4月23日-16
間に合いました。
胴体と頭しか残っておらず、体中にひびが入り砕けていくディザスターがあきれ気味に口を開く。
肩から先があったら肩をすくめていただろう。
「負けたよ」
「勝てた、なんとか」
そんな俺にディザスターはさらに続ける。
「おまえは本当に人間か?」
「……」
見た目――いや、勝つためとはいえ思いつきに近い考えで腕を増やすということを行った精神は多分まともじゃない。
だから何も言えず押し黙る。
「分かっているならいい、そしてお前は本来もっと前に大きく壊れている」
「どういう意味だ?」
じろりとこちらを見ながら――
「押しとどめていた相手に感謝をしろということだ、おまえはいつか化け物になる」
「自覚はしておく」
そう返したら、特徴的な口の端だけを吊り上げる笑みを浮かべられる。
「せいぜい、きをつけろ、よ」
それだけ残して粉々になって消え去った。
それを確認したら、無理やり腕を一本にまとめた。
骨がこすれ合うくぐもった音がして元の形に戻れた。
もうすっかり痛みも感じなくなっている。
「これじゃ本当に化け物だな」
そう自嘲気味に笑う。
確認はしていないが胸のあたりと両腕が修復用の素材に置き換わっているだろう。
おそらく元々の体より傷を補修する素材の方が多い状態になっているだろう。
「……化け物、か」
つぶやくその言葉は段々と実感を持ち始める。
しかし、ある程度でその言葉を振り払う。
暴走している原子炉への対応をリーパーが行っているはずだ。
その様子を見に奥へと向かった。
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「リーパー? 首尾は?」
と背後から覗き込むと、中はガランといている。
中のものはほとんど鎌の中に格納したらしい。
さらに声をかけようとすると――
「お願いします、そこで止まってください」
と切実に頼まれた。
何事かと思うが、言われた通り足を止める。
「何があった?」
「ええとですね、放射線を浴びすぎたらどうなるかわかりますか?」
こちらを一切向かず話しかけてくる。
放射線を浴びると一番有名な症状を思い出す。
「ガンや白血病か?」
「まぁ、そうと言えばそうなんですが――」
一呼吸だけおいて続きを口に出す。
「放射線を浴びてまず起きる変化です」
質問の意味はとれたが、答えは全く分からない。
「すまん、全然わからない」
「なるほど」
と穏やかな声のまま続きが来た。
「皮膚が焼け爛れます」
「え?」
聞き返す。
「放射線は電磁波――つまり光の一種です、日焼けと言えば軽く聞こえるでしょうが、起きたことは全身まんべんなくヒーターで焼かれたようなものです――そして焼かれる前に遺伝子が破壊させるのでこの火傷は絶対に治りません」
そこで着ているワンピースが蠢きだす。
「この服はかなり遮断できるのですが、顔が守れないでしょう?」
ようやく気付いた。
顔にひどいやけどを負っているのだ。
「その――すまない」
「いいんですよ、コレが仕事ですから」
そうしてワンピースの端がほどけるようにして一本の包帯に変わった。
それを慣れた様子で頭に巻いている。
あっという間に頭全体を覆った。
よく見ると指先まで手袋をはめており、肌が一切露出していない。
「さて、ここでの仕事は終わりです、外に出ましょうか」
とフワフワとした足取りで外へと向かう。
その後ろをなんて声をかければいいかわからずに、ただ押し黙ってついて行くしかなかった。
明日も頑張ります。




