏な動きができる。
ただそれだけで一方的に翻弄される。
「だ、けど!!」
朦朧とする意識で、その一瞬を見つけた。
振り下ろされる手に正対できたその一瞬に、鞘から剣を抜き打ち全力で突っ込んだ。
「Gaaaaa!!」
それこそ薄皮一枚も切れてないような傷だ。
しかし――
海面に重量物が落ちる地響きにも似た音が聞こえる。
「まず指一本!!」
たった指一本だが一矢報いることができた。
おそらくこの速さで動くために少しの傷でもそこから破壊されてしまう。
これは大きな前進だ。
『グレイゴースト』が唸る。
しかサイズのせいか地から響く地震のような重い音になっている。
同時に視界の隅には今の俺の体の状態。
満身創痍を示す情報が次々表示される。
「こっちは全身ボロボロで、相手の指一本か」
口に出すとセリフ自体は絶望をあおるようなものだが、口の端には笑みが浮かんでいるのが俺自身がわかる。
「――十分!!」
まっすぐ加速する。
そして、『グレイゴースト』がそれにカウンターをあわせて右のストレートを放ってくる。
「……」
無言。
そして直撃の瞬間、ロールをうつようにして紙一重で避け。
抜剣する。
「Giiiii!!」
こちらの剣は三秒だけならどんなものでも切断できる。
音の速度で三秒は、二百メートルはあまりに短い。
切れ味があまりに鋭いためかほぼ手ごたえを感じず振りぬいた。
「GLooooooo!!」
『グレイゴースト』の右腕が崩壊する。
手ごたえを感じる。
このままいけば無力化まで遠くない。
が――
「ぐ、ぁ……」
口の中が血の味でいっぱいになっていることに気づく。
そしてこめかみはズキズキとした痛みが走る。
限界が近づいている予感がする。
鞘に剣を納める。
まだ始まったばかりだ。
視界のはしに写る体のモニタリング結果はまだ行けることを示している。
「Gllaaaa!!」
と、『グレイゴースト』が雄叫びをあげる。
また暴れるのかと思ったら、脇を引き締めたボクサーのような構えをとる。
不審に思っていると、その一瞬で距離を詰められて――
「が!!」
視界は真っ赤な警告メッセージで埋まる。
示すのは普通なら2・3度は死んでいるレベルの体の損傷が発生したことを示している。
ジャブを放ってきた。
それの直撃を受けた。
人類の格闘技の中でも最速の部類に入る拳は避けることすらできなかった。
殴られた衝撃で音速を超える速度で吹き飛ばされながら考える。
今までは人型こそしていたが獣や子供のように手足を振り回すだけだったが、それは本気ではなかったようだ。
おそらく一度で逆転するために隠していたのだ。
「く」
カウンター気味に剣を抜き打ちで切ろうとして。
「Aaaaaaaaa!!」
戻した
切る直前、肘を折りたたむようにして拳を引き戻した。
空振りしてしまう。
間髪入れず、手打ちのようなジャブが飛んでくる。
「避けようが――」
ない!!
とどめの一撃がクリーンヒットした。
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時間としては一秒もないほどだろうが、意識が途切れ――おそらく死にかけた。
警告が示すことはもう俺の体があまりの衝撃でボロボロを通り越して、グシャグシャになりかけていることだ。
とりあえず今は命の保全を最優先にしているため戦うことはできないらしいが――
「それでもやらないとな」
海面スレスレを飛ぶことくらいしかできないが、技術を隠さない『グレイゴースト』を自由にさせたら危険すぎる。
このあたりで一番頑丈なのは俺だ。
できるだけのことはやりたい。
「Gllllll!!」
叫び、踏み潰そうとしてくる。
が避けるだけに集中すれば良いのでまだ避けることができる。
そして、人体の構造上。
「地面スレスレを飛ぶものは上からしか叩けない」
家に出没してほしくない虫不動の第一位である黒いアイツになった気がしてくるが、有効なので続ける。
「Aaaaaaa」
イラついたようにローキックを放ってくるが、頭上を通り過ぎる。
頭から突き抜けるような衝撃が入るが、直撃よりはましだ。
「よし!! 行ける!!」
地面を駆け回る黒光りするアイツは面倒だろう。
と思いながら最大限嫌がらせを続行する。
明日も頑張ります。