20190423-3
何とかできました。
プラカードを掲げてめいめい声を張り上げながら練り歩く。
内容に興味もないので気にしていない。
「そろそろか」
ぼそりとつぶやく。
周りの声にかき消されてその言葉は誰の耳にも届かなかったようだ。
ともかく角を曲がると――
「あ、あれ」
「ああ、なるほど」
「なにやってるんだか」
かなり人通りの多い場所にでた。
そうするとボソボソと声が聞こえる。
その中の目立つ人間はこちらを嘲笑するような表情をしている。
ついでに、手持ちのスマホで写真撮影や録画が始まっている音が聞こえる。
その光景を見てしまい、呻く。
今までは非日常の興奮でこれたが、明らかに好奇の目で見られることは覚悟をしていなかったようだ。
まぁ普通は目を背けるとか、眉をしかめるとか、距離を取る方が多いだろう。
ではなぜここの人間はあげつらうようなことをしたのかというと、何のことはないこっち側の桜が入っている。
そして好奇心は誰にでもあるが絡みたくないから無関心を装う。
しかし、誰かが先陣を切って写真を撮るなどし始めたら、つられて何人か始める。
とくにこの手のなかなかないような事はツィッターなどの手軽に動画や写真を投稿できサービスが多い今は撮影されて投稿されて拡散されるまでの手間がほとんどかからない。
そのことを深く理解している参加者たちは二の足を踏んでいる。
普段撮影したりする側だろうが今は撮影される側だ。
しかもサクラがあからさまに侮蔑の目を向けた状態でだ。
それが合わさると――
「そ、その!! すまないが帰る!!」
言うが早いか顔を隠して足早に帰っていったこっち側の人間。
それをとがめることなく踵を返し、ありていな文言を叫んで歩きだす。
帰りたくなって、誰かが帰ったら抜けるハードルは低くなる。
それが狙いだ。
「行くぞ」
とだけ伝えて、わざと少しだけ足早にすすむ。
気配からすると一人また一人と消えて行っている様子だ。
ほかの場所でも同じようにサクラによる心を萎えさせる行動が行われているだろう。
まぁ、若気の至りで大やけどをする前だからここで下がるのは賢い選択だと思う。
本人たちはSNSでクダを巻くくらいのノリで来たのだろう。
冷静になったらいわゆるさらされる側になっていると気ことに気付けばまぁこうなるだろう。
「ふん!!」
わざと不満げに鼻を鳴らす。
大まかにだが数が三分の一になっている。
後ろにいる人間たちは減ったことに不満があるように見えるだろうが、内心は逆なんだよなぁ。
まだこんなに残っていることが問題なのだ。
さてそんなこと思いながら次の関門に向かう。
ここまではいわゆる違法行為にならない事を恥ずかしげもなくできるかどうか。
見た感じけっこういっぱいっぱいっぽいけど慣れるから今のうちに畳みかけるべきだ。
そう判断してどことなく引率しているような気がしながら次の場所に向かった。
明日も頑張ります。




