20190423-2
間に合いました。
策を練り直してみたが結局うまくいきそうな考えは浮かばなかった。
最初の計画ではある程度の人が集まったら適当に練り歩き、その後小分けにして警官隊に小分けに確保してもらう手はずだったがどう考えても許容量を超えていている。
増員の手回しや、ルートの再構築などを大まかに決めたが不安が残る。
悩みながらもあまり長い時間話しているわけにもいかないので集団に戻ることにする。
そうすると、もうすでにある程度開始時間を過ぎているのにまだたむろっている。
外見上は互いに何ごとか、政治や経済などを話しているがどこか薄っぺらい。
年齢層も想定より低く大学生付近だろう。
僕が戻ってくると全員がこちらをちらりと見た。
そこに流れる空気は安堵だ。
「遅かったですね、もうデモの開始時間をすぎていますよ」
「申し訳ないな、ところでみんなは一体何を?」
疑問におもって話を聞く。
するとどこか自慢げに口を開いた。
「それは昨今の政治と経済に対して若い視点からみたディスカッションですよ」
胡乱な目で見てしまいそうになり、必死に押し隠す。
サングラスかけてくればよかったなぁ。
とどこかずれたことを思っていると、現状への見方――ただ不満をだらだら流しているだけのようだ。
そこでようやくなぜ出発していなかったかを理解した。
最初の一人になりたくなかった。
でもスタート集団でいたい。
でもグダグダしているだけだと手持ち無沙汰なので話し合うふりをしていただけなのだ。
結局何も議論は深まっていないし、新しい情報も仕入れていないだろう。
なんでもいいから結論を出せないから、誰かに乗っかる形で不満を表すことしかできていない。
事前にデモ参加者の裏を取ったのでわかるがそれなりの大学に在籍している人間が多い。
なまじ勉強ができるから不満が募ってしまうが、それが正しい事だと思ってしまうのだろう。
これから人生経験を積むことで不満を言っただけでは何も変わらず、より深く広く学び考える事の意味を知っていくのだから単純にまだまだ若いというのがこのような中途半端な集団になってしまっているのだろう。
そこであることに気付く。
「そうか」
「なんですか?」
不審がられて聞き返されるが、そこは不敵に笑って。
「熱意があるからそれは良い事だ」
「でしょう、僕たちの声を、思いを広く届けましょう!!」
自慢げな表情で言い切った。
そこか熱に浮かされたように焦点が定まっていない。
それでもまだ僕を促すよう目で見ている。
そして集団でないと特別なことができない烏合の衆はまだ一歩も踏み出そうとしていない。
このままグダグダ時間をつぶさせればいいかもしれないが、こらえ性がない人間がいるのは想像に難しくない。
露骨な足止めは無秩序な動きになりかねないのでそれは避ける。
「じゃあ、出発するぞ!! いくぞぉー!!」
「おぉーー!!」
声を張り上げて宣言すると、それまでまごついていたのが嘘のように威勢よく呼応した。
その動きを見ている間にあることを思いついた、うまくいけばかなりの人数が自主的に離脱するかもしれない策だ。
スマホを片手で操作し、メールアプリを起動して大まかな考えを針山警部に送信した。
あとはもうぶっつけ本番だがやるしかないのだ。
明日も頑張ります。




