20190423-1
間に合いました。
「アオヤマさん!! こんなに人が集めってくれましたよ!! やっぱり現政権に不満を持っていた人は多かったんですね!!」
「ああ、我々の怒りをまとめることで大きな力になるだろう!!」
などと心にもないことを話す。
僕の今の仕事は早い話がアジテーション。
見た目は有志が集まって自然発生したデモだが、本質は日本の諜報機関が寄ってたかって用意したガス抜き用のデモだ。
参加人数から見るといわゆる官側はそれほど多くないが、扇動者側に寄っているとはいえかじ取りを間違えたら暴動に発展しかねないので慎重に動く。
正直なところマッチポンプでしかなく、山上君や淡雪ちゃんが関わらせるわけにはいかない仕事だ。
いつもはスーツにサングラスで胡散臭いのを演出していたが、今はこざっぱりとした格好をして普段と真逆の自信に満ちた表情をしている。
それなりに前から仕込んでいたので四桁は超えていると思うが――
「さて、動員できた人数はどれくらいかな?」
「ざっくり五万人ですね、こことは別の場所に集合しているので」
「ほぅ、なかなか集まったな」
内心で大汗をかく。
ここのところの立て続けに起きる災害でぶつけどころがない不満がたまっていたのは理解しているが、ここまで集まるとは予想できなかった。
まずい。
とそう思う。
集団の数が多くなればそれだけ気が大きくなる。
そうなったら手を付けられない暴動に発展しかねない。
なので策を弄することにした。
「ならば合流するより、広く声を上げた方が良いな、我々の声は直接届けるべきものだ」
「なるほど」
そんなでまかせをあっさり信じてどこかに連絡を取っている。
そんな時一本の電話が入る。
周りの人間に断りを入れてその場を離れる。
相手は針山警部だ。
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「私だ」
誰が効いてるかわからないので演技はやめないまま受け取る。
すると相手が吹きだした。
「おいおい、おもしれ―口調だな」
「ご挨拶だな」
僕自身あんまりなれないのでテレを必死に押し隠しながら話す。
「ま、ちょっと事前に聞いていた人数と違いすぎるって思ってるだろ?」
「ああ」
するとそこからはまじめな口調になる。
「誰かがわざとバッティングさせた」
「……」
少し押し黙るが、考えを口に出す。
「あいつらか……」
「そういうことだ、数日前に今日やるって見越して広く流布しておいたみたいだな」
頭が痛くなる。
集まればどうしても騒ぎが広がりやすい。
それを見越して手を打っておいたのだ。
「理由は?」
「……わからねーな、とりあえず都内の警察はピリピリしてるよ、こうしている間でも日常業務はあるからな」
「なるほど」
できたら穏便にガス抜きを終えたかったが、いやな予感がする。
分断したとはいえ、おそらく一つの集団は数千人は下らないだろう。
それが火のついたように暴れ始めては絶対に手が回らないことが出てくるだろう。
怪しまれないようにこっち側の参加者に連絡を取り、針山警部とも話し合いを大急ぎで重ねることにした。
明日も頑張ります。




